カテゴリ
テーマ
ニュース
公開日: 2026/10/28

社会や文化の中にある「ズレ」と向き合い、自分の未来を考える。 お茶の水女子大学サマープログラム「Lost in Differences」

記念写真②.jpg

2026年7月29日、電通の第2CRプランニング局と第2ビジネスプロデュース局のDEI推進チームは、お茶の水女子大学サマープログラムで、「Lost in Differences」をテーマにした特別セッションを実施。世界各国から集まった学生と、お茶の水女子大学の学生・附属高校の生徒たち約40人が参加した。

人生やキャリアの中で誰もが直面する「ズレ(ギャップ)」を切り口に、自分自身が変えられることと、社会や組織が変えるべきことについて考えるセッションやワークショップを行った。当日はゲストスピーカーとして味の素㈱でブランド戦略・コミュニケーションを担当する執行役の臼井文氏が、自身の経験を交えながら「ズレ」との向き合い方について語った。

「ズレ」は誰の問題なのかを考える

本プログラムでは、「ズレ」を単なる個人の悩みや課題として捉えるのではなく、その背景にある社会や組織の構造に目を向けることを重視した。ジェンダーや世代、価値観、経済的背景などによって生じる「ズレ」は、個人の違いから生まれることもあれば、社会の仕組みによって生み出されることもある。

モデレーターを務めた兼崎知子氏は、「ズレ」を個人の努力だけで乗り越えるものとして捉えるのではなく、自分が変えられることと、社会や組織が変えるべきことの両方を考えることが重要だと説明した。

また、日本のジェンダーギャップの現状(148カ国中118位/2025年 世界経済フォーラム調査結果※2026年9月に発表された最新順位では117位)や、日常の中に存在するさまざまな認識の違いを例に挙げながら、ズレを理解することが、多様な人々が力を発揮できる社会や組織づくりにつながると呼びかけた。

20260729_050635902_iOS.jpg
電通クリエイティブディレクターの兼崎知子氏による導入


電通社員4人の「ズレ史」から、多様な人生やキャリアのあり方を学ぶ

続くセッションでは、電通の社員4人が、それぞれの人生やキャリアの中で直面した「ズレ」を紹介した。

女子校から共学へ進学した際に初めて意識したジェンダーにまつわる違和感、経済的な背景によって生じた進学や留学の機会格差、地方大学出身者として感じた就職活動における情報格差。さらに、育児と仕事の両立や、子どもの成長によって変化する時間の使い方、色覚特性に対する周囲との認識の違い、異動による環境変化など、多様な経験が語られた。

また、仕事を通じて向き合った無意識の思い込みや社会的な固定観念についてのエピソードも紹介され、「ズレ」は個人の問題としてだけではなく、社会や組織の仕組みの中で生まれることもあるという視点が示された。

日本を含む多様な国・地域から集まった学生たちは、社員たちの経験を自分自身の将来にも重ね合わせながら聴講。背景や文化が異なっていても、キャリアや人生の転機で生じる「ズレ」には共通する部分があることに気づき、その後のワークショップでは自身の未来について活発に意見を交わした。

写真 2026-07-29 14 33 28.jpg
電通ビジネスプロデューサー 小林えり氏
写真 2026-07-29 14 38 38.jpg
電通コピーライター 舘林恵氏
写真 2026-07-29 14 47 52.jpg
電通アートディレクター 大原漢太郎氏


多様な国籍の学生たちが描く、それぞれの「未来30年史」

今回、参加者はまず、30年後の自分の姿を思い描きながら、将来のキャリアや暮らしについて考える「私の未来30年史ワークショップ」を実施。その後、社員たちの「ズレ史」を聞いた上で改めて未来図を見直し、グループごとに意見交換した。

IMG_2443 (1).jpg
IMG_2449.jpg
グループでの話し合いの様子
IMG_2465.jpg
IMG_2464.jpg
共通点、相違点を書き並べたホワイトボード

グループでの対話では、将来のキャリアや家族、働き方について活発な意見交換が行われた。起業やリーダーとして組織を率いることを目標に掲げる学生や、育児とキャリアの両立を見据える学生、世界各地を旅しながら学びや仕事の機会を広げたいと考える学生など、それぞれが多彩な未来像を描いた。

一方で、「幸せでありたい」「社会に良い影響を生み出したい」といった思いは多くの学生に共通しており、国や文化の違いを超えて、未来への普遍的な願いが共有されていることがうかがえた。 

IMG_2457 (1).jpg
ディスカッション内容の発表の様子


自己と他者の認識の「ズレ」を縮めるには、お互いに歩み寄ることが大切

最後のセッションでは、お茶の水女子大学出身で、現在は味の素㈱でブランド戦略・コミュニケーション担当執行役の臼井文氏が登壇。電通の小林氏との対談を通して、自身のキャリアの中で向き合ってきたさまざまな「ズレ」について語った。


臼井氏は、社会人になった当初、自身が思い描いていた仕事内容と実際に任された業務、さらには女性社員に対する周囲の期待との間にギャップを感じたという。その後、より責任のある仕事に挑戦する中で、自分自身が考えていた能力と実際の実力との間にも「ズレ」があることに気付いたと振り返った。

「自分の能力に対する認識と実際の能力の『ズレ』に気付いてからは、まず目の前の仕事を高い水準でやり遂げることを意識しました。その積み重ねによって、少しずつ『ズレ』は縮まっていったと思います」(臼井氏)

味の素㈱ 執行役臼井文氏


また、「縮めるべきズレと、縮めなくていいズレ」について臼井氏は、マーケティングの考え方である“Point of Difference(強み)”と“Point of Failure(改善すべき点)”を引用しながら説明。自分らしさにつながるズレは無理に埋める必要はない一方で、自分の成長を妨げる課題は向き合う価値があると語った。

さらに、自己認識と他者認識の間にあるズレについても言及。「自分自身を深く理解することと同時に、相手に理解してもらうためのコミュニケーションも大切です」と述べ、ズレを一方的に解消するのではなく、お互いに歩み寄ることの重要性を強調した。


対談の後半では、「ズレの向こう側」をテーマに、自身が仕事を通じて見つけた人生の目的について語った。当初から明確な長期ビジョンを持っていたわけではなかったが、仕事を重ねる中で、その先にいる人や社会とのつながりを意識するようになったという。さらに結婚や出産を経て、自分の仕事が次世代や社会にどのような価値をもたらすのかを考えるようになったと振り返った。

臼井氏自身も、子育てと仕事の両立に向き合う中で、思うように前進できないと感じる時期を経験したことに触れ、「人生もキャリアもリニアに上がっていくものではない」と学生たちにメッセージを送った。

「目標に向かって一直線に進むだけでなく、立ち止まるように感じる時期や予想外の出来事も含めて人生であり、目の前の挑戦を積み重ねることで新たな機会が開けました。未来は予測するものではなく、自分でつくるもの。変化やチャレンジを恐れず、自分が望む未来に向かって進んでほしいです」(臼井氏)

違いの中に、自分との重なりを見つける

プログラムの締めくくりに、お茶の水女子大学のキャロル・マイルズ氏から総括の言葉が述べられた。

キャロル氏は、さまざまな業界や立場で活躍する電通社員や臼井氏の経験に触れながら、「一見すると自分とは全く異なるキャリアを歩んでいるように見えても、その中には誰もが共感できる悩みや挑戦があった。仕事と家庭の両立など、自身の経験とも重なる課題が数多く語られていたことが印象的だった」と振り返った。

また、多様な文化的背景を持つ学生たちが、同じ人生のステージにいる仲間として30年後の未来について語り合えたことの意義にも触れた。「異なる国や背景を持つ人たちが、自分の将来や人生の意味について率直に対話する機会は決して多くない。その中で、お互いの考え方や価値観に触れられたことは、とても貴重な経験だった」と語った。

お茶の水女子大学のキャロル・マイルズ氏による総括


終了後のアンケートでは、参加した生徒から以下のような感想が上がった。
「人生もキャリアも、必ずしもまっすぐ進まなくてもいいのだと学んだ」
「30年後を考えるワークショップは、楽しくて、挑戦的で、これからを考える上での視野を広げてくれた」
「ビジネスの現場に実際に存在する『ズレ』や違いについて、それらをすべて乗り越えようとするのではなく、受け入れて共に歩みながらより良い成長につなげる機会として捉えることの大切さも学んだ」

「Lost in Differences」をテーマに行われた今回のプログラム。参加者たちは、多様な背景や価値観に触れながら、自身の人生やキャリアを見つめ直した。ズレを知ることは、相手との共通点や、自分自身の新たな可能性に気づくことでもある。そんな学びを残して、プログラムは幕を閉じた。


<前回のプログラム>
学生たちと考える、「わかりあえないこと」の先にある可能性

この記事は参考になりましたか?

この記事を共有

あわせて読みたい