位置情報ビッグデータで見る人の流れ #04

北陸観光の実態を位置情報データから見てみた―その1【NewsPicks×電通報】

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員
北陸観光の実態を位置情報データから見てみた その2

電通「人の流れラボ」研究員の秋元です。「位置情報ビッグデータ」シリーズの第2弾として、「北陸観光」をテーマに人の流れの変化を見ていきたいと思います。

北陸エリアは2015年3月に北陸新幹線が開業し、「観光が大きく伸びた」「日本人のみならず訪日外国人観光客が数多く訪れている」という話をよく耳にします。その一方で「金沢の一人勝ちでは?」「長野は通過されてしまうのでは?」「首都圏へのストロー現象が発生するのでは?」といった懸念も持ち上がっていました。

ストロー現象とは、都市圏と地方が高速交通網でつながったことで、地方の消費や人材が都市圏に吸い取られてしまう現象。

 

今回から4回シリーズで、北陸新幹線開業前後で人の動きの変化の様子を、携帯電話の位置情報ビッグデータやオープンデータを活用して見てみようと思います。開業前後に焦点を当てたため、幾つかのデータが約1年前のものとなりますが、その点ご容赦ください。

本シリーズもこれまで同様NewsPicksさんと共同で作成しました。

まず北陸新幹線の開業前後で交通の利便性がどのように変わったのかを確認しておきましょう。

東京〜金沢間の所要時間が約1時間20分短縮東京~富山/金沢間の所要時間

北陸新幹線開業により、東京〜金沢間で79分短縮された2時間28分、東京〜富山間で63分短縮された2時間8分で到着できるようになりました。所要時間の短縮において最も恩恵を受ける金沢に対して、途中駅となる長野・富山の来訪者数はどのように変化したのか気になります。

 

大阪/名古屋~富山間の所要時間また、北陸新幹線の開通によって、関西・中部圏との交通にも変化が生じました。所要時間は大阪〜富山間、名古屋〜富山間ともに少し短縮されていますが、これまで富山まで直通運転だった特急電車が金沢止まりとなり、金沢〜富山間は新幹線または在来線に乗り換える必要が生じてしまいました。この乗り換えが、関西・中部圏からの来訪者数にどの程度影響しているか気になります。
 

富山・石川・長野3県とも宿泊者数は対前年比プラス延べ宿泊者数 対前年比推移

それでは開業効果を見ていきましょう。

まずは観光産業にとってインパクトの大きい宿泊者数の増減を、オープンデータで確認します。対前年同時期比較で、富山・石川・長野県の延べ宿泊者数(観光庁「宿泊旅行統計調査」)を見てみました。北陸新幹線の開業は2015年3月中旬なので、2015年1~3月(第1四半期)以前が開業前、2015年4~6月(第2四半期)以降が開業後となります。

真っ先に目に入ってくるのは富山県の伸びで、開通直後の2015年4~6月(第2四半期)に対前年比120%と大きく跳ね上がっています。石川県も同様に開通直後に120%近い伸びを見せています。素通りされるリスクが懸念されていた長野県も対前年でプラスに転じており、3県ともに宿泊者数を増す結果となりました。

一方、2015年10~12月(第4四半期)にかけて伸び率が下がってきており、ブームがひと段落しつつある時期だったともいえそうです。客室稼働率の推移

 次に宿泊施設の客室稼働率(宿泊施設の客室供給数に対して、実際にどの程度宿泊があったのかを表す指標)を見てみます。こちらも開業後に大きく伸びており、富山県は全国平均並みまで上昇しました。石川県は全国平均を大きく超え、2015年7~9月(第3四半期)には72.9%(同時期の全国8位)まで上がりました。客室稼働率

この2015年7~9月(第3四半期)の石川県の客室稼働率を、宿泊施設の規模やタイプ別に見てみると、中規模以上の施設の稼働率が高いことが分かります。ビジネスホテルやシティホテルの稼働率は86%という数字になっていますので、この時期はほぼ満室に近い状態が続いていたものと思われます。

位置情報ビッグデータの集計条件を設定する

「北陸新幹線の開業によって、どのような人たちが動いたのか?」。その人たちの属性を把握するために、ドコモ・インサイトマーケティングのご協力の下、モバイル空間統計のデータを活用します。

モバイル空間統計とは、NTT ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して、24時間・365日、性別、年代別、居住地別に推計される人口の統計情報です。全国で約7000万契約のサンプル数を持つ、日本最大級の位置情報ビッグデータになります。1時間ごとの人数が把握でき(人・時)、滞在時間を考慮した分析が可能なデータです(通過のみと滞在した人を同じようにはカウントしておりません)。

 

開業直後の方が効果を把握しやすいため、時期は開業後の最初の大型連休となる2015年ゴールデンウイーク期間中とし、具体的には2015年5月4・5日の平均値をとりました。時間帯は宿泊時間帯となる午前4時台の1時間で設定し、石川・富山・長野県の滞在者を県単位で集計しました。

それでは3県の滞在者が、どの都道府県から来たのか見てみましょう(午前4時台の滞在者を、来訪者と判断します)。石川県来訪者の都道府県別内訳

今回、首都圏からの時間短縮の恩恵を最も受けている石川県は、東京都・愛知県・大阪府からバランス良く人を集めました。石川県来訪者の年齢別内訳

 新幹線利用者が多く含まれる首都圏からの来訪者に絞って、年齢構成を見てみました。各世代満遍なく伸びています。

 

富山県来訪者は30・40代が大幅増、大阪府からは微減富山県来訪者の都道府県別内訳

次に富山県を見てみましょう。東京都・愛知県からの来訪者が伸びましたが、大阪府は微減となりました。サンダーバード号の終着駅が金沢駅になってしまったことが影響しているようです。富山県来訪者の年齢別内訳

首都圏からの来訪者の年齢構成ですが、30・40代が大きく伸びています。石川県と比べて、20代と60代が微増にとどまっています。

長野県の素通り現象は心配なし

長野県来訪者の都道府県別内訳

続いて長野県を見てみます。地理的な近さもあり、東京都からの来訪者が非常に多くなっています。首都圏からの来訪者が減っていないことから、新幹線の開業による素通り現象は心配なさそうです。

ストロー現象の影響は軽微

ストロー現象の有無

ストロー現象を確認するために、流出状況と流入状況を確認してみました。「富山・石川県の居住者のうち、首都圏に滞在した人数の前年比」を流出数、「首都圏の居住者のうち、富山・石川県に滞在した人数の前年比」を流入数として比べてみました。流出数・流入数ともに増加傾向になっており、富山・石川県と首都圏の交流度合いが上がっています。富山・石川県ともに流入超過となっており、ストロー現象の影響は少ないと言えそうです。
長野県との交流度

続いて富山県と長野県、石川県と長野県の交流度の変化を見るために、先ほどと同様に流出状況と流入状況を確認してみました。すると、富山・石川県の両県から長野県への流出は増加しており、長野県からの流入は両県ともに減少していました。

双方向で交流度が上がるという結果にはならず、多少温度差を感じる結果となりました。

今回のまとめ:石川・富山県は東京からの来訪者を大きく増やした石川・富山県は東京からの来訪者を大きく増やした

位置情報ビッグデータで見る「北陸観光」、いかがでしたか?

次回は、今回のデータを元に、富山在住の観光業関係者に話を聞いていきます。

NewsPicks NewsPicksでは、国内随一のインフォグラフィック・エディターによるオリジナル記事で、ビジネスに役立つ情報をわかりやすく理解することができます。

モバイル空間統計とは、NTT ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して作成される人口の統計情報です。「モバイル空間統計」はNTTドコモの登録商標です。

お問い合せ先:電通 人の流れラボ
contact@hitononagarelab.jp

プロフィール

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    秋元 健
    株式会社電通 CDC 事業開発ディレクター/人の流れラボ研究員

    大手自動車メーカーのマーケティング子会社を経て2001年に電通に入社。
    以来、多様なクライアントに対してデータドリブンなマーケティングサービスを提供。
    「Samurai Purchase」「DecoMarket」「;Dcloud」の事業開発を経て、
    13年から「人の流れラボ」に参画。
    位置情報ビッグデータなど各種データを組み合わせたソリューションの開発に挑戦している。

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