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未来は「待つ」のではなく「創る」!未来思考で変える日本のキャリア教育No.4

高校生9人と考えた、世界をハッピーにするSNSのアイデア

2023/12/19

未来を可視化して企業の事業創造・変革の実現を支援する電通グループ横断組織「未来事業創研」。

前回記事では、当組織が、さまざまなテクノロジー・ノウハウでモノづくり・コンテンツづくりを行う「TOPPAN」さん、Z世代に特化する若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」さんと協働し、高校生に向けた約半日のワークショップ「渋谷ミライソウゾウ会議」を開催した様子についてご紹介しました。さらに、その成果として、未来に不安を抱いていた高校生の意識に大きな変化が生じたことやその理由の分析結果についてもお伝えしました。

次世代を担う高校生の多くが、未来に不安を抱えています。その一方で、普段、高校生が接する機会の少ないBtoB企業に目を向けると、未来を変える技術をたくさん持っています。この事実を高校生が知ることで、未来への不安を「ちょっと楽しみ」に転換するきっかけになるのではないか。そう考えたことが「渋谷ミライソウゾウ会議」のスタート地点でした。

今回は、未来事業創研の山田茜が引き続き本ワークショップで生まれた高校生たちのアイデアと、今後の企業との関わり方について紹介します。

【未来事業創研とは】
未来を可視化して企業の事業創造・変革の実現を支援する電通グループ横断組織。次世代に、再び「未来が楽しみになる」世の中をつくりたいという想いで、日々クライアント企業と“あるべき未来” を描き、その未来を創るための“一歩”を踏み出すお手伝いをしています。
https://dentsumirai.com/
<目次>

BtoB企業の技術×高校生の視点=!?

お題は、「世界をハッピーにするSNSのアイデア」

理想の自分をプロデュースしてくれる「専属ドリームナビゲーター」

「1人に1台、推しヒューマン」

「異なる文化・価値観を理解する体験プラットフォーム」

「すべてを話せるAIカウンセラー」

アイデアづくりを通して感じた、“未来への不安”の正体

ワクワクする未来は、自分でつくる!

 

BtoB企業の技術×高校生の視点=!?

未来職連載#4_表題イラスト

渋谷ミライソウゾウ会議では、次の3つのステップで、ワークショップを進めました。

  1. 高校生の未来への不安を可視化し、
  2. TOPPANさんのご協力のもと企業としての取り組みやテクノロジー・技術をインプット
  3. 高校生が「つくりたい未来」を可視化

「つくりたい未来」のひとつの切り口として考えたお題は「世界をハッピーにするSNSのアイデア」。この記事では、渋谷ミライソウゾウ会議で生み出された具体的なアイデアの内容や、ワークショップの中で感じ取った高校生の「未来に対する不安」の正体についてご紹介します。

お題は、「世界をハッピーにするSNSのアイデア」

まず、「世界をハッピーにするSNSのアイデア」というお題に込めた想いについてお話しします。

高校生にとっても身近で、生きていく上で欠かせないコミュニケーションツール、その中でもネットを含めて世界が広がり、ますます多様化している「SNS」にテーマを絞りました。AIやメタバースが普及した未来では、SNSはどうなるのか?さらに情報収集・情報接触はどうなっていくか?TOPPANさん、SHIBUYA109 lab.さん、未来事業創研が高校生と共に未来のSNS を考えました。

当日は、高校生+社会人のグループを2つ作り、グループワークでインプットした技術をヒントに、「つくりたい未来」のアイデアのイメージをふくらませることに。

未来に対する不安やSNSに対する不安を書き出してもらい、今の課題と向き合い、どうなると良いのかについて話し合いました。本当はこんなことができるようになりたい、それなのに何がネックなんだっけ、と考えを深めていき、そもそもの「つくりたい未来」や「本当はこうしたい、という欲求」につながる話を引き出していきます。

その後、「本当はこうしたい」をかなえてくれるかもしれないテクノロジー・技術として今回TOPPANさんが有するテクノロジー・技術についてレクチャーをしていただきました。
誰と、どんなコミュニケーションをするのか。どのような表現、物事の伝え方をするのか。炎上問題、ストーカー問題などのSNSにまつわる課題はどうなる?マッチング(親友づくり、恋人づくり、とか)に対する忌憚(きたん)なき意見など、あらゆる視点を用意して高校生に投げかけながらワークショップを進行しました。

そうした取り組みを経て、高校生と一緒に生み出したアイデアを元に、事務局でまとめた4案をご紹介します。

理想の自分をプロデュースしてくれる「専属ドリームナビゲーター」

未来職連載#4_専属ドリームナビゲーター

本人以上に自分のことを知った上で分析してくれ、ニーズに合わせた目標に向かって自身を引き上げてくれる。理想の自分をプロデュースしてくれる相棒のような、コーチのような存在をつくりたいというアイデアです。

オンラインやリモートで行えることが増えて人付き合いが希薄になり、「おせっかい」も減るであろう未来。全て自分で判断しなきゃいけないプレッシャーが大きくなるのではないかと考えたのがアイデアの背景にあります。

今、自分が何をしたらいいか分からない状況を助けてくれて、行動できない人の背中もやさしく押してくれる。「愛のあるおせっかい」を求めている高校生の言葉が目立ちました。適切な目標を設定し、その目標に到達するための手段も提案してもらえるので、迷わず努力することに注力できる。そんな未来をつくりたいという想いから生まれた提案でした。

〈備えたい機能〉
▶︎ 自分以上に自分のことを知って分析してくれる
▶︎ 目標設定
▶︎ 代わりに人との約束や用事の予約までを済ませてくれる

〈発想のヒントになった、実在するTOPPANのテクノロジー〉
▶︎ cheercle®:センサーやIoTデバイスによって、人の健康状態を自動で収集。健康管理の習慣化をサポートする
→【高校生の考えた未来の可能性】その日の体調や気分に合った行動をアドバイスしてくれる
▶ MetaClone®:写真やカメラから簡単に3Dアバターが生成できる&アバターを使って、さまざまな仮想体験ができる
→【高校生の考えた未来の可能性】アバターを使って、さまざまな仮想体験ができる

「1人に1台、推しヒューマン」

未来職連載#4_推しヒューマン

好きな人がいつも家にいて褒めてくれたり、話を聞いて励ましてくれたりする。推しのような憧れの存在が自分をすべて肯定してくれたらいいのに、という願望から生まれたのがこちらのアイデアです。

ストレスなども可視化され、ストレス解消もモチベーションの維持も自己責任となる未来。自分でガス抜きをして、リフレッシュして明日を迎える必要に迫られることが想定された点が課題の背景にあります。

好きな人がいつも近くにいてくれる安心感やドキドキで、リアルを前向きに過ごせる。一人一人が、自分で自分の機嫌をとることができ、毎日を自分らしく前向きに生きられるようになるというのがつくりたい未来です。

〈備えたい機能〉
▶︎ 相談できる、話を聞いて励ましてくれる
▶ 身の回りのことや家事は全てアシストしてくれる
▶︎ 自分の理想  のバーチャルヒューマンなので、一緒にいるだけで前向きな気持ちにしてくれる

〈発想のヒントになった、実在するTOPPANのテクノロジー〉
▶︎ Virtual Human:リアルなバーチャルヒューマンとコミュニケーションができる&会話を繰り返すことでAIが自分のことを理解してくれる
→【高校生の考えた未来の可能性】推しがいつも近くにいるようなくらしができる
▶︎ TransBots®:遠隔でロボットを思い通りに制御できる&ロボット同士が、自動でその場に応じた連携動作をすることができる
→【高校生の考えた未来の可能性】ロボットが自動で家事をしてくれる

「異なる文化・価値観を理解する体験プラットフォーム」

未来職連載#4_他社になりきりエクスチェンジャー

相手の言葉だけでなく、置かれている環境や背景ごと擬似体験することで、より相手が伝えたいことを理解したコミュニケーションを可能にできるというアイデアです。

着目したのは、国の垣根がなくなる未来。異なる文化、価値観の人と触れ合う機会が一気に増えることが予測できます。

島国である日本では、異文化コミュニケーションを取る機会が少ないけれど、多様性に対応できる失礼のないコミュニケーションをとりたいという高校生の想いが、このアイデアを生みました。相手の心を汲み取れるようになり、地球上の対立も減る。異なる文化・価値観を持つ人とも、理解をし合いながら交流を深めることができるというのが、つくりたい未来です。

〈備えたい機能〉
▶︎ 相手が伝えたい背景や状況を体験できる
▶︎ 日本にいながらにして世界中の文化や宗教を体験できる
▶︎ 相手に失礼な発言をしそうになったらアラートで教えてくれる

〈発想のヒントになった、実在するTOPPANのテクノロジー〉
▶︎ GX LIVE™:物理的には別々の場所にいる人達が、あたかも同じ場所にいるような体験を提供できる
→【高校生の考えた未来の可能性】別の場所にいても、同じ空間でやりとりができる
▶︎ MiraVerse®:現実世界を正確に取り込んで色のみならず風合いまでも忠実に再現できる
→【高校生の考えた未来の可能性】家にいながら外国や遠くの世界へ瞬時に行ける

「すべてを話せるAIカウンセラー」

未来職#4_AIカウンセラー

家族や友達には相談できないことでも、AIカウンセラーが何でも受け止めてくれたらいいのに。マッチング技術やAIの進化で、どんな人でも分かり合える存在と出会え、自分の居場所を実感できる未来に向けたアイデアです。

現代は、つながろうと思えば、いくらでも人とのつながりをつくれる一方で、置いてきぼり感も味わいかねません。人間関係のぎこちなさや、「本当に自分が望むこと」に悩んで苦しくなった人を支える方法が求められるという課題が、このアイデアの背景にあります。

SNSを介してAI(人もアリ)に相談できることで心強くなる。つらくて相談できなかったり恥ずかしくて相談できない人でも、カウンセリングを受けられて孤独に陥らない未来をつくりたいという想いから、この提案が生まれました。

〈備えたい機能〉
▶︎ いつでもどこでも相談できる、話を聞いてもらえる
▶︎ 何を話しても大丈夫、とことん寄り添ってくれる
▶︎ 秘密も厳守してくれる

〈発想のヒントになった、実在するTOPPANのテクノロジー〉
▶︎ cheercle®:センサーやIoTデバイスによって、人の健康状態を自動で収集。健康管理の習慣化をサポートする
→【高校生の考えた未来の可能性】健康状態を見て精神状態や食のアドバイスもくれる
▶︎ web3 Marketing Unit:デジタルアートやコンテンツのオリジナルを証明し、流通させることや、不正の無いファンコミュニティの運営ができる
→【高校生の考えた未来の可能性】保有するスキルが確かであることをデジタル上で証明できる

「世界をハッピーにするSNS」というお題で考え始めたものの、今のSNSからは想像のつかない役割・存在を担えるアイデアが出てきたため、さらに個性豊かにシャープに伝わるようブラッシュアップをしました。

アイデアづくりを通して感じた、“未来への不安”の正体

高校生とアイデアをつくっていく中で、彼ら・彼女らが感じている未来の兆しや、未来への不安の正体ともいえるものを感じ取ることができ、3つの視点を得ました。渋谷ミライソウゾウ会議での取り組みを経た高校生たちのコメントも交えて最後にご紹介します。

1つ目は、「他者への理解」を求められる未来への不安です。人間関係が希薄になっていく中で、しっかり理解し合えるんだろうかというコミュニケーションへの不安が根底にあることが分かりました。

自分の気持ちもうまく伝えられず相手の思いもくみ取れない。そんなやりとりの連続ではきっとストレスが増えてしまいますが、だからといってコミュニケーションを避ければ、他人の思いをくみ取ることはもっと苦手になってしまうかもしれない負のスパイラルが考えられます。「相手の心の“ひだ”を知りたい」といった発言も目立ちました。

2つ目は、「無数の選択」を求められる未来への不安です。ECもSNSも多様化し、情報もより豊富になり、毎日小さなことから大きなことまで「選択」を求められる場がますます増えています。何が自分にとって本当に必要なのかを学べたり、失敗しないようアシストしてくれる存在が求められたりしていることを痛感しました。

最後の1つとして、「自分自身の本音」が見えづらくなっていることも未来への不安の正体でした。進路も「やりたい」より「得意・不得意」で選ぶ傾向が強い、という話も耳にしました。パーソナライズは今後もますます浸透していくと考えられていますが、「自分に合うこと」だけでなく「自分の意思」がもっと重要視されると幸福度が高まるのではと感じました。

今回、渋谷ミライソウゾウ会議で「やりたいこと」「つくりたい未来」とまっすぐ向き合った時間が、短時間でもとても新鮮な体験だったという声も、高校生から多くあがりました。「こんなことできたらいいかも!?」「できるかも?」という無邪気な期待を、あきらめず大切に育んでほしい想いを、大人の側も新たにしました。

最後に、ワークショップ実施の前後で、「語尾の変化」もめざましかったことをご紹介します。

渋谷ミライソウゾウ会議の参加前には「環境は今よりも悪化している。社会はあと戻りできない環境を改善するための運動でいっぱいになっていそう」とアンケートに回答した高校生が、参加後に「技術の発達で世界に文化や言語、価値観の壁がなくなりつつある(といいなと思います)」と回答してくれていました。

内容が前向きになっている部分の変化ももちろんですが、私が着目したのは「〜〜してそう」と他人事のようだった客観的な書き方が変化している点です。控えめでも、「こうだといいな」と自分が主語の文体に変わっている。この変化こそが、ささやかでも大きな変化の一歩だと感じました。

「こんなこと、できたらいいな」を妨げるものはありません。もっと自由に、もっと主体的に楽しめる未来を描いて、そのための一歩を積み重ねていくという未来との向き合い方を引き続き発信していきたいと思います。

不安の可視化と、つくりたい未来の可視化によって、高校生の脳内で「未来への不安を、未来への楽しみに」「消去法で選んだ将来を待つのではなく、目標としての将来をつくっていく」この2つの転換を行うきっかけになっていたらうれしいです。

ワクワクする未来は、自分でつくる!

渋谷ミライソウゾウ会議では、未来に対して抱いていた不安が、少しでも前向きになっただけでなく、企業の持つテクノロジー・技術を知り、未来を考えることで、高校生に企業の魅力を実感してもらえるという副産物も得ることができました。

高校生たちが自身の将来をどのように考えているのか知ることは、マーケティング的にも示唆に富んでおり、企業の活動は進路・進学を変えるきっかけになるのか?といった問いを十分裏付けてくれそうな変化も目の当たりにしました。

未来事業創研では、これからの未来を担う世代と一緒に、未来が楽しみになるような取り組みにご興味がある企業の皆さまとぜひご一緒したいと考えています。

千里の道も一歩から、という言葉は、未来に関する仕事に取り組む中で強く実感します。今の取り組みはささやかなものだったとしても、それを10年続けていくことで、大きな影響をもたらすことができるかもしれない。そんな期待を胸に、日々の業務に取り組んでいます。

これからも未来事業創研の取り組みを発信していく機会をたくさん用意していますので、どうぞお楽しみに!

問い合わせ先:未来事業創研(担当:吉田・山田)  
future@dentsu.co.jp

 

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