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企画者は3度たくらむNo.11

たくらみが仕事を面白くする

2015/05/21

世の中にはもともと面白い仕事などありません。
あるものは、努力とたくらみによって面白くなった仕事だけです。

これは私が新入社員に向けた研修で、毎年お話ししていた冒頭のコメントです。
どんな仕事でも、手にした段階では課題が山積し、到底解決しようもない問題児のような状態であることが多いように思います。残されたただ一つの道は、たくらむことによって、多くの人たちにとって役に立ち、楽しめる形へと変化させることだけです。

他人の働きぶりを見て「面白そうな仕事をしていていいなぁ」と思う時間があるならば、自分の仕事を面白くする努力をしなければならない、ということでもあります。

たくらむの本質は、苦労を楽しむこと

企画を立てることは、単なる仕事に過ぎないのかもしれません。
しかしながら、たくらみは、仕事という範疇を超えて課題解決を楽しむ姿勢であり、生き方そのものと言えます。

仕事だからといって、正しいことだけを積み重ねていけば、誰からも否定される余地なく正解を導き出すことができるかもしれません。

その一方、その仕事のアウトプットが誰からも愛されることなく、無視される危険性を伴うことを強く意識しなければなりません。
誰もが納得できる「なるほど!」を超えた「そうきたか!」を生み出せば、心から「いいね!」と言ってくれる人が必ず現れます。SNSによって世間の反応がダイレクトに見えることが、自分のモチベーションを上げることにつながります。当然のことながら、仕事を面白くするには、時間がかかりますし、苦労も心労も絶えないのですが……。

そして何よりも、他人ゴトのように思えていた仕事が、自分ゴト化されるようになります。たくらむことで企画はどこまでも良いものになるし、面白くもなる。
仕事はこんなにも自由で、その自由な発想で生まれた企画を多くの人が喜んでくれることを、実感できるようになります。たくらむことができるかどうかが、会社人と社会人の分岐点なのかもしれないとさえ感じます。

熱意と考えた量だけが、相手の心を変えていく

たくらむことの基本は本当にシンプルなものです。

目指すべきビジョンを掲げ、現状とのギャップを課題として再設定する。
そして、その課題を解決するために企画を立てる。時間をかけてたくらむ。仲間とたくらむ。

その根本にあるものは、身近な人を幸せにしたい、笑顔にしたい、世の中を良くしたい、といった実感に基づくものです。理由はシンプルです。私たちが市場と呼んでいるものは生活者の集団に過ぎず、その生活者は自分であり、自分の隣にいる人なのですから。

しかしながら、仕事をしているとたくらみを阻む見えない壁(前編・後編)に直面し、心が折れることもあるかもしれません。

「仕事だから真面目であるべきで、間違ってはならない」
「どうせわかってくれないから」 「何を提案しても同じ」
「そんなハイブローな提案は刺さらない」

こうした声が聞こえたり、思いが生じた時、私はこのように考えるようにしています。

「企画を選ぶのも、受け入れるのも相手であるのは変わらない事実である。だからといって、私たち企画者の仕事は、企画を通すことではない。世の中を動かすことである。熱意と考えた量だけが、相手の心を少しずつ変えていく」と。

もちろん、一人で乗り越えなければならない部分も多大にあります。強い個人がいてこそ強いチームが存在するのですが、チームは苦難を共に乗り越える心の支えになります。
そして、いいチームがその一人ひとりを強くしていくものでもあります。

自分が本当にやりたいことを発想し、ぶつけ合うことのできる同僚は、仲間と呼ぶにふさわしい存在です。仲間がいまの職場や環境にいるかは分かりません。
ただ一つ言えることは、いますべきは相手を値踏みすることではなく、自分という個性を仕事に活かすことを恐れずに行うことです。そうすれば、自然と仲間は集まってきます。ただの同僚だと思っていた人の本気を引き出し、仲間になるかもしれません。やはり、相手の心を変えるのは、自分でしかないのです。

その試行錯誤を行うことで、あなたは真の企画者に近づいていきます。そんな人が増えるほど、企業も、社会も活性化していくことは紛れもない事実です。
キーワードは「たくらむ」です。
「そうきたか!」を生み出し続ける覚悟が、自分と、チームと、世の中を前進させる力に変わります。

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