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公開日: 2024/08/21

Instagram・X・TikTokの使い方を2000名調査。消費行動モデルから考えるSNSマーケティング戦略(後編)

SNSが浸透し、消費者の購買行動にも大きな影響を及ぼす中、SNSアカウント運用やSNSマーケティングにお悩みの企業も増えています。そんな中、株式会社 電通マクロミルインサイトテテマーチ株式会社は、SNSユーザー2,000名を対象に利用実態を共同調査しました。この調査結果をどのようにマーケティングに活用すべきか、電通マクロミルインサイトの永原花菜氏とテテマーチの川又潤子氏に聞きました。インタビュー後編では、消費者行動モデル「PERCARS(パーカーズ)」に基づくSNSの活用法、その成功事例に迫ります。

消費行動の起点は、SNSで受動的に得た情報

Q.テテマーチでは、SNS時代の消費行動モデル「PERCARS(パーカーズ)」を提唱しています。こちらはどのようなモデルでしょうか。

川又:今の時代、消費者はSNSから情報収集しています。その最初のステップが「PERCARS」の「P」=「Personalized」。つまり、ユーザーごとに最適化された情報に触れることです。

SNSでは、アルゴリズムによってさまざまな情報が流れてくるため、ユーザーはそれを受動的に受け取ります。その情報が最初の接点となり、商品やブランドと出会い(Encount)、理解を深め(Research)、情報をキャッチアップし(Communication)、購買行動(Action)に至ります。そこからファン化し(Relationship)、SNSで口コミを投稿したり友人に情報を伝えたりと共有(Share)していきます。それが、また次のPersonalizedにつながっていくという循環型の消費行動モデルを、頭文字を取って「PERCARS」という造語で表しました。

私自身、TikTokで偶然流れてきた情報を基に、特に買う予定もなかった商品を購入することがよくあります。しかも「こんなものを買ったんだよ」と友人につい伝えたくなるんです。この「つい人に言いたくなる」という体験を設計し、どれだけ共有を増やせるかが、SNSマーケティングでは大きなポイントになります。

Q.SNSユーザーの消費行動を踏まえ、どうすればSNSをマーケティングに有効活用できると思いますか?

川又:まず、ブランドが考えるターゲットとSNS上のコミュニティー、この2つの円が交わるところにいる方々に向けて商品・サービスを訴求することです。その際、「そのSNSのどんなコミュニティーに対し、どういうプロモーションをすると刺さるのか」とターゲットの解像度を上げて考えていくことが重要です。

例えば「女子高生がターゲットだからTikTokを活用しよう」で終わらず、「あるあるネタが好きな人」「このTikTokerのファン」などと一歩踏み込み、コミュニティーとの親和性を考えるとより効果的かと思います。

ターゲットの解像度を上げ、発話を生む仕掛けを投下する

Q.「PERCARS」に基づくSNSマーケティングの成功事例を教えてください。

テテマーチ株式会社 川又 潤子氏

川又:事例を挙げるとすると、カルビーさまの「じゃがりこ」マーケティング戦略です。「ありがとう」や「ごめんね」という気持ちと共に「じゃがりこ」を誰かにあげる「あげりこ」というコミュニケーションを浸透させるため、女子高生をターゲットにTikTokドラマ「あげりこ学園」を制作しました。中でも、TikTokドラマをよく観る層、「学園あるある」のような共感ネタが好きな層、人気TikTokerのファンという3つのコミュニティーに向けてドラマを展開したところうまくマッチし、どんどん発話が生まれました。

Q.「どんどん発話が生まれた」とお話されていましたが、SNSマーケティングではターゲット層の間で話題になり、共有されていくことが大事なのでしょうか。

川又:そうですね。「あげりこ学園」の事例では共感を促すことで発話を生みましたが、もう一方の手法としては、誰も気付いていない面白い仕掛けを発見した驚きをポストしてもらうことで発話を生むという手法もあります。大きく分けて、この2パターンによって発話が生まれやすいのではないかと思います。

SNSは魔法ではない。入念なユーザー調査がマーケティングの第一歩

Q.今回の調査を踏まえ、今後のSNSマーケティングで重視すべき点を教えてください。

川又:SNSの利用実態調査を通して分かったのは、どのSNSも利用用途1位が「暇つぶし」だったことです。SNSはユーザー主体のコミュニティーで、企業はそこにお邪魔させていただいている存在ですから、いきなり広告が入ると違和感を覚えます。だからこそ、普段からどういうものがバズっているのか感知し、齟齬がない発信をしないとユーザーに忌避感を抱かれてしまいます。先ほどの事例のように、ドラマにしたり、一般ユーザーの力でバズらせたりと、ワンクッション挟まないと刺さらないのではないかと思います。

SNSを「お金を掛けずにバズれる魔法のツール」だと思っている方はたくさんいますが、そうではありません。入念な調査を行い、解像度高くターゲットを分析し、企画を考える必要があります。SNSマーケティングは簡単なものではないとご認識いただくことが、重要ではないかと考えています。

永原:また、先ほどのテテマーチさんの成功事例のように、ターゲットと相性のいいSNSをマーケティングに使ったとしても、企業からなのか一般ユーザーからなのか、発信元によってターゲットの捉え方が変わってくるということもあります。都度、商材とターゲットを入念に調査して施策を練ることが大事だと思います。

株式会社 電通マクロミルインサイト 永原 花菜氏

Q.今後もSNSを活用したマーケティングはますます影響力を強めていきそうです。

永原:新しいSNSプラットフォームもどんどん生まれてくると思います。SNSごとに見える世界や情報収集の仕方も違うと思いますので、今後も生活者の動向調査をしっかり行い、クライアント企業さまの商材やターゲットに合わせてマーケティングプランを練っていきたいですね。

 


 

Z世代に続き、2010~2024年生まれを指す「α世代」が、デジタルネイティブとして注目されています。企業のマーケティング担当者は、より若い世代のSNS利用状況も把握し、ターゲットに対してどうアプローチをしていくか考える必要があるでしょう。今回の調査結果を踏まえ、今一度SNSマーケティングを見直してはいかがでしょうか。

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

川又 潤子

川又 潤子

テテマーチ株式会社

1995年生まれ。Z世代マーケ研究室「lookey」のプロジェクトリーダー。2019年にテテマーチ株式会社JOIN後、SNSプランナー、プロデューサーとしてInstagram・X(旧Twitter)を中心としたSNSマーケティングにおける戦略・企画設計を手掛ける。若年層マーケティングを得意とし、大学生と企業担当者をつなぐイベント「インスタゼミ」立ち上げ。以降、SNSアカウント運用・キャスティング・キャンペーンまで本質的な企業プロモーション施策の企画、提案を行っている。

永原 花菜

永原 花菜

株式会社 電通マクロミルインサイト

2022年株式会社 電通マクロミルインサイト入社。食品やゲーム、不動産など幅広いカテゴリーの商材に潜在する生活者インサイトを起点に、コミュニケーションプランニングやPDCAサイクルの構築支援に従事。

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