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UXという、当たり前の革命No.2

生活者主体革命

2013/07/11

世の中の環境変化によって生活者が情報発信の主体となったため、企業がUX(ユーザーエクスペリエンス)を意識しなければならなくなった。


企業が生活者に対し情報発信をするに当たって最も大きな環境変化があったとすれば、それは間違いなくインターネットの登場から始まり、現在ではスマートフォンやタブレットといったコミュニケーションツールの台頭であろう。
これらの変化は企業がUXを意識すべき十分な理由になっている。
生活者は自分の意思で情報を扱う行為を、より便利で快適に、そして出来れば安価にする方向で生きているのだ。より速く、より安く、より便利に、である。

その結果、技術の発展は生活者の情報に対する意識を、「受け身」から「能動」に劇的に変化させた。この生活者の意識変化を、当たり前じゃないか、と簡単に済ませてしまうビジネスマン、企業が多いのではないだろうか。

これはとんでもない間違いである。生活者にとって生活者主体革命、つまりUX革命が起きたと言っても過言ではない。

ユーザー体験は今までもあったが、そのユーザー体験は企業から製品やサービスを受けた後に感じる結果的(受け身)な体験だった。それがここでいうUX革命とは企業発ではなくユーザー発の体験で、そのユーザー発体験を企業側が取り込んで製品やサービスに反映させた上で、更にユーザーに返していくというサイクルまで含んでいる。

つまりUXは企業発ではない逆サイクルの革命なのである。したがってUXを当たり前ととらえずに、逆サイクルの革命と意識して自らのビジネスを変化させようとするか、新しく台頭してきたスマートフォンやタブレットにいちおう対応する程度か、によって企業にとってもビジネスマンにとっても、全く違う未来が待っているだろう。

生活者が主体的に、より速く、より安く、より便利にという感覚になっていくということはどういうことか考えてみよう。

まず思いつくのはオンライン書店Amazonでの本の購入である。私はもともと本が好きなのだがAmazonの出現で、初期のころは本を購入する回数が増えてしまった。便利になったのは好ましいのだが、本の出費には頭を悩ませていたのだ。ところがその後Amazonが中古の本を売り始めたのはご存じの通りだ。これには正直驚いた。従来の考え方だと新本を売る書店が古本を売るというのはあり得なかったからだ。両方が同時に売られているインターフェイスには驚きを隠せなかった。今まで見たことのない風景が出現した。そう思った。

Amazonのビジネスは更に進化し、書籍だけでない物販も充実してきているし、何よりもKindleというデバイスで電子書籍のサービスも現在進行形で進化させている。

このように書籍周辺での一例ではあるが、これだけ速く、安く、便利に、が日常生活で普通の感覚になってくると、そこまでのサービスが提供できない企業は置いていかれる可能性が出てくる。

既にAmazonは前述のようなインフラを整備してしまい、書籍のみならずあらゆるモノの販売プラットフォームとして確立され、進化をし続けている。そこまでできない企業は自社でプラットフォームを作るよりもAmazonに商品を提供することを考えた方が良いという判断もあるかもしれない。ただし、そのプラットフォームの中には他の競合企業も軒を並べることになる。
一生活者としてAmazonは魅力的だが、企業からしてみると、ライバル企業もAmazonに同居する中で、どう取り組むかはよく考えなければならないだろう。

人間の意識は技術の発展に適応して変化する速度も速いのだが、人間の集合体である企業の意識変化は個人ほど速くない。ましてや意識の次の行動に移すことはなおさらである。
Amazonは企業でありながら個人の意識をいち早く取り入れたUX企業といえるのではないか。

UX的感覚でいえば意識と行動は、ほぼ同時進行なのである。企業は素早く意識変化した生活者に対して、どれだけ速く、満足のいくサービスを提供できるか、そしてそのサービスを常に進化させられるかが重要で、生活者の反応をリアルタイムで見て修正していくことが必須となるであろう。

今回の一言:
企業が生き延びるためには、生活者主体革命という逆サイクルに自らの製品やサービスを合わせていかなければならない。