ろーかる・ぐるぐる #71

戦略思考を“身体知”化する、とは

師走の寒い日が続きますが、季節外れのお知らせです。以前も何回かご紹介している群馬県の山高食品さん。「天国のぶた(プリン)」「天国のブタリーナ(エッグタルト)」と玉子職人にふさわしいスイーツを次々開発してまいりました。その最新作が「天国の冷たいぶた」。なぜかこの寒い時期に期間限定発売するアイスです。なんと言っても自慢はそのルックス。もちろん黄身に見えるのは超濃厚玉子プリン、天国のぶたです。

もうひとつ季節はずれなご紹介を。

2011年11月5日発行の実践的ビジネストレーニング誌「Think!(NO.55)」に8ページほど寄稿しました。秋に出る雑誌だということがわかっていながら、嗚呼!取材があったのは9月1日、猛暑の日。すっかり油断して半袖で写真を撮っていただいたのでした。この業界にいながらシロウト丸出し。恥ずかしい限りです!

ここで書いた拙稿のタイトルは「コンセプトづくりの身体的思考 SECIモデルとぐるぐる思考で『今のアイデア』をつくる」というものでした。そして「思考力の原点に戻る」という特集のオープニングを飾っていたのが齋藤嘉則さんの「戦略眼を養う“真逆の発想のススメ” 思考を“身体知”化する」でした。

齋藤さんといえば著名なコンサルタントで経営学者ミンツバーグの「戦略サファリ」を監訳などなさっている方。なぜ、いま「身体」というキーワードでふたつの原稿が並んだのか、興味深く拝読しました。

まだ書店に並んでいると思うので詳しくは「Think!」を読んでいただくしかないのですが、齋藤さんのおっしゃりたいことは次の言葉に集約されているように思いました。
 

そもそも、知と心と身体が別々に切り離せないように、戦略思考と実践は切っても切り離せない関係にある。“わたしは考える人、あなたは実行する人”という、知と身体を切り離したデカルト的心身二元論の図式は、戦略的なヒトになるにはまったく成立しない。脳からの記号は身体を動かすが、一方で、身体が自然に状況に反応するなかから生まれる信号が、脳自体を活性化し鍛え上げるからだ。

齋藤嘉則「戦略眼を養う“真逆の発想のススメ” 思考を“身体知”化する」『Think!』(東洋経済新報社)15ページより
 

ぼくはこの主張に全面的に賛成します。そして身体的な経験を思考プロセスに組み込むための実践的方法論として「ぐるぐる思考」をより精度の高いものにしていかなくては!と覚悟するわけですが、その一方で別の思いも浮かびました。

かつて広告のプレゼンはマーケが戦略を、クリエーティブが表現を、それぞれ提案しました。マーケの戦略はきちんとデータに基づいた「正しい」ものであることが大切でした。一方、クリエーティブは実際に広告表現をつくってひとの気持ちを動かすことが期待されていました。率直に言ってマーケは表現に関心がなく、クリエーティブは戦略に無頓着でした。もちろん数多くの例外はありましたが「マーケは考える人、クリエーティブは実行する人」といった線引きがありました。

さて、広告業界も大きく変わったように見えます。でもどれだけマーケは自分でコピーを書いて恥をかき、それを生かして次の戦略をつくっているだろうか? クリエーティブはどれだけ「身体が自然に状況に反応するなかから生まれる信号」を戦略にフィードバックしているのだろうか?自戒の念を込めて、改善の余地があることを思い知るのでした。

山高食品さんの真摯なご尽力もあって新商品開発の際は必ずかなりの回数、試食を重ねます。でもまだ新商品が並ぶ売り場には立っていません。製造現場にも伺えていません。身体で感じなければならないことの多さに目がくらみそうです。

ともあれ「天国の冷たいぶた」、美味しいですよ(笑)。

どうぞ、召し上がれ!

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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