ろーかる・ぐるぐる #73

ブレストで批判は厳禁なのか?

わが家のお正月は恒例のお雑煮戦争
高松出身の妻はかたくなに「白みそにあん餅」を主張。「今年は鶏肉を入れていないから、万人受けする味よ」と一歩も譲らず、「ふつうのにしようよ」「ふつうって、何よ」の不毛な論争を経て、結局いつも通り2種類が並ぶことに。新年早々、議論をかみ合わせることの難しさを痛感したのでした。

ところで皆さんお馴染みの「集団でアイデア開発する手法」ブレーンストーミング、通称ブレストには四つのルールが知られています。①自由奔放に、②批判厳禁で、③便乗発展させて、④質より量を求めていくこのアプローチ。先日とあるセミナーでやってみたところ「それ、いいですねぇ!」「うん、それもいいなぁ」。まったく批判はない代わり、本質的に話がかみ合うこともなく、なんか集団ヨイショ大会になっちゃいました。う~む、どこがいけなかったんだろう?

その時思い当たったのが「批判厳禁ってホントだろうか?」ということです。たしかに荒唐無稽なアイデアを言ったら怒られそうな雰囲気でブレストなんてできません。世の中には他の人の批判が得意な代わり自分では何も提案しない人がいるのも事実。ブレストは考えを拡散するためにやるのだからリスクの吟味とか選択・収束するのは次のステップですよ、というのもよく分かります。でもブレストをする際、やっぱりある種の「批判」が欠かせないと思うのです。

いや別に、最初から相手を非難する態度で攻撃的に臨もうというのではありません。そうでなく、誰かが何かを言ったらそれをうのみにせず、なんでそういうアイデアが出てきたのか、背景にあるいつ、どこで、誰が、誰に、何を、どうやって…という論理を探りながら耳を傾けよう、ということです。もうひとつのルール「便乗発展」だって何にでも便乗すればよいというものではなく、あるアイデアの着眼点のどこかに魅力を感じて発展させるわけです。つまりその時点で内心何かを却下している、批判的に物事を考えているということになります。

ブレストの「批判厳禁」とは、きっと頭の中では正しく批判的に(うのみでもなく、全否定でもなく、可能性の目を探しながら)考えよう。立ち居振る舞いとしては決して他の人が萎縮するようなネガティブな空気はつくらないようにしよう、ということなのでしょう。

クリエーティブな思考をするためには「常識にとらわれず、批判的に考える技術を身に付けなさい」と言われる一方で、代表的な発想法のルールが「批判厳禁」なんですから、混乱しますよね。次回セミナーではきちんと修正しようと反省しました。

お正月はどうしてもお節料理をつくり過ぎちゃうので、会社のテニスコートでご一緒している先輩の植田さん、奥山さんご夫妻を強引にお誘いして新年会となりました。そして秋田の銘酒・福小町で酔っ払ってくると、ついついすまし汁か白みそ&あん餅か、決着を付けたくなります。皆さんに試していただき「ね?あん餅の雑煮なんて気持ち悪いでしょ?」とアピールしていたら「いやいや、意外にイケますよ」という意見でまとまっちゃいました。

ブレストだけでなく、日常会話でも「批判厳禁」のようです。
新年は心を入れ替えて、言葉に気をつけて連載していこうと思います。

どうぞ、召し上がれ!

 

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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