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未来は「待つ」のではなく「創る」!未来思考で変える日本のキャリア教育No.3

日本企業のテクノロジーが高校生の未来への不安を吹き飛ばした

2023/12/13

未来を可視化して企業の事業創造・変革の実現を支援する、電通グループ横断組織「未来事業創研」。予測された悲観的な未来を待つのではなく、人・社会にとって持続可能な「つくりたい未来」を可視化し、その未来を実現していくために、クライアント企業の未来に向けた事業創造や、パーパス・ビジョン策定のお手伝いを日々しています。

2023年9月に未来の日本について、「SHIBUYA109 lab.」にご協力いただいて高校生へのアンケートを実施したところ、88.9%が「どちらかといえば不安だ」、11.1%が「不安だ」と考えていることが明らかになりました。

ところが、未来事業創研と、社名から「印刷」を外し、ますます幅広い領域でさまざまなテクノロジー・ノウハウでものづくり・コンテンツづくりを行う「TOPPAN」さん、Z世代に特化する若者マーケティング機関SHIBUYA109 lab.さんと協働し、高校生に向けた「渋谷ミライソウゾウ会議」を半日実施したところ、高校生の意識には大きな変化が生じたのです。

未来職連載#3_イメージ画像

今回は、高校生の意識がなぜ変化したのか、どのようなワークショップを行ったのかについてご紹介します。

<目次>

未来が楽しみな人・未来が不安な人、その違いは?

「本当はどうしたい?」と正直に向き合うことからスタート

TOPPANのテクノロジーが、楽しみな未来を発想する刺激剤に

高校時代に企業の最新技術に触れることは、採用ブランディングにもなる!?

「つくりたい未来」を構想する体験が未来へのモチベーションに

未来が楽しみな人・未来が不安な人、その違いは?

日本の未来といえば人口減少、超高齢化、人材の海外への流出……悲観的な未来予測に触れたことのある方も多いでしょう。

未来事業創研のもとには、企業のビジョン発信に関する相談も数多く寄せられます。多くの場合、ターゲットは若年層。「若年層に興味を持ってもらいたい。」「若年層が共感するビジョン発信をしたい。」と、どんな未来を提示したら若年層が共感してくれるか、自社や自社の強みに興味・期待を持ってくれるかを多くの企業が知りたいと思っています。そこで、顕在化する企業のニーズを踏まえ、未来事業創研がこれまでの取り組みで得た経験と知見を活用し、若年層向けに「キャリア×未来」について考える場をつくりたいと考えました。

少し話はそれますが、冒頭のデータにも表れている通り、今、その中で感じたのは、未来への不安をおぼえる人の多さです。ネガティブな未来予測を知り、漠然と不安になっているのかもしれません。一方で、私自身は未来事業創研で日々あらゆる企業の方と向き合う中、未来が楽しみになったことにも気づきました。

この違いはなぜかと考えた時、2つの理由に思い至りました。まず、企業の「テクノロジー」のすごさに日々触れていること。そして、未来に向けて今できることは何か、バックキャストで物事を考えるようになったこと。そこで、最新のテクノロジー技術に触れ、自らが創りたい未来を創ることの大切さを体験する機会があれば、未来に対する不安は自分次第で前向きにとらえられると感じてもらえるのではないかと考え、ワークショップの企画が生まれました。

これからの社会変化の影響を強く受け、未来の社会をより良くしていく中心にいる存在として、今回は「高校生」に焦点を当てました。今15歳~17歳の彼らの多くは、10年後には社会に出ています。子どもと大人のはざまにいる彼らは、この10年で学校で教育を受ける立場から社会の一員として仕事を担う立場に変わり、世の中と異なる向き合い方をしていきます。今、高校生たちはどんな未来をイメージしているのか。どんなきっかけがあると未来にポジティブになれるのか。そうした生活の変化が特に大きい世代に、もっとワクワクする未来をつくれるという、希望を持ってほしいと考えました。

未来を変える新しいサービス・商品の開発に不可欠である「要素技術」「素材」領域は日本の強みでもあります。社会を変える可能性がある企業独自のテクノロジー技術やノウハウとの接点をつくることで、高校生に、ワクワクする未来への期待を構築できないか、そして、技術への興味を喚起し、進路の考え方に変化を与えることができないか。
こうした仮説から、「渋谷ミライソウゾウ会議」の企画が進み、今回お力をお借りしたのが、TOPPANさんと、SHIBUYA109 lab.さんです。

「渋谷ミライソウゾウ会議」は、SHIBUYA109 lab.さんが募集した高校生にTOPPANさんのテクノロジー技術を紹介し、未来のくらしを想像しながら、未来をハッピーにするSNSのアイデアを創造してもらう半日ワークショップです。

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ワークショップ当日のグラフィックレコードより、グループ分けと作業概要。

「本当はどうしたい?」と正直に向き合うことからスタート

ワークショップの参加者は、冒頭に掲出した事前調査で未来に不安を持っていると回答した高校生9人です。

「世界をハッピーにする未来のSNS」をテーマに、人と人とのつながりや、情報交換など、さまざまな役割を持つSNSで、未来にはどんなことができると良いのか。「今がどうか」ではなく、「本来どうあるべきか」に集中して、こんなテクノロジーがあったら未来が楽しみになる、というアイデアを考えてもらいました。

渋谷ミライソウゾウ会議は、次の3部構成で実施しました。

  1. 「本当はどうしたい?」という問いに正直に向き合ってもらい、チームで議論
  2. TOPPANさんから、最新テクノロジーに関するレクチャー
  3. 実際に自分たちの本当にしたいこと&最新のテクノロジーをふまえてアイデアを構想

「本当はどうしたい?」未来事業創研では、この問いを日々とても大切にしています。未来に絶対はありませんし、正解もありません。忖度(そんたく)も必要ありません。前のめりになる・ワクワクする未来を自由に思い描き、その実現に向けた一歩を踏み出していくことでこそ未来は変えられると私は思います。

そこでまず第1部では、「本当はどんなSNSがあると良いと思っているのか」個々の正直な願望を洗い出し、ディスカッションを行いました。

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ワークショップ当日のグラフィックレコードより、ディスカッションの様子。

TOPPANのテクノロジーが、楽しみな未来を発想する刺激剤に

第2部では、TOPPANでバーチャルヒューマンプロジェクトのチームリーダーを務める田邉集(たなべ しゅう)氏にTOPPANの持つ最新テクノロジー技術について話していただきました。

TOPPANは、「ものつくり」と「ことつくり」であらゆる事業課題、消費者課題、社会課題の解決に取り組んでいる会社です。

田邉氏は、次の3点について、事例やコミュニケーション技術の未来も含めた自社の取り組みについて説明をしました。

  1. 印刷技術からウェブや 3DCG などのデジタル技術までを情報伝達の手段とし、メタバースのような新しいメディア上でもビジネスをしていること
  2. 新しいメディアでどんなコンテンツがやり取りされると面白いのかを常に考えて、企画やイベント運営のビジネスをしていること
  3. 「コンテンツ」「メディア」「テクノロジー」を構成要素として、新しいコミュニケーションを可能にする技術は日々進化していること

「未来のメディアや新しいコミュニケーションの形をつくっていくのは、皆さんの世代なんです」と言葉を受けた高校生の中には、最新テクノロジー事例の映像を見て思わず「こんな技術が今すでにあるんですね!」と身を乗り出して目を輝かせている高校生もいました。

高校時代に企業の最新技術に触れることは、採用ブランディングにもなる!?

第3部の様子は次回記事でご紹介しますが、半日のワークショップは大盛り上がりで幕を閉じました。そして、日常に戻った高校生9人に再度アンケートを実施したところ、ワークショップ前の回答内容から顕著な変化が見て取れました。

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N=9

2030年頃の未来の社会・地球について、ワークショップ前には9人中6人が「どちらかといえば不安だ」「不安だ」と答えていたのに対して、ワークショップを経て「楽しみだ」「どちらかといえば楽しみだ」と答えた方が一気に増えました。「どちらかと言えば不安だ」と答えた人が1名のみにとどまっています。

さらには、2030年頃の日本については誰一人「楽しみだ」とも「どちらかと言えば楽しみだ」とも回答していなかったところが、ワークショップを経て9人中6人が「楽しみだ」「どちらかと言えば楽しみだ」と回答するようになっていたのです。
フリーコメントでも、「新しい世界が見えた」、「視野が広がった」という声や、「自分や社会の将来について考えるきっかけになった」「最新のテクノロジー技術を知ることができた」、「もっといろんな情報を得たいと思った」、というポジティブな回答を得ることができました。

さらに、ワークショップに参加して、TOPPANという企業についてどのようにイメージが変わったか質問したところ面白い結果が出ました。

未来職連載#3_図表02
N=9

事業内容や、最先端の技術を活用していることを理解してもらう機会になった上、「将来性がある企業だと思った」と参加した高校生全員が回答する結果に。

さらに、ワークショップ中にTOPPANさんに対する関心が高まっている発言も多く見られたので、将来TOPPANという会社が就職したい会社の一つになるかを聞いたところ、参加した全員が「はい」「検討すると思う」と回答。

未来職連載#3_図表03
N=9

高校生と、最新テクノロジーを持つ日本企業が接点を持つことは、高校生が未来を楽しみに思えるようになるというゴールを実現するだけでなく、企業側の採用ブランディングとしても意義がありそうだ、という示唆を得ることができました。

「つくりたい未来」を構想する体験が未来へのモチベーションに

「未来について楽しみに思えるかどうか」は、やはり未来について知るところから始まります。
とてつもないスピードで日々進化しているテクノロジーを知る機会があれば、未来に対する不安は軽減し、ワクワク感が増すのではないか。自分たちの「つくりたい未来」を構想することが、未来を楽しみだと思えるきっかけになったり、主体的なアクションを行うモチベーションになったりするのではないか。今回のワークショップを通じて、こうした未来事業創研の仮説が、証明されたように感じています。

参加者の高校生に、半日取り組んでみた感想をヒアリングしたところ、下記のような言葉があがりました。

「答えがない問題を考えていくのは難しいと改めて思ったが楽しかった」

「ネットでしかいろいろな情報を得ることができていなかったけれど、大人の人たちに今こんなことを事業でやってるよと直接教えてもらえることで、自分もいつかそんな仕事ができるのかなとワクワクした」

「今日はSNSに対する自分の見方がひっくり返った1日だった。Xの文字だけ、インスタグラムの画像だけの世界をイメージしていたけど、技術によってメタバースとか3Dの世界まで広がっていることを初めて知ることができて有意義な1日だった!」

「色んな技術がある中で、技術だけではその先は生まれない。やりたい事や理想があって初めて生かされることを実感した」

「トレンドって、技術だけじゃなくその時の文化や環境の相乗効果で生まれている。自分のしたいことやアイデアこそが技術とつながっていくんだと思った」

「自分たちの未来は変えていけるんだと思えた。自分の将来やりたい事にも役立てて過ごせたらいいなと思えた」

「未来への不安で、将来やりたいことが全然決まっていないことが不安だったけれど、明確に決まったわけじゃないけど、それを決めるいいきっかけになったなと思ったので情報を仕入れられるよう調べてみたり、前向きに行動を起こしたいと思った」

最後に、TOPPANの田邉さんは、パーソナルコンピューターの父であるアラン・ケイ氏の言葉を用いて締めくくってくださいました。

「The best way to predict the future is to invent it.」

未来を予測する最良の方法は、自分で創ることである。

Alan Kay

これは、まさに未来事業創研としても日々企業と向き合う中で大切にしている考えです。この先どんなものがはやるか、どんなことが起こるといわれているか、答えを予測するよりも、自分で「つくりたい未来」に向かって今から行動を変えていけば未来はその方向に実現します。

その一端を高校生に体感してもらう機会として今回の渋谷ミライソウゾウ会議を企画しましたが、実際に参加者の心にも響いたことがリアクションとして顕著にあらわれ、未来に向けて日々取り組んでいることは間違っていなかった、と思えました。

次回記事では、半日のワークショップで高校生と一緒に考えた「未来をハッピーにするSNS」のアイデアをご紹介します。どうぞお楽しみに!

問い合わせ先:未来事業総研(担当:吉田・山田)  
future@dentsu.co.jp

 

【グラフィックレコーディング&レポートの制作協力】
電通グラレコ研究所(作画:宮本梨世 / 制作協力:甲斐千晴)
電通グラレコ研究所は、グラフィックレコーディングを中心としたビジュアライゼーションサービスの提供と研究を目的とする電通グループ横断プロジェクトチームです。
https://www.dentsu.co.jp/labo/grareco/index.html
 
未来職連載#3_グラレコロゴ
 
 

 

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