今や、データの分析・活用はビジネスの成長に不可欠です。しかし、取得したデータをビジネスに生かしきれていないケースも散見されます。「手元にデータはあるが、活用できていない」「CDP (Customer Data Platform:顧客データを収集・統合し管理するシステム)を構築中だが、有益な使い方が分からない」という悩みを抱える企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、データ活用によるビジネス・コンサルティングを推進している株式会社電通デジタル  ビジネストランスフォーメーション(BX)部門 データストラテジー事業部の小西良太氏にインタビュー。小西氏は、個社に対応するセミナー「AIワークショップ」を開催。データに基づくビジョン策定、AI・機械学習による営業効果向上を支援しています。
「データを起点にすることでビジネスが進化していく」ということはなんとなく分かるけれど、その具体的な道筋はイメージができない、という人も多いのではないでしょうか。前編では小西氏が所属するチームの特徴や、データドリブンな戦略策定について聞きました。
データに基づき、ビジネスの理想像を設計 Q.小西さんは、電通デジタルのBX部門データストラテジー事業部で、どのような役割を担っているのでしょうか。 
小西: AI・機械学習を含むデータを、どのように利活用すればクライアントさまの業務に役立つかということを、包括的にサポートしています。
株式会社電通デジタル 小西 良太氏 Q.ひと口にデータと言っても、アンケート、ユーザーの会員情報などさまざまなものがあります。小西さんが言う「データ」とは、何を指しているのでしょうか。 
小西: 少し高位なところからお話しすると、データとは“ファクト”です。一般的にデータというと、数値を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、数値以外にもテキストデータ、音声データなど、さまざまなデータが存在します。私自身は、顧客・ユーザーが発したものを客観的に捉えたのが「データ」だと考えています。
Q.データを使ったコンサルティングについて教えてください。企業からの相談に対し、どのようなソリューションを提供しているのでしょうか。 
小西: 私たちが最も大切にしているのは、ビジネスを通して何を実現するかというビジョンです。「To Be」と呼んでいますが、どのような施策を打ちたいのか、施策を打つことでどんなカスタマーエクスペリエンスを提供したいのかをまず明確にしていきます。そして、その実現のためには何が必要かを考えていきます。
ビジョン実現のために、必要なデータを提案 Q.AI・機械学習に興味はあっても、まだ活用法が分からない企業もたくさんあると思います。小西さんのところに寄せられる相談としては、どのようなものが多いのでしょうか。 
小西: 現状においては、「データを集計してインサイトを抽出する」というデータ分析業務が5割、AI/機械学習を活用したモデリング業務が3割、残りの2割が私たちが「データ利活用構想策定」と呼んでいるクライアントさまの業務にデータ活用視点を導入するためのコンサルティング支援です。
Q.策定したビジョンを実現するには、クライアントさまが既に保有しているデータだけではなく、新たなデータが必要になることもありそうです。そういうケースでは、必要なデータの取得を提案することもあるのでしょうか。 
小西: あります。例えば、「ユーザーデータを分析してCRM(顧客関係管理)を強化したい」という依頼があったとします。こうしたケースでは、そもそもCRMで何を実現したいのかという目標設定を精緻化するところから始めます。そうすると必要なデータが見えてくるので、何をそろえるべきかを洗い出し、リストをお出しします。
Q.データを利活用するプロジェクトにおいて、うまくいく・うまくいかないの分水嶺はどこにあるのでしょう。 
小西: 「データを集めればどうにかなる」と思っていらっしゃるクライアントさまも多いのですが、やはりデータは、ただあるだけでは意味がないのです。大事なのは、データを何のために使うか。そのためには、どんなビジョンを実現したいのか、実現するには何のデータが必要となるのか、というような“お品書き”を作ることが大切だと思います。
「AIワークショップ」で、各社に適したAI活用テーマを発見 Q.これまでのお話から、ビジョンメイキング、その実現のためのデータ利活用が大事だと分かりました。そこにAI・機械学習はどのように関わってくるのでしょうか。 
小西: 私たちが「AIワークショップ」を実施するのは、AI・機械学習があることでどんな世界観が待っているのかを、最初にインプットしていただきたいからです。「こんな技術があるから、これを実現できる」というユースケースがインプットされれば、クライアントさまのビジョンの描き方も変わります。そこから、それぞれの状況に応じて「こういう未来を描きましょう。そのためのパイプラインをこう組みましょう」と提案させていただきます。
Q.「AI勉強会」というテーマだけで言えば、他にも似たようなものが数多く開かれているとも言えます。小西さんの「AIワークショップ」の特徴や強み、高く評価されている点についてお聞かせください。 
小西: 私たちの「AIワークショップ」は一社ごとに行っています。特徴として掲げているのは、カスタマイズ性です。私たちは、AI・機械学習の活用事例を知ってほしいわけではありません。データを利活用しなければという焦燥感は、現代のマーケターであれば誰もがお持ちではないでしょうか。それに対し、事例を通して「自分たちはこういうことをすればいいんだ」という気付きの一端にしていただきたいと考えています。そのため、企業が抱える課題を事前にヒアリングし、その内容に応じて事例紹介をカスタマイズしています。
 
 
「データ利活用」と聞くと、手元にあるデータの分析・利活用を思い浮かべますが、それだけではありません。データを基にビジョンを策定すること、実現のための環境づくりも重要であり、それを包括的にサポートするのがデータストラテジストの役割と言えるでしょう。こうしたデータ利活用の第一歩として、小西氏のチームが開催しているのが「AIワークショップ」です。後編では、「AIワークショップ」の詳細、活用事例について掘り下げていきます。