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公開日: 2023/02/08

オンオフ統合マーケティングの要となる「5つの“C”」。実践力向上のためのフレームワークとは(後編)

多くの企業にとって、オンライン(デジタル広告)とオフライン(マス広告)の連携はマーケティング上の重要な課題となっています。オンオフ統合を推進するSepteni Japan株式会社(以下:セプテーニ)のマーケティング戦略本部・甲斐拓人氏、神蔵麻鈴氏、松浦みづき氏にインタビューする後編。前編では、セプテーニの強みから、オンオフ統合マーケティングの実践力を引き上げるフレームワーク「5Cモデル」の概要について聞きましたが、後編では、5Cモデルのフレームワークに沿って施策を進めた成果や、オンオフ統合マーケティングをスムーズに進めるために必要なこと、今後の目標について語ってもらいました。

5Cモデルを実際の課題に当てはめ、ステップアップしていく

Q.前編でご説明いただいた「5Cモデル」を企業さまにお話しする際、どのような反応が返ってくることが多いですか?

Septeni Japan株式会社 松浦 みづき氏

松浦:「5Cモデル」は、下記の表のように“5つの項目×3ステップ”の形に落とし込むことができます。

松浦:企業さまにこのようにご説明すると、ありがたいことに「分かりやすい」というお声をいただくことは多いですね。オンオフ統合は、「目的」ではなくて「手段」なので、何からやっていけばいいのか分からないという企業さまが多いのですが、ゴールまでの過程を分解してステップとして示すことで、理解しやすくなるのだと思います。とはいえ、5Cモデルはあくまでも概念であって、具体的に何をするかは示していませんし、この部分は個々の企業さまによって異なることなので、そこから先はプランナーや営業がそれぞれの企業さまと対話しながら固めていくという流れになります。

Q.実際の案件では、この5Cモデルに沿ってスムーズに進むものでしょうか?

松浦:5Cモデル考案時に、具体的に進行しているケースをこれらのフェーズに当てはめて検証したところ、フェーズ1の「チャネル統合」まではできても、フェーズ2の「マス・デジ連携」、フェーズ3「オンオフ統合」に進める段階でのハードルが非常に高い、ということが見えてきました。なぜかというと、マス・デジのデータを統合するというレベルになっていくと、当社だけではできないことが増えてきて、企業さま側でも体制面でご協力いただくことが必要になるからです。

Septeni Japan株式会社 甲斐 拓人氏

甲斐:お客さまの中で必要なデータを収集・整理・統合することに加えて、社内での協力体制を整えるために他部署を説得したり巻き込んだりといったことが必要になるので、全員が一丸となって取り組まないと難しくなるという現実があります。もちろんそこを乗り越えるためには、私たちのようなエージェンシー側がより深いところまでお客さまとコミュニケーションを取れていることも必要なので、壁にぶつかったときは私たちも一緒に試行錯誤しながらフェーズ3へジャンプアップしたいと思っています。

Q.「フェーズ1×Core(戦略・配信・指標の連携)」の中にCTV(コネクテッドTV)広告を取り入れている点も興味深いですね。やはりオンオフ統合を進めていく上では重要な存在になっていくのでしょうか。

Septeni Japan株式会社 神蔵 麻鈴氏

神蔵:そうですね。スマートテレビをはじめとした、インターネットに接続できるテレビデバイスを「コネクテッドTV」と呼びますが、アメリカ市場の拡大を見る限り、今後日本でももっと拡大していくのではないかと思い、注目しています。さらに、コネクテッドTV広告を導入することは、オンオフ統合のハードルを下げる大きなきっかけにもなり得ると考えています。

コネクテッドTV広告は、テレビデバイスに流れる側面もありながら、デジタルの運用型広告としてアプローチもでき、いわば両者の「いいとこ取り」ができるという特長があります。テレビCMの経験が少ない企業さま、あるいはあまりデジタルに力を入れていなかった企業さまが、まずはコネクテッドTVに出稿することで、テレビデバイス、あるいはデジタルの運用型広告としての配信意義や成果を感じていただくことができます。そうすると、次のステップにも進みやすくなるでしょう。

甲斐:実際に大手電機メーカーをご支援した際には、コネクテッドTV広告の活用を最初のステップとして戦略を立て、オンオフを統合したKPIの下、PDCAを回し、成果を継続的に上げられる状態を目指しています。

また、ある金融業界の事例では、消費者に「真っ先に思い浮かべてもらえる確率=第一想起率」の向上を目標として掲げ、地上波とデジタルそれぞれに適したクリエーティブを展開。実際にうまく機能して、申し込み数も大きく向上した実績もあります。お客さまからも大変ご好評いただきました。

オンオフ統合の要となるのは、企業とエージェンシーの双方における共創体制

Q.5つのCの中でも、特に肝となる要素はありますか?

神蔵:全て重要なのですが、特に挙げるとすればCo Creation(組織的なオンオフ共創体制)でしょうか。このCが一番難しく、かつとても大事だと思っています。実際にさまざまなお客さまをサポートさせていただく中で、そもそもの体制が整っているかによって、できることの範囲も、その先にある成果にも大きな差が出てくることを実感しました。

松浦:企業さま内部でのCo Creationもそうですし、株式会社 電通とセプテーニのような協業関係にある企業同士の共創体制が整っていることも大切だと考えています。協業の案件ですと、企業さまから「エージェンシー側も、うまく連携して進めてほしい」というご要望をいただくことがあるので、やはりこの部分はとても重要だなと感じますね。

甲斐:5Cモデルは当社に限らず、どこでも使ってもらえるフレームワークとして打ち出していますが、いざこれを実践しようとすると、おそらく多くの企業さまはCo Creationの部分で難しさを感じるのではないかと思うのです。

松浦:私が担当した案件の中にも、企業さま側が、社内の部署間でコミュニケーションを取り合って共創体制を整えることにハードルの高さを感じ、スムーズに進行していないケースがありました。共創体制に関する意識を変えていくには、現場レベルではなく、企業全体で変わっていく必要があるため、オンオフ統合の意義についてご理解いただけるよう、じっくりとコミュニケーションを取らせていただくようにしています。

甲斐:同時に、メディアとの連携も重要だと考えています。前編でもお話ししたとおり私のチームでは、各メディアの方々と一緒にケイパビリティ(組織的能力)を高めていくことをミッションの1つとしています。5Cモデルやオンオフ統合といったソリューションを軸に、こちらの実現したいことを伝えた上で、メディア側からもそこに対してご提案いただき、相互にコミュニケーションを取りながら進めていくことを大切にしています。

Q.最後に、オンオフ統合マーケティングにおける理想、目指す先を教えてください。

神蔵:社内や電通の方との間では、“オンオフ統合を意識しなくなること”が理想だという話も出ています。オンラインとオフラインを分けて考えた方が効率的なところもありますが、根本的には分けて考える必要はないですし、一緒に考えることで、より良い戦略を立てて実践していくことができます。ですから、それが当たり前の状態になることが一番理想的な状態です。その理想をかなえる先頭に私たちが立っていたい、と思っていますし、そんな私たちを企業さまにも信頼していただき、パートナーとして選んでいただけるように、今後も1つひとつの案件に全力で取り組んでいきます。

 


 

「5Cモデル」の実践を通してクライアント企業に向き合うことで、部署を超えて協力し合うことや、全社的な意識改革の重要性にあらためて気付かされたとのこと。このことは、オンオフ統合に限らず、新しいチャレンジを行う際には欠かせない要素と言えるかもしれません。オンオフ統合を“全社を挙げた意識改革・業務改革を実現できるチャンス”だと捉えれば、より高い意欲を持ってチャレンジできるのではないでしょうか。

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

甲斐 拓人

甲斐 拓人

Septeni Japan株式会社

1987年生まれ、東京出身。明治大学商学部卒業。セプテーニ入社以降、営業職として大型顧客のプランニング兼プロジェクトマネジメントを担当。<br>クライアント、ハウスエージェンシー、株式会社電通デジタルへの出向経験を経て、帰任後に現職。<br>実行戦略・メディアプランニングを主業務とするチームのマネジメントを中心に、株式会社 電通との協業を推進する立場として奮闘中。<br>アドテクノロジー関連ソリューションを活かしたマーケティングのデジタル化を得意とし、フルファネル、アプリ、CRM、データ活用など広く課題解決を経験。

神蔵 麻鈴

神蔵 麻鈴

Septeni Japan株式会社

2013年、武蔵野美術大学を卒業後、セプテーニに入社。入社以降、クリエイティブ本部にてデザイン・アートディレクションを担当。2017年よりブランド広告本部のクリエーティブ責任者として、ブランディングの戦略立案・ディレクションに、業種を問わず幅広く携わる。2018年よりマーケティング戦略本部にて、広告主のマーケティング課題解決視点から、クリエーティブプランニング・クリエーティブディレクションに従事。

松浦 みづき

松浦 みづき

Septeni Japan株式会社

2016年、新卒で運用コンサルタントとして入社後、約2年間コンサルティング業務に従事。2018年よりマーケティング戦略本部に異動し、運用経験に基づいた幅広いメディア知見を活かしながら、さまざまな領域のメディア戦略立案に携わる。現在は、オンオフミックスでのメディアプランニングや評価設計を行う統合プランナーとして、顧客課題解決のために認知~獲得の領域を問わないプランニングを行っている。

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