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AIを力に――マーケティングの新たな時代

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この記事は、frogが運営するデザインジャーナル「Design Mind」に掲載されたコンテンツを、電通BXクリエイティブセンター 岡田憲明氏の監修でお届けします。

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本記事では、AIがコンテンツ・サプライチェーン(※1)を変革し、マーケターの能力を飛躍的に高める方法をお伝えします。

※1=コンテンツの企画・制作・管理・配信を一連の流れとして最適化する仕組み。


次に目指すのはAIネイティブのマーケティング

ここ何十年もの間、マーケティングは綱渡りのようにうまくバランスをとることを求められる仕事でした。一方ではリーチ範囲を広げたいという欲求があり、もう一方では顧客と一対一でつながりたいという願望があります。

この2つの目標を適切なバランスで両立させることは、長年、実現不可能だと考えられてきました。マーケターは多くの場合、どちらかを優先してもう一方を妥協することを迫られるからです。しかし、AIの発展のおかげで、広範囲で一人一人とつながることが実現可能な時代がついにやってきました。


行き詰まる、現在のコンテンツ・サプライチェーン

従来、マーケターは「規模」か「つながり」のどちらかを選ばなくてはなりませんでした。テレビや印刷媒体のようなマスメディアは広範囲のリーチを実現できましたが、利用者への個別対応は限られていました。そこへデジタル革新とソーシャルメディア(SNS)によって新たなツールが持ち込まれたことで、 オムニチャネル配信 が可能に。リーチが拡大するとともにつながりも強化されました。それでも実際は、リーチが優先されるのが普通でした。これは、評価指標の明確さと、豊富なツールによって、顧客と本物のつながりを培うよりも、リーチを評価してその目標を達成するほうが容易だったからです。

エンゲージメント構築の場がオムニチャネルへと広がったことによって、マーケティングの世界では断片化も進みました。このような環境では、本質的にクリエイティブな分野であるはずのマーケティングが、物流業務に近いものになる場合があります。複数のプラットフォーム上で、さまざまなフォーマットで、しかもそれぞれ異なる顧客層を相手に一人一人とつながりを持とうとすれば、コンテンツ・サプライチェーンの複雑化を招きます。その結果として多くのマーケターは、自分がクリエイティブにつながりを構築しているのではなく、交通整理をしているだけのように感じ始めたのです。

<コンテンツ・サプライチェーンの主なステップ>

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従来のコンテンツ・サプライチェーンには、次のような問題が繰り返し発生し、なかなか解決しませんでした。

  • 戦略とプランニング:目的が不明確、期待値のずれ、対象層の定義があいまい。
  • クリエイティブの開発:承認が遅い、アセットの手直しが手作業、品質が一定しない。
  •  リリース準備:ワークフローがばらばら、文化的な好機を逃す。
  •  モニタリングと最適化:トラッキングが不十分、最適化サイクルが遅い、データが不完全。
  •  キャンペーン後の分析:パフォーマンスデータの解釈や教訓の応用が難しい。

こうした根深い問題があるために、マーケターは意味のあるつながりを築くことよりも、プロセスの管理やデータ送信の調整に多くの時間を割くことになります。また、困るのはマーケターだけではありません。ブランドにとっても、コンテンツ・サプライチェーンが複雑化しているために、成長の機会を逸し、生活者とのつながりが切れてしまうことになります。

さらに現代の生活者は、自分と関連がなく、真実味に欠けるコンテンツはすぐに見なくなります。ショッピングカートに入ったままの商品を通知したり、メッセージ本文で顧客にファーストネームで呼びかけたり、最近のGoogle検索をもとにおすすめ商品を表示したりしても、そんなお決まりの戦術が無視されるようになれば、パーソナル化の努力も水の泡です。

こうした課題を踏まえると、frogとキャップジェミニの調査機関「キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュート」による最新のCMOインサイトレポートで、 顧客とのやりとりのパーソナライズ化によって成果向上に成功していると確信している企業はわずか18%と報告されているのも驚きではありません。また、顧客データソースを統一する自らの能力に十分満足しているマーケターは、全体の31%です(Salesforceのレポート「マーケティング最新事情」第9版)。コンテンツ・サプライチェーンがコンテンツのボトルネックになってしまっているのです。

コンテンツ・サプライチェーンの管理に費やす時間を短縮できない限り、マーケターは人間の能力の限界に悩まされ続けるでしょう。そんな中でマーケターを解放し、戦略とストーリーテリングに注力できるようにしてくれる可能性を秘めているのが、人工知能(AI)です。


AI活用がコンテンツ・サプライチェーンにもたらす5つのパラダイム

AIの登場で、マーケターが必要とされなくなることはないでしょう。今後も人間の直感がマーケティングの技術を前進させることに変わりはありません。しかし、キャンペーンやコンテンツ、インサイトを動的に生成し、管理する上で、AIは欠かせないツールになるでしょう。AIの活用によって、パーソナル化されたつながりを大規模に構築するマーケターの能力がさらに高まるはずです。

マーケターはAIが実現する自動化と加速化の恩恵をフルに受けながら、広範囲のターゲット層の顧客に一対一のメッセージを届けることがようやくできるようになります。手作業でデータを隅々まで確認してキャンペーンを最適化したり、苦労しながら承認を得たり概要書をまとめたりするのに時間をかける必要はもうありません。また、AIはオーケストレーション(※2)でも重要な役割を果たします。縦割りになった複雑なエコシステムを合理化し、断片化したシステムを手作業でつなげる必要をなくすことで、マーケターの時間を節約してくれます。

※2=複数の要素・プロセス・ツールを統合的に管理し、最適に連携させること


AIを支援ツールとして用いれば、パフォーマンス指標に基づくリアルタイムの結果をもとにキャンペーンを合理的に最適化できます。これがリーチに関する課題(いつ、どこで、どのように届けるか)の解決につながり、マーケターはつながりの構築(何を、誰に、なぜ伝えるか)に集中できるようになるのです。

「AIを力にするマーケター」という考え方は今後さらに発展し、AIを活用したコンテンツ・サプライチェーンによって、次の5つの新たなマーケティングのパラダイムが生まれてくるでしょう。

〈マーケティング分野の5つの新たなパラダイム〉

  1. インテリジェントなクリエイティビティ
    マーケターは人間のクリエイティビティを原動力として、アイデアを素早く形にし、クリエイティブやコンテンツの制作の幅を広げることができます。
  2. リアルタイムの関連性
    自律型AIの最適化によって、動的なキャンペーンの制作を支援することができ、ブランドは大事なタイミングを逃しがちな静的で動きの鈍いキャンペーンから脱することができます。これにより、時代の文化の形成にも積極的に寄与できるようになります。
  3. オンラインのワークフローとエコシステム
    複雑なコンテンツ・サプライチェーンと手作業による管理に代わって、AIを活用したワークフロー調整が導入されます。反復的な手順が自動化され、チーム内の業務の流れがスムーズになります。
  4. 次世代型の評価とインサイト
    AIは、測定を“先回り型・継続的・すぐに行動につなげられるもの”に変えます。マーケターはパフォーマンスをリアルタイムで把握し、意思決定の指針となる予測インサイトも得られるようになります。
  5. エージェント型の新たな空間エンゲージメント
    生活者がAIエージェントに情報のフィルタリングや相手とのやりとりを任せるようになると、マーケターは人間とAIという2種類のコンタクトポイントに対応したデザインを行う必要が出てきます。生活に溶け込んだアンビエントシステム(※3)や、音声インターフェース、複合現実(MR)環境で存在感を示さなければなりません。

※3=ユーザーの生活や環境に自然に溶け込み、必要なときに自動で最適な行動をしてくれるシステム。

以上の5つの新たなパラダイムから実用的な成果が生まれ、業績の向上に加えて、マーケターの満足度の向上にもつながります。

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AIが普及した未来、マーケティングはどう変わる?

ブランドや生活者の代わりに行動してくれる自律した「代理者」となるエージェント型AIが、マーケティングの変革をさらに推し進めます。エージェント型AIを利用すれば、マーケターはクリエイティブな仕事に戻れるチャンスを手にするだけではなく、そのクリエイティブな能力を最大限に発揮する必要も出てきます。これまで以上に、ブランドを守り育てる優れた「ブランドスチュワード」となることを求められるのです。

frogでは、次世代のマーケターを、「自身のスキルを伸ばし、戦略を組み立てるための新たな道を切り開いていく多面的な人材」だと考えています。AIを活用する将来のマーケターは、次のような役割を担うことになるでしょう。

  • クリエイティブなオーケストレーター:AIを利用して、アイデアと豊富なコンテンツを次々と生み出す。
  •  文化のオペレーター:どうすればブランドが文化の変化のペースについていけるかを考える。
  •  システム管理者:AIを活用したチームの共同作業のための明確なルールとエスカレーション(上位者に判断を委ねる)ポイントを設定する。
  •  インサイトの検証者:AIとともにデータを解釈し、競争力の維持につなげる。
  •  体験の構築者:大規模言語モデル(LLM)を活用してブランド力の向上を図り、生活者の意識の中での存在感を維持する。


顧客とともにマーケターも成長する

マーケターと同じく生活者もまた、ソーシャルコマースやAI、ゼロクリック検索、さらにイノベーションの普及が進む次の新しいショッピング環境に適応しようとしています。何か不都合があれば、マーケターが努力を重ねて構築してきたロイヤルティ(忠誠)が崩れてしまうリスクがありますが、先に紹介した5つの新しいパラダイムには、生活者との絆を維持し、願わくはさらに強めるための道筋も用意されています。

適切なサポートさえあれば、マーケターは必要なすべてのピースをまとめ上げて一貫性のあるブランドボイスを構築し、顧客とのつながりとリーチをこれまでにないほど広げることができます。こうした新たなパラダイムを受け入れ、生活者とともに進化していくマーケターが未来を勝ち取ることになるでしょう。

では、この AIを活用したマーケティング は、生活者にとってどのような意味を持つのでしょうか?それは、お気に入りのブランドから真実味のあるコンテンツが絶えず届けられることを期待できるということです。さらにそのコンテンツは、自分との関連性が次第に高まり、より引きつけられるものになっていきます。何より重要なのは、そのコンテンツが信頼でき、ブランドに対する永続的な信用の構築につながることです。


マーケティング新時代の幕開け

frogでは、私たちが目標を達成し、さらに大きな需要に対応して、もっと世界と響き合うためにAIを活用できる方法を常に考えています。私たちはAIを活用するマーケターのための5つの新たなパラダイムを検討すると同時に、マーケティング部門がこれらのパラダイムをマーケターにとっての現実にするにはどうすればいいかについても探りました。そのプロセスには大まかにいって、検討、アクティブ化、そして最後に大規模化という3つのステップがあると考えています。

まずは、適切な問いを立てることから始まります。

  • マーケティング戦略:AIが普及した未来とは、当社のブランドとマーケティングにとって何を意味するか?
  •  価値実証:実際に何らかの価値を実現できるのか?
  •  次のステップの明確化:当社ブランドにとって効果的なものにするにはどうすればいいか?
  •  大規模な運用:これをすべてに適用するにはどうすればいいか?

大量印刷の実現と、ラジオ、テレビ、そしてインターネット時代の到来は、そのたびに人間の社会的・文化的な相互作用を拡大してきました。AIもまた、そのプロセスの次の一歩であるに過ぎません。マーケターはすでに、このテクノロジーの進歩を活用してクリエイティブなものの見方を変革し、誰もが求めていた「リーチとつながり」の適切なバランスを見つけるために動き出しています。そして今、マーケティングの新時代が始まろうとしています。AIを活用するマーケターが、その次の章の物語をつむぐことになるでしょう。

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frogは、グローバルなデザインと戦略を提供する企業です。私たちは、秀でた顧客体験を届けるブランド、プロダクト、サービスのデザインをすることで、ビジネスを大きく変革させます。私たちは人々の印象に残る体験を提供し、市場を動かすよう努め、アイデアを現実にすることに、情熱を注いでいます。クライアントとのパートナシップを通じて、未来の予測、組織の発展、そして人間体験の進化を実現します。 <a href="http://dentsu-frog.com/" target="_blank">http://dentsu-frog.com/</a>

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