新明解「戦略PR」 #43

年の瀬の風物詩? 日本の「PRアワード」決まったよ!

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

国内PR業界に注目!気持ちが熱い、層が厚い、そしてなにより暑苦しい!

日本では12月になると「今年の漢字」「新語・流行語大賞」「ヒット商品番付」などなど、一年を締めくくるさまざまな発表がありますよね。私も、自分が関わったPRプロジェクトがエントリーされたりすると、「いやー、今年も少しはトレンド開発に寄与できたかなぁ」などと感慨にふけったりするものです。一方、これらに全く絡めなかった年は、「努力が足りなかったんだなぁ」と、これまた反省にふけるわけです。

一年の締めくくり、そういったしみじみ感って大切ですよね。そんな秋から冬への季節感を尻目に、ムッチャ常夏系の熱さ、いや暑苦しさを醸し出しているのが国内PR事例の頂点を決めるイベント、日本パブリックリレーションズ協会が毎年実施している「PRアワードグランプリ」なんです。そう、記憶力の良い方は、先日のコラムで「PRアワードグランプリ」大幅刷新で開催とご紹介していたの、思い出していただけたのではないでしょうか。
(前回予告していた「リ・ポジショニング手法:使い方を変えてみる」については、来月お送りしますね!)

昨年から徐々にその改革を進めていた同賞ですが、その審査基準は世界の頂点「カンヌライオンズ」こと「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」などと同様に、戦略やアイデア、そして活動の成果といったところをしっかりと専門家たちが評価する形に変化してきています。また、これまで少なかった広告会社や事業会社からのエントリーも増え、一昨年39件、昨年57件、そして今年は前年比約2倍となる107件のエントリーがありました。さらに言えば、海外アワードで競ってきたエントリーも多数参加し、まさに審査は熾烈の極みだったと聞きます(あ、私は今回トークセッション担当でしたんで、すんません。そこ、又聞きです。w)。審査委員長の博報堂ケトル嶋浩一郎氏も、議論の熱さは海外に負けていないことを授賞式後、語っていました。

実は海外アワードより難関じゃね?のうわさあり

最終的に今回の受賞者は、ブロンズ10件、シルバー4件、ゴールド4件、最後にグランプリ1件となりました。
全エントリー数に対して、ブロンズ以上の受賞エントリーが18%、シルバー以上で8%、ゴールド以上で5%となりますので、通常ゴールドが全体の1割程度出る海外アワードに比してもかなり狭き門という結果なっています。
以下が、今回ゴールドを受賞した4エントリーです。

「近大発ナマズ」の研究・広報一体化コミュニケーション戦略

エントリー会社・事業主体:近畿大学

LOVE THERMO #愛してるで暖めよう

エントリー会社:電通パブリックリレーションズ、電通、電通アイソバー、事業主体:パナソニック

森永製菓「フレフレ、部活。母校にinゼリー」キャンペーン

エントリー会社:電通、事業主体:森永製菓

カルビーフルグラの朝食革命

エントリー会社:博報堂、エムスリー・カンパニー、事業主体:カルビー

今回はそれぞれ詳しく語りませんが、どれも成果をきっちり出していて、自分が関わっていたかったなぁと思えるものでした(あ、解説要望の方は別途ご連絡くださいませー)。

多数の共感醸成を成し遂げ、社会ルールをも変えた覚悟に拍手

そして熱戦を制してグランプリをゲットしたのはコチラ。

スマートフォン(スマホ)での領収書電子化と原本の長期間保管義務撤廃を実現する規制緩和PRプログラム

井之上パブリックリレーションズ、事業主体:(株)コンカー

うーん、長いタイトルだなぁ。受賞式でもみんなにそれをいじられていましたが、そんなところも審査員の心をつかむテクニックなのかも。

でもまじめな話、プレゼンも分かりやすかった。タイトルだけ見ると小難しい感じがしますが、実はビジネスマンにとっては、とーっても身近な話だったんです。聞いてるうちに「あるよー、あるある!」みたいな雰囲気が場内を席巻。そう、みなさんの会社でも経費精算って結構めんどいじゃないですか。会社によっては、専用の用紙に領収書をのり付け添付して提出しなければならないというところも。今回のエントリーは、これら紙の領収書の電子化を推進する規制緩和PRだったんです。これまで日本では紙の領収書しか正式承認されませんでしたが、これが2017年1月からスマホで撮影したものなどを原本として使えるようになるんです。

個人個人ではその効果を感じきれないかもしれませんが、プレゼン冒頭で提示された数字で一気に納得、自分ゴト化しました。

これまでは、その紙の領収書を証憑書類(しょうひょうしょるい:金銭の受け渡しの証明)として企業の大小問わず7年間(!!)の保管が義務付けられていました。これが上場企業の規模になると、保管する領収書が段ボール9000箱、コストにしてなんと年間5億円かかるというのです。あわわわ。ここから個人レベルや日本の経済市場に数字を置き換えていきます。

●個人が経費精算に費やす時間
・日本のビジネスパーソンが生涯で「経費精算」に費やす日数は52日
・その中でも、一人のビジネスパーソンが領収書の「のり付け」に要する日数は12日(驚)

●日本企業が経費精算に費やす金額
・日本企業における領収書の紙の保管コストは年間約3000億円(経団連試算)
・「のり付け」などの人件費が年間約6000億円(笑) 
・税務監査コストが1000億円(以上、コンカー試算)

はい、これなら暗算できるな。えーと、全部で、、、い、、、1兆円!!!(゜◇゜)
日本が無駄にしている社会コストって、そんなになるんですか? 先生!!
と、思わずため息が。日本の変なしきたりが日本企業の国際競争力の足引っ張ってんの??

ね? 思わず共感。で、このルールを変えるべく、規制緩和を仕掛けていった結果が先の領収書等の電子化容認となるわけですね。あざっす! 井之上パブリックリレーションズ。手法としては、第三者機関である日本CFO協会などと共同で、日本企業の不満をうまく調査であぶり出し、その結果を用いての政府への働き掛け、すなわちガバメントリレーションズを継続、さらに競合とも時には共闘するコンペティターリレーションズなどにより世の中の合意形成をうまく演出していったんですね。監督の采配、あっぱれっす!

クライアントと同じ目線で、横に立って共闘できているか

そして実は事業主体のコンカーさんがスゴイ! この規制緩和の結果、自社の経費・出張管理サービスに顧客を取り込むというブリッジなわけですが、ここの三村真宗社長がこれまたPRパーソンにとっては魅力的なんですね。彼が標榜するのが「PRドリブン経営」。すなわちPR活動を経営の軸に据え、PRプログラムから経営戦略を決定していくというもの。「はい、ちょうどこのサービスできたからさ、そろそろ発表しちゃう?」とか、「ま、ちょっと次回に後回しだな」なんてことは一つもない。「このタイミングで、このコンテンツを発表すれば、ビジネスにこれだけのリターンがあるのは間違いない!」というスケジュールを先に作っちゃって、それに合わせて全ての意思決定、事業推進をしていくというもの。PRがもたらす影響力の大きさを理解した上で、最適な局面でその威力を100%享受してやる! という姿勢がスゴイんです。

こういう企業さんと信頼関係を築いて仕事を続けられたら、なんて幸せなことでしょう。そのようなパートナーさんとの実績数が、今後のPR会社の比較要件にもなってきそうですね。

この事例だけでももっともっと紹介したいことがあったんですが、今回は紙面の都合上、ここまでといたします。そして私、決めました。2017年は「ヒット&アウェイ」から、企業への密着度合いを最高に高める「寝技師」と呼ばれる存在になることを! なが~く愛して、くれますか?

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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