ろーかる・ぐるぐる #72

縁起のよい食卓を贈ろう

メリークリスマス!

新入社員だったときのクリスマスイブ。当時は「恋人たちの聖夜」みたいなイメージがあって、彼女もいないし約束もなかったけど、先輩とやっていた作業がズルズルズルズル。ほとんど明かりの消えた社内で「なんでこんな日に残業なんだよ!」とイライラしていたことを思い出します。予定もないのに。あの感情はいったい何だったんだろ?

閑話休題。冬のご馳走といえば「ふぐ」です。中でも山口県下関は本場。豊臣秀吉以来のご禁制を時の総理大臣・伊藤博文がこの地で解いたといわれています。今でも南風泊(はえどまり)市場は、日本最大の取扱量を誇り、夜中3時に始まる独特な袋競りで次々と値付けをされていく様子は壮観です。

ところが「ふぐのインターネット通販」の世界ではこの下関が他の産地に後れを取ってしまいました。愛知や瀬戸内の養殖業者が積極的に取り組んだのに比べ、名門であるが故、対応がおっとりしていたのかもしれません。下関の事業者「関とら」さんから受けた相談はこんな現状を打破する「商品開発」でした。

といっても、ふぐといえば刺身か鍋。関とらの菊盛りはキレイですが、決定的に差が出る物ではありません。唐揚げは旨いですが、わざわざ取り寄せたくなるシロモノでもないし。ふぐのコロッケ…う~む、どうでしょう。皆さんだったら、どうしますか?

あれこれ考えていて、ひとつ気が付いたことがあります。和牛やハムなら相手が「美味しい物好き」なら安心して贈ることができますが、「ふぐ」は何とも候補に上がりづらいということです。別に好き嫌いが分かれる味わいではないけれど、先方が「ふぐ好き」だと確信できる場合にしか贈れないのです。特に東日本でその傾向は高いかもしれません。そこで「ふぐ」に対する心理的なハードルを下げることができないか、という課題に取り組んでみようということになりました。

アートディレクターの竹村優奈さん、デザイナーの佐藤聡宏さんとつくったのが「贈り福」です。下関では昔からふぐを濁らず「ふく」と呼ぶそうです。であるならお世話になったあの人に(「ふぐ」を贈るのではなく)「縁起のよい食卓」を贈りませんか?という提案です。たとえば父の日や敬老の日、場合によってはバレンタインデーに感謝やお礼の気持ちを込めやすいギフトにする仕組みづくりです。

そこでロゴマークを開発。と同時に、江戸の遊び「判じ絵」を使ったメッセージカードも用意しました。「ありがとう」「長生きしてね」「ごめんなさい」といった気持ちが伝えられます。さらにそのカードを切り抜くと海の幸の箸置きがつくれるのです。単にふぐ単品を贈るだけでなく、食卓全体を演出したかったのです。

たぶん薄化粧程度の商品開発です。ふぐに過剰装飾は似合いませんから。とはいえ、これがきっかけになってふぐ通販の間口が広がればよいなと思っています。

年末年始、大勢で集まることも多いかと思います、その時に下関の職人さんが丁寧につくった「ふぐ」という選択肢があることもお心に留めておいてください。

どうぞ、召し上がれ!

 

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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