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「RADIO AND TELEVISION IMPROVEMENT 2021」リポートNo.3

AI技術を駆使してテレビ広告の効果を最大化!

2022/04/28

さまざまな産業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む昨今。広告業界にも効率化や最適運用を目指した変革が広がっています。電通ラジオテレビ部門においても、広告主により良い広告サービスを提供するために、最新の技術を活用したソリューションやメニューを開発しており、さらに、デジタルだけでは成し得ない、ラジオ・テレビならではのコンテンツによる起爆施策も進化させています。今回は「RICH FLOW(運用型広告)」についてお伝えします。

※本記事は、電通ラジオテレビ部門が2021年11月10日~12日に実施したウェビナーの内容を記事化しました。

テレビの広告素材や広告枠を柔軟に組み換えられないか?

テレビではさまざまな広告がオンエアされています。広告主は広告会社を介して放送局から広告を流す枠を購入しています。その買い付けでは、オンエアされる約2カ月前に期間、規模、放送局の選定をして発注します。そして売買が成立するとそこから原則的に変更はできません。テレビは広告内容の審査なども含めてルールが厳格であり、それがテレビ広告の信頼性につながっています。

一方でデジタル広告は、テレビ広告よりも出稿や広告素材の入れ替えなどが柔軟にできます。広告主からは、テレビ広告もデジタル広告と同様に、世の中の動きや視聴者の反応などを見ながら、放送枠や素材について柔軟に変えたいというニーズが高まっています。それと同時にテレビ広告の効果の見える化も求められています。

もちろんこれまでも、テレビの広告枠の購入においては、視聴率や番組視聴者についてのさまざまなデータ、さらに長年の経験などに基づいて、どの広告素材をどこで放映すれば効果的なのかを考えてきました。しかし、DXが進み、AI技術が進歩する中で、テレビ広告の効果を最大化するためには、テレビの広告枠の購入に新たなソリューションを開発する必要があります。

広告枠を組み換える2つの機能を持つ、「RICH FLOW(運用型広告)」

テレビ広告に対する広告主のニーズに応えるために電通が開発したのが、「RICH FLOW(運用型広告)」です。このソリューションには2つの機能があります。

①複数ブランドの広告枠を組み換えられる
一企業が複数のブランドの広告をテレビに出稿する場合、各ブランドの目標ターゲットを踏まえて、最適な広告素材の配分を即時に算出。また、オンエアがスタートした後に、視聴率などを踏まえて枠の組み換えができます。

RICH FLOW(運用型広告)

②複数の広告主の間で放送枠を組み換えられる
例えば、A社は、暑い日にアイスクリームのCMを出稿したい、B社は、F1層(女性20~34歳)に広告を届けたいという異なる目標に対して、各関係者の合意を前提に、両社にとって最適な広告枠をAIで分析して、広告枠を組み換えられます。

RICH FLOW(運用型広告)


 

高度なAI技術を活用して、最適な枠の組み換えを実現

広告枠を最適に組み換えるためには、さまざまなデータとそれを最適化する技術が必要です。電通では2015年からAI技術に着目し、データとAIの活用に強みを持つテクノロジーカンパニーであるデータアーティスト社と共同研究を行ってきました。

2017年には、過去の視聴率データ、番組ジャンル、出演者情報、インターネット上のコンテンツ閲覧傾向などのデータを踏まえたディープラーニング(深層学習)によるモデル構築を行い、放送前のテレビ視聴率を予測するシステム「SHAREST」の開発に成功。高速データ解析プラットフォーム内で予測視聴率を算出するプログラムを構築し、視聴率の安定的な予測が可能になりました。

「RICH FLOW(運用型広告)」には、この「SHAREST」を搭載しています。また、視聴率以外にも気象予測や世の中のトレンドなどさまざまなデータを活用。運用においては、多種多様なデータと最新AI技術に加えて、担当者による経験則も生かしながら、広告素材を最適に配分できるよう努めています。

ある食品メーカーでは、アイスクリームのテレビ広告に「RICH FLOW(運用型広告)」を活用。天候などを踏まえて、需要が小さいと見込まれる日は出稿量を減らし、需要が大きく見込まれる日は出稿量を増やすことで、商品の売り上げ増につながりました。

「RICH FLOW(運用型広告) 」が目指す3つのDX

「RICH FLOW(運用型広告)」を多くの広告主に活用していただくために、電通は、本ソリューションで、テレビ広告の3つのDXを目指しています。

①評価のDX
これまでテレビ広告枠は、基本的に視聴率での評価を行ってきました。しかし、視聴者の属性など利活用できるデータは多様になっています。その中で、広告主の目的に合わせた広告枠の設定が求められます。視聴率評価に加えて、天気連動、サイト来訪、SNS連動による評価など、テレビ広告枠を多様な切り口で評価し、データによる広告枠の価値の見える化を目指しています。

RICH FLOW(運用型広告)

②買い付けのDX
さまざまなデータに基づいたテレビ広告枠の評価を買い付けに生かすには人の手だけでは難しい問題があります。「RICH FLOW(運用型広告)​​​​​​」は、AI組み換え技術により、多様なデータを基にした広告枠の組み換えの自動化・高速化を実現しました。今後も最新のAI技術やさまざまなデータを取り入れて精度を上げていきます。

RICH FLOW(運用型広告)

③運用のDX
広告枠の組み換えを適切に行うためには、すべてを機械任せにせず、人による確認や判断も必要です。しかし多量なデータを活用し、高速運用を行うことは容易ではありません。本ソリューションでは、これまで以上に広告主と放送局との連携が重要です。複雑化する工数を簡略化したりDXを図ったりしながら、より多くの広告主に利用いただけるものにしていきます。

RICH FLOW(運用型広告)

放送ビジネスの「エコシステム」を発展させるために必要なこととは?

今回紹介した「RICH FLOW(運用型広告)」をはじめ、本連載では、電通ラジオテレビ部門が2021年に実施したウェビナーの内容をお伝えしてきました。

民放サービスは開始以来、広告をそのビジネスモデルとすることで高品質なコンテンツを生活者に無料で提供し続けてきました。これにより、日々の生活が娯楽・教育などさまざまな面で豊かになってきました。この「エコシステム」を維持するために、電通もさまざまな取り組みを行ってきました。

同時に、非常に幅広いリーチを持つテレビとラジオをマーケティングに活用できる機会を創出し、企業のマーケティング活動も支えています。

RICH FLOW(運用型広告)

電通ラテ局はこのビジネスモデルを維持・発展させるために、今後も広告ソリューションをさらに進化させていきます。そのためのポイントは3点あります。

一点目は、「購買」におけるファネルの考え方のアップデートです。例えばテレビ広告においても効果を証明できず、「広告が効いている実感はあるが、数値では表せない」領域がありました。この点について、電通はマーケティングチームの知見を集結し、一つの型を提唱しました。

参考記事
売り上げ全体をマネジメントする「SN理論」とは


二点目は、テレビとラジオをリーチメディアと捉えた時のソリューションです。広く届けることに加えて、ターゲット到達率やタイミングを最適化しようと考えています。例えば、本連載で紹介した、「RICH FLOW(運用型広告)」や「MIERO Digi × TV(ミエロ・デジテレ)」は、その一例です。デジタル広告で可能なことを、テレビやラジオにおいても実現していきます。

参考記事
テレビとデジタルを統合して広告効果を可視化する


三点目は、テレビやラジオのコンテンツと連動したマーケティングです。テレビとラジオの大きな特徴はコンテンツ制作力とその影響力です。企業のマーケティング活動をよりよいイメージを持って届け、大きな成果を上げることに努めます。

参考記事
テレビの持つ「3UP効果」とは?
タイム広告を効果的に使いこなす「4つのアプローチ」


デジタル・データの時代になり、ラジオ・テレビにおいても、より進化した広告サービスが求められています。今後も「エコシステム」を維持・進化し、引き続き良質なコンテンツを生活者に無償で届けるために取り組んでいきます。

電通ラジオテレビ部門が2021年11月10日~12日に実施したウェビナーで紹介した「radiko(ラジコ)」「コネクテッドTV」に関する記事も一読いただけると幸いです。

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