新明解「戦略PR」 #38

相談3:オウンドメディア活用の運用は、やっぱり専門会社がいいっすよね?

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

3回目を迎えたシリーズ「#教えて井口さん」。すでに自分自身は長期連載の気持ちになっておりますが、「あれ、こないだのシリーズもう終わったんでしたっけ?」なんて言う人もいるんで、石にかじりつく気持ちで今回も書いてみようと思います。でもね、歯に衣着せぬ物言いするといろんなところに敵ができちゃうんでね、そろそろおとなしくした方がいいんじゃないかと思いつつもね、こないだ「あれがいいんだよね! 議論も呼ぶしさ!」という応援メッセージをいただきましたんで、さー、今日も猛暑日の中、行ってみましょうかね! ちなみにご相談は、板橋区在住のNさんからです(この人、第1回の相談者と同じじゃね?)。

オウンドメディアへの関心高まるその裏側で

マスメディアをしのぐ勢いでソーシャルメディアが台頭する中、個々の生活者にダイレクトに情報を届けようとオウンドメディア(自社サイト)の見直しを図る企業が増えています。一時期、Twitterで企業の公式アカウントを立ち上げるなど、SNSをうまく活用する企業が登場、その成功事例が取りざたされた時もありましたよね。あの頃は企業が保持できる情報発信のための新たなツールとしてのトライアルがなされており、その意味で注目が集まっていたと思いますが、まだその有用性と危険性について、あまり明らかになっていない時期でもありました。成功事例に目が行き、それをマネしようとした企業が、形だけ整えたはよいものの、結局頓挫するケースも相次ぎ、企業としてのSNSを利用したオフィシャルな情報発信については、今も慎重になっている部分があるようです。ただし、さらにそこから環境が変化し、マスメディアだけに頼らない主体的な情報発信が必須の様相となってきているのはご存じの通りです。

しかし各社にとって、「次世代オウンドメディア活用」などと言われても、どう自社サイトを改革していけばよいのか、方向性を定めることさえ難しいというところもあるのでしょう。何かしらの大きな課題に直面していれば、むしろ対処しやすいですが、「より積極的に生活者とつながるために、そこに受け入れられるようなコンテンツを開発し、自社メディアでアピールしていく」などと言われても、曖昧で何から始めていいのか迷ってしまいますよね。これまで公式情報を掲示・アーカイブするためだけの、いわば書庫のようなオウンドメディアしか保持してこなかった企業にとっては、なおさらのはずです。そして「何を載せれば喜ばれるのか?」という疑問に目線が横滑りし、それに対して「じゃ、最近はやりの動画かな?」などと、コンテンツそのものというよりも、掲載されるフォーマットについて議論してしまうなどの迷走に至りがちです(#教えて井口さん。シリーズ1参照)。もしくは、現在オウンドメティアの制作を任せている会社に、運用まで丸投げしてしまうこともありがちでしょう。「やっぱ運用会社に相談するのが一番効率的っしょ?」みたいな判断が、働くんですよねー、うん、分かる、分かる。

情報の「整理、創造、連携」が重要

とはいえ、それはね、後でいいんですよ。もちろんオウンドメディアへの呼び込みのため、さまざまなウェブ広告やキュレーションメディア連携、さらにSEO、SEM対策は必要ですし、流入経路や回遊率の分析なども重要です。しかし、それはもう十分やってますよね? 今、気にしたいのは「あなたのオウンドメディアに、本当に生活者が知りたいこと、載っていますか?」ということ。その目線でコンテンツの方の分析をしてもらいたいんです。まさに生活者に響くコンテンツをいかに生み出し、それを起点に社会とつながっていけるかというコンテンツマーケティングの視点が重要なのです。ちなみに昨今、このコンテンツマーケティング自体も結局コンテンツの使い回し方法的な捉え方をされることがあるので、これも気を付けたいところです。使い回しのスキル、ノウハウ、TIPSということではなく、「コンテンツそのもの」にもっと目を向けてほしいのです。そしてそこにPRパーソンの目が生きてくると私は思うのです(はい、手前みそなヒト、みぃつけた!)。

「じゃ、そのコンテンツそのものってどうゆーことよ?」となりますよね。つまり、これまでオウンドメディアに置かれていた情報ってのは、やはり企業が伝えたいこと、あるいはとりあえずここに保管しておこうってものがメインだったんじゃないかということなんです。それはオウンドメディアを本当のメディアとしてまだ認識していなかったから起こってしまったこと。単なる書庫、格納庫としか見ていないとそうなってしまいます。しかし今、生活者にダイレクトに接点を持つメディアとしてこれを活用しようとしているわけですから、「用意した情報が最終的に生活者にどのように受け取られたか」にまで企業サイドは関心と責任を持たねばならないところまで来ているのです。

「とりあえず置いといただけ」とか、はたまた「関心ある人は、読んでみてね」ってのじゃダメなんですよね。「見てもらう、読んでもらう」、さらには「理解してもらう、納得してもらう」、そして「共感してもらう、シェアしてもらう」まで求めるべきなんです。そのためにはどうすればいいのか? そう、現状あるコンテンツを棚卸しして再整理し、求められているのに手元にない情報は創造活動を行い、またそれぞれの情報を有効活用するために内容やタイミングの連携を設計していかねばならないのです。その整理のベースには、「企業、生活者、社会」のそれぞれの目線が必要です。「企業が何を伝えたいのか」「生活者は何を知りたいのか」「そして社会環境はどうなっているのか」をそれぞれ掛け合わせながら、そのコンテンツを探し、加工し、創り出していかねばなりません。でもそれって面倒ですよね。そこでPRパーソンが持つ「生活者の目、社会の目」を活用してもらいたいのです。お悩みの方は、まずお声がけいただきたいですね(はい、出ました「手前みそPart2」!)。

「企業が何を伝えたいのか」「生活者は何を知りたいのか」

オウンドメディア運営の責任部署がはっきりしないところも…

現在も多数の企業の方からご相談を受け、そのコンテンツ提案をさせてもらっているのですが、ここで頻繁に直面する問題が、オウンドメディアの運用管理を行う部署がまちまちなことです。対外的な情報発信という意味でいけば、できれば情報を一元管理する部署、例えば広報部などがその担い手となってもらいたいものですが、企業によって事情はさまざまでしょう。オウンドメディアをマーケティング寄りに活用している企業では、各製品事業部などがそれぞれのページをCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)などにより部分的に切り分けて運営していることもあるでしょうし、それが運用上の効率性を高めることも理解はします。

とはいえ、現場的な作業を個々の担当者に任せつつも、全体としての掲載情報の管理やバランス、あるいは掲載タイミングなどを包括管理する部門があってしかるべきだと思うのです。でなければ、やはりそのオウンドメディアも単なる情報掲示板でしかなくなってしまうからです。コーポレート情報とマーケティング情報をうまく連携・連動させながら活用していくことが重要で、そのための情報発信カレンダーを作成し関係者で共有するべきでしょう。もちろん立場の強い一部署の都合が極端に優先されてはいけないので、定期的にそのバランス感を関係者で共有、議論し、計画を修正・精緻化していくべきだと思います。

企業の顔としてのオウンドメディアなのですから、ここは丁寧に管理、しかし最大限に活用していきたいものですね。小手先のデザインリニューアルではなく、その運用目的やそれに適した運用部署なども、ここはフラットに検討し直してみたいところですね。折しも企業のダイレクトな情報発信が「ブランドジャーナリズム」と称され、欧米で先進的に取り組まれています。企業の経営者や製品開発者が、自社制作の映像でオウンドメディア・コンテンツとして登場し、企業の行く末やビジョン、あるいは製品開発ストーリーやその裏側などを伝えることで生活者とのダイレクトなつながり(エンゲージメント)を創り出そうとしているのです。ニュースリリースなどもメディア向けだけでなく、生活者に向けてもわかりやすいものに加工する必要があるかもしれませんし、テキストだけでなく動画リリースといった手法もますます増加、当たり前になってくるかもしれません。これまでと異なることをしようとするのは確かに大変ですが、ここは一発、取り組んでみる価値はあると思いますよ! まずは井口までご相談くださいませ!(あ、次の質問も絶賛募集中です!)

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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