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公開日: 2023/03/13

サステナビリティに配慮したイベントとは? ガイドラインを軸に考えるこれからのイベント制作(前編)

近年、SDGs推進に向けて企業の取り組みが加速し、さまざまな領域でサステナビリティの視点が求められるようになっています。そんな中、電通ジャパンの「サステナビリティ推進オフィス」、株式会社 電通の「電通 Team SDGs」、株式会社電通ライブは、イベント領域でのサステナビリティ推進を目指し、指針となる「サステナビリティに配慮したイベントガイドライン(環境編)」を作成・公開しました。このガイドラインでは、サステナブルなイベントの基礎知識を整理するとともに、イベント企画・制作フロー、イベント制作フェーズ別に実行すべきアクションをまとめたチェックリストを掲載しています。

今回の記事では、作成に携わった電通ライブの永川裕樹氏、石橋宏平氏、鈴木瀬里菜氏に、ガイドラインを設定した目的と、その活用法についてインタビューを実施。前編では、ガイドライン作成に至った背景、公開後の反響について語ってもらいました。

イベントもモノを作る仕事。求められるサステナビリティの視点

Q.まず最初に、「サステナビリティに配慮したイベントガイドライン」を作成するに至った背景や経緯を教えてください。

永川:電通グループには「電通 Team SDGs」という、お客さまのSDGs推進をサポートするプロジェクトチームがあり、これまでにも「サステナビリティ・コミュニケーションガイド」などを発行していました。そこにイベント・スペース事業を手掛ける電通ライブも参画して、「これからはイベントも、サステナビリティの視点が欠かせない。これからのイベントにふさわしいガイドラインを作る必要があるのでは」ということが議論されるようになりました。そして準備期間を経て、イベントにおけるサステナビリティについて課題や考えを整理しながらどこに力を入れるべきか本格的な検討が進みました。

株式会社電通ライブ 永川 裕樹氏

Q.「イベントにもサステナビリティの視点が必要」とのことですが、それはクライアントさまやパートナー企業からの要請でしょうか。それとも、電通グループや電通ライブ内から声が上がったのでしょうか?

永川:もちろん両方の声があったのですが、検討初期はやはり「電通グループとして取り組むべき」という声が大きかったですね。そこからガイドラインの作成を具体的に始めていく中で、クライアントさまからの声も届くようになりました。外資系のクライアントさまを中心に、サステナビリティに対する意識が強い企業も増えてきたため、ガイドラインの作成は急務だと思いました。

Q.今回は「環境編」ですが、「ダイバーシティ編」なども発出される予定と聞いております。既に作成は進んでいるのでしょうか?

永川:「ダイバーシティ編」に関しては、2023年中の公開を目標にしています。環境編のガイドラインについても、今回発出したものが完成形とは考えていないので、今後も見直しと更新をしていく予定です。

マニュアル化するのではなく、各社がより良い方法を考えるための指針に

Q.「サステナビリティに配慮したイベントガイドライン(環境編)」の作成にあたり、大切にした考え方や、電通グループならではのノウハウが詰まったポイントはありますか?

永川:作成にあたり、やるべきことを細かく定めたマニュアルにするか、方針を示すにとどめたほうがいいのかとても迷いました。結果として、選んだのは後者。これがとても大事だと思っています。SDGsの推進には正解がありませんし、どこを切り取るかによって答えも変わります。私たちが正解を提示するのではなく、イベントの主催者・出展者・協賛社・企画者・制作者それぞれが話し合い、時にはガイドラインに書かれていないことも検討しつつ、より良い方法を考えるために使えるようなガイドラインにしています。

石橋:イベント制作にはさまざまな企業が関わるため、ガイドラインの作成にあたっては、どこか1社ではなく、全員が意思を持って話し合うためのツールになるよう意識しました。ガイドラインで方針を理解していただき、ディスカッションしながらチェックリストをもとに企画・制作を行うという使い方を想定しています。

株式会社電通ライブ 石橋 宏平氏

鈴木:私は主にチェックリストの作成を担当しました。ひと口にサステナビリティと言っても範囲は広く、フードロス削減や地産地消といった食のことから、CO2排出量削減、ペーパーレス化など多岐にわたります。何をしていいのか分からない企業も多いと考え、「こうすれば環境負荷低減につながるのではないか」という施策をさまざまな分野にわたって提示しました。もちろんリストに記載したことだけが正解ではないので、ガイドラインやチェックリストを見た方それぞれが、サステナビリティについてさらに踏み込んで考えていくきっかけになればと思います。

株式会社電通ライブ 鈴木 瀬里菜氏

ガイドラインを活用しながら、改善点をアップデート

Q.2022年12月に公開して以降、現時点でどのようなリアクションがありますか?

永川:イベント関連業界団体から参考にしたいというお話をいただいています。また、社内やグループ内では公開前から多くのリアクションがあり、こうしたガイドラインが求められていることを実感しました。ガイドラインの発表を受け、まさにこれからが活用実績を作るフェーズだと思っています。

Q.電通ライブの社内では、既にガイドラインを使い始めているのでしょうか。ガイドラインを作成したことによって、イベント制作の進め方に変化はありますか?

永川:社内では、ロールプレイングを活用しながら、本格導入を進めています。いざ現場にガイドラインを導入していくと、「もっとこうしたら使いやすい」という改善すべき点はたくさん出てくると思いますし、さまざまなケースに応用していかないと分からないこともあるでしょう。とはいえ、サステナブルなイベント制作の第一歩として今回のガイドラインを公開したので、まずは「こういう視点も持たないといけないよね」という気付きを得てもらえたらと思います。

 


 

「サステナビリティに配慮したイベントガイドライン(環境編)」は、イベントに関わる各社が持続可能性について話し合い、全ての人が楽しく参加できるサステナブルなイベント制作を行うための指針を示したサポートツールです。ただチェックリストを埋めればいいというものではなく、大事なのは関係各社がガイドラインをもとに考え、話し合うことだと分かってきました。後編では、ガイドラインの活用法、サステナブルなイベントの在り方について話を深めていきます。

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

永川 裕樹

永川 裕樹

株式会社電通ライブ

2015年大阪大学大学院卒業後、株式会社電通テック(現・株式会社電通プロモーションプラス)に入社。2018年に電通ライブに転籍。以降、スペース部門に所属し、ショールーム、店舗開発、大規模展示会、国際スポーツイベントなど幅広い案件の空間プロデュース業務に携わる。現在は設計・施工の知識を生かして、イベント領域のサステナビリティ推進活動に邁進中。一級建築士・宅地建物取引士・SDGsコンサルタント資格を保有。

石橋 宏平

石橋 宏平

株式会社電通ライブ

2017年広島大学大学院卒業後、株式会社電通テック(現・株式会社電通プロモーションプラス)に入社。2018年に電通ライブに転籍。以降、クリエイティブ部門やプロデュース部門を経験。幅広い案件のプランニング、プロデュース業務に携わる。SDGsコンサルタント資格を保有。

鈴木 瀬里菜

鈴木 瀬里菜

株式会社電通ライブ

2019年法政大学卒業後、電通ライブに入社。以降、プロデュース部門に所属し、国際スポーツイベント・音楽イベントなど、大型案件を中心にアシスタントとして携わる。現在は、サステナビリティ推進活動含め、展示会・企業のインナーイベント・映像制作など、幅広い分野の案件に参画。SDGsコンサルタント資格を保有。

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