持続可能な社会を実現するためにも、顧客やステークホルダーに「選ばれる企業」であり続けるためにも、「脱炭素」は企業が取り組むべき重要な課題となっています。しかし、「知識やノウハウがない」「手間やコストがかかるため、大規模な改革は難しい」など、さまざまな理由から二の足を踏んでいる企業もあるかもしれません。
そうした企業に向けて、脱炭素のファーストステップとして開発されたのが、株式会社電通国際情報サービス(以下:ISID)によるラーニングツール「Day Tree(デイ・ツリー)」です。前編に続きISIDの藤木隆司氏、小林賢太朗氏に「Day Tree」を利用したお客さまからの反応や、今後の展望について聞きました。
「Day Tree」が意識を変えるきっかけに
Q .「Day Tree」を実際に導入いただいた企業さまの反応はいかがでしょうか。
小林:使っていただいたお客さまに、脱炭素に対する意識や行動は変わったかどうか、ヒアリングしたところ、約半数、もしくはそれ以上の方々から「行動変容・意識変容につながった」という回答をいただきました。
より具体的に伺っていくと、「個人でアクションを続けるのは難しかったけど、『Day Tree』の社内SNSで共有することで、意識が変わるきっかけになった」といった感想もいただきました。人とシェアすることで、「この行動も、脱炭素アクションなんだ」と気付かれる、という方も多いようです。例えば「宅配サービスは確実に受け取って、再配達にならないようにする」とか「地産地消の食品を食べる」とか「自家用車ではなく公共交通機関を利用する」とか、自分では特に意識しないでやっていたことや、些細なことで貢献できている、と実感していただくことも大切だと思います。そのうちに、だんだん興味が湧いてきて日常生活の中でも「この行動って、脱炭素の視点で考えるとどうなんだろう?」と考えられるようになる。それが行動変容につながるはずです。
もちろんまだβ版なので、UIなど含め改善しなければならないところもありますが、いただいた意見を真摯に受け止めて、より良いサービスになるようにアップデートしていきたいと考えています。2023年度に正式リリース予定なので、それまでにSNSの機能だけではなく、教育コンテンツの部分ももっと強化していきたいと思います。

Q.前編では、「Day Tree」は元々、非製造業系の企業さまのニーズに応える形で開発されたと伺いましたが、実際にそうした企業さまからの反応は良いのでしょうか?
小林:確かに当初は、非製造業系企業の方の反響が良いのではないか、という仮説を立てていました。もちろん、実際にそういう企業さまも興味を持ってくださっていますが、意外だったのは、製造業の企業さまからも反応が良いことです。製造業の場合、工場でエネルギー効率の良い設備を導入したり、素材を再利用したりといった基本的な脱炭素の施策には、既に取り組んでいるところも多いので、その次のステップとしてさらに何かやりたいと考えている企業が少なくなかったのです。ですので、業界問わず、さまざまなニーズに応えられるサービスになるように、精度を高めていきたいと考えています。
株式会社電通国際情報サービス 小林 賢太朗氏「行動変容」の成果を企業ブランディングへ活用
Q .「Day Tree」に限らず、ISIDのSDGs施策としてはどのようなことに取り組まれているのでしょうか?
藤木:脱炭素については継続して取り組んでいきたいですが、他にも「ESG経営」に関するプロジェクトも動いていますし、個人的には「生物多様性」にも注目しています。
こうした社会課題にはさまざまな解決方法がありますが、AIの活用やUI/UXを重視するなど、「ISIDらしさ」みたいなものを意識しながらソリューションを開発していきたいと考えています。今回の「Day Tree」も体験型のラーニングツールであるという点が特徴的ですし、ISIDらしいプロダクトになったのではないかと思います。
株式会社電通国際情報サービス 藤木 隆司氏小林:そうですね。それに加えて、電通グループ内のソリューションと連携していくことも重要なファクターだと考えています。当社はシステムを得意としますが、電通グループの中には例えばプロモーションが得意な者、コミュニケーションが得意な者などもおりますので、うまく連携することで、より広がりを見せていきたいですね。
Q .では、最後に今後取り組まれたいことや展望をお聞かせいただけますか。
藤木:お客さまにソリューションを導入していただくだけではなく、そこにどんな意味があるのか、社会に対してどんな責任を果たしているのか、ということをしっかりと発信していくことが重要なのではないかと思います。具体的には、「Day Tree」のようなサービスを通じて得られた成果をコンテンツとしてまとめ、IRレポート等に掲載していただくなど、企業ブランディングとして活用いただけるような展開ができたら理想的だと考えています。社員のアクションを効果的に発信することで、企業としてのレピュテーション(評判)を高めていくことも期待できるのではないでしょうか。
小林:地球環境や社会に対してどのような貢献をしているか、という要素は企業価値を高める上でこれからますます重要なものになっていくと思います。ちょっと極端な例ですが、もしかすると今後は社会課題に対する社員の意識や取り組み姿勢が、人事評価などにつながるような時代も来るかもしれません。
藤木:「Day Tree」は脱炭素アクションに特化したツールですが、もっと幅広いテーマで社員の「良いアクション」を可視化できるものがあってもいいかもしれませんね。自分たちは社会に対して良いことをしている、ということが見えれば自信を持てて、意欲の向上にもつながるのではないでしょうか。

企業として社会課題の解決に取り組むためには、根本的なシステムの見直しや新事業の立ち上げなど、大きなチャレンジをしなければならないというイメージを持たれている方もいるでしょう。しかし、日々の小さなアクションが社員の意識・行動を変え、やがて企業全体を変えていくのかもしれません。脱炭素をはじめとしたサステナブルアクションに自社で取り組む際にも、こうした視点を取り入れてみるのはいかがでしょうか。