位置情報ビッグデータで見る人の流れ #05

北陸観光の実態を位置情報データから見てみた―その2【NewsPicks×電通報】

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員
北陸観光の実態を位置情報データから見てみた その2

電通「人の流れラボ」研究員の秋元です。「北陸新幹線の開業によって、北陸観光の人の流れがどのように変化したのか、位置情報ビッグデータを活用して見てみよう」シリーズの2回目です。

1回目は、北陸新幹線の開業による交通利便性の変化から、影響が大きく出そうな石川(終着駅)、富山(途中駅)、長野(途中駅)について、延べ宿泊者数や来訪者の属性の変化を見ていきました。
北陸観光の実態を位置情報データから見てみた -その1

2回目からは、北陸の中でも延べ宿泊者数が伸びた富山県に焦点を当て、現地で観光業に携わる関係者の話を交えつつ、観光の実態や肌で感じる変化、今後の課題について位置情報データを交えて考えていきます。以下は、1回目の記事の要約です。

駅前の市街地から放射状に来訪者が増えた

1回目で紹介した通り、富山県の延べ宿泊者数は、北陸新幹線開業直後の2015年4~6月(第2四半期)が対前年比120%、7~9月(第3四半期)が125%と大きく跳ね上がっています。また、都道府県別に富山県への来訪者を見てみると、東京都や愛知県は増えていますが大阪府は微減しました。

富山県来訪者の都道府県別内訳


これは、北陸新幹線の開業に伴ってサンダーバード号が大阪〜金沢止まりとなり、富山県へは金沢での乗り換えが必要になってしまったことが要因の一つと考えられます。富山県在住の観光業関係者に意見を伺うと、「観光客が増え、問い合わせも激増した。大阪圏からの来訪者が伸び悩むことは想定範囲。大阪圏からの集客は、バスツアーの活性化に期待したい」とのことでした。

 

富山県/石川県来訪者の年齢別内訳

続いて、首都圏からの来訪者に限定して「富山県VS.石川県」とした場合に、20代の吸引力で差が付いているように見えました。

富山県の観光業関係者によると、「石川県は金沢市を中心に長い時間をかけて、老若男女に対して強いブランドイメージをつくってきた。若者向けにも、アートを中心にした施策やライトアップバスによる夜の街巡りなど、丁寧に対策を練っている。このあたりは一朝一夕で追いつける問題ではなく、地道に富山県の良さをアピールしていく。金沢は人気が高い分、大型連休などは宿の確保が困難で、宿泊費も高くなりがち。学生や若手社会人の団体客、スポーツチームなどの合宿客に対して、トレーニング環境が整っていて、かつ大人数の収容が可能な施設を紹介し、富山県の良さをアピールする活動を続けている。おかげさまで、こういった顧客がリピーターになっている」とのことでした。

首都圏からの来訪者の滞在分布
次に、「首都圏からの来訪者」を対象に、5月4日の日中に「富山駅周辺に滞在した人」の分布状況を、「500メートルのマス目毎に集計した図」にしてみました。赤色が2015年のみ滞在者がいたマス目、緑色が2014年のみ滞在者がいたマス目、白色が両年共に滞在者がいたマス目になります。

2014年に比べ、北陸新幹線開業後の2015年は、富山駅前の市街地ゾーンから離れた所にも赤いマス目が点在しており、市街地以外の各観光スポットへの送客が進んでいるように見えます。

富山県の観光業者に富山の魅力を聞いたところ「富山駅前に限定されずに県内各所に名所が点在しているのが富山県の魅力。『オール富山』として回遊性を高めていくことは大きな課題だと思ってるので、交通機関や各観光協会とも連携を深めていきたい」との回答をいただきました。

長野県に一番近い国際空港は富山県へ。アピールで来訪者を増やしたい

ここでは、富山県のお隣、長野県との交流度を見ていきましょう。対前年比では、富山県から長野県へ行く方が増えています。長野県との交流度

富山の観光業関係者からも、こんな話が聞けました。

「2015年は善光寺のご開帳の年だったことも影響していると思うが、軽井沢のショッピングモールなどの大型商業施設へ、富山県から人が流れたのではないか。隣同士とはいえ、これまで軽井沢に向かう人は車で4時間近くかけて出掛けていた。それが1時間半程度の時間で気軽に行けるイメージができた」

一方、長野県からもっと富山県に来てもらうためのプロモーションもスタートしています。

「長野県は『山の幸』が豊富な県だが、海に接していないので『海の幸の富山』をアピールしている。北陸新幹線が開業した結果、多くの長野県民にとって『富山きときと空港』が一番近い国際空港になり、長野県内で新聞広告が展開された。いろいろな方面から両県の交流を深める活動が行われている」

長野県内で展開された「富山きときと空港」の新聞広告

長野県内で展開された「富山きときと空港」の新聞広告

知りたいのは、外国人来訪者の動態

本記事で紹介してきたオープンデータやビッグデータを活用した分析結果を見ていただき、富山の観光業のために必要なデータがあるか聞いてみました。

「日本人来訪者については、過去の経験の蓄積があり実態をつかみやすいが、外国人来訪者に関する情報収集には苦労している。直行便が開通していることもあり、以前から台湾の方は数多く富山に来てくれているが、北陸新幹線の開業後は欧米圏の方の姿を目にする機会が非常に増えた。こちらも宿泊統計などはチェックしているが、まだまだ情報が足りないと感じている。ビッグデータを使って、外国人来訪者の滞在状況が分かるようであれば、ぜひ知りたいと思っている」

富山の観光業関係者の意見から、「外国人来訪者についての実態を把握したい」というニーズが確認できました。昨今の国主導のインバウンド施策や北陸新幹線の開業によって、「これまでの外国人観光客の層とは大きく変わってきている」と肌で感じているようです。富山県 外国人来訪者数推移

オープンデータ(※)で、外国人来訪者の富山県への来訪状況を見てみると、四半期ごとの外国人来訪者数は順調に増えており、北陸新幹線の開業直後の2015年4~6月の第2四半期(Q2)は特に大きく伸びています。

※「RESAS:外国人訪問分析」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」、JNTO「訪日外客数」

 

富山県 国別来訪者数
また、2015年1~3月の第1四半期(Q1)と2015年4~6月の第2四半期(Q2)に注目して、富山県への国別来訪者を見てみましょう。台湾からの来訪者が最も多いことは変わらないのですが、Q2は台湾以外の国々からの来訪者も顕著に増加しています。

そこで次回は、モバイル空間統計の訪日外国人来訪者データを活用して、海外からの富山県への来訪者の特徴を細かく見ていきたいと思います。
 

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モバイル空間統計とは、NTT ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して作成される人口の統計情報です。「モバイル空間統計」はNTTドコモの登録商標です。

お問い合せ先:電通 人の流れラボ
contact@hitononagarelab.jp

プロフィール

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員

    大手自動車メーカーのマーケティング子会社を経て2001年に電通に入社。
    以来、多様なクライアントに対してデータドリブンなマーケティングサービスを提供。
    「Samurai Purchase」「DecoMarket」「;Dcloud」の事業開発を経て、
    13年から「人の流れラボ」に参画。
    位置情報ビッグデータなど各種データを組み合わせたソリューションの開発に挑戦している。

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