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「結局のところ、ウェルビーイングって何?」組織が個人のためにできること

浅野 健一郎

浅野 健一郎

一般社団法人 社会的健康戦略研究所 代表理事

平山 知弘

平山 知弘

株式会社電通総研

渡邊 磨由子

渡邊 磨由子

株式会社電通総研

現在、ウェルビーイングという言葉が世の中に浸透していますが、WHOが定義した「身体的・精神的・社会的に満たされている状態」というのは、個人によって異なるもの。「結局、ウェルビーイングって何?」と感じている方も多いのではないでしょうか。

そこで、電通総研ではウェルビーイングの構成要素を8つの類型に分けて定義しました(※1)。各領域の有識者および電通総研担当者との対談を通じて、ウェルビーイングのあり方を全6回の連載でひもといていきます。

※1=本記事の定義は、現時点における暫定的な定義です。今後の調査・検証を通じて、内容を更新する可能性があります。

 

第1回は、「コミュニティ&ソーシャルウェルビーイング」と「リビングウェルビーイング」の領域。近年、ウェルビーイングの向上を最上位目標に掲げる自治体や企業が増えています。そこで、社会的健康戦略研究所代表理事の浅野健一郎氏と電通総研「ウェルラボ」所長の平山知弘氏をゲストに迎え、組織と個人のウェルビーイングについてお話を伺いました。聞き手は、ウェルビーイング研究、特にヘルスケア領域のビジネスに長年取り組んでいる、電通総研の渡邊磨由子氏です。

ウェルビーイングに寄り添う、電通総研の「ウェルラボ」と社会的健康戦略研究所とは

渡邊:私は普段業務でウェルビーイングについて相談を受ける機会が多いのですが、組織としての捉え方と個人の捉え方には、乖離(かいり)があることが多いと感じています。そこで、組織がどのように介入していくことが組織および個人のウェルビーイングにつながるのかを、お二人とひもといていきたいと思います。

まずは、電通総研の「ウェルラボ」について、所長を務める平山さんからご紹介いただけますか。

平山:ウェルラボは、人の感性に寄り添った製品・サービスづくりの支援と、ウェルビーイングや人の幸せ向上等に関する技術の研究開発を行う組織です。

主な案件は感性工学の領域で、自動車の乗り心地や移動空間の快適性など、人の“感じ方”が重要になる製品・サービスの企画設計を支援しています。また、楽しさやウェルビーイングの向上に関する研究開発を行っています。その一環として、ウェルラボでは今年、ISO25554(※2)のガイドライン認定を取得しました。組織および構成員がウェルビーイングであるために、実践を通して社会還元をしていきたいと考えています。

※2 ISO25554=2024年に発行された、高齢社会-地域や企業等におけるウェルビーイングを推進するためのガイドライン

渡邊:今回、社会的健康戦略研究所代表理事の浅野さんにもお越しいただきました。浅野さんは、ウェルラボが取得したISO25554の開発に携わられた方です。まずは、社会的健康戦略研究所の概要をお話しいただけますか。

浅野:当社団法人は、経産省とも連携しながら、本来の健康経営を社会実装するために、2019年に有志で立ち上げた組織になります。何が「本来の健康経営」とそうでないかを区別しているのかは、「健康」という言葉の定義にあります。私たちは、「健康」の定義をWHOが示す「健康」の定義とし、この定義による健康経営をどう社会実装していくか、さらに日本だけでなく世界にどう普及させていくかを考えて活動してきました。

当社団設立当時の健康経営のイメージは、「病気にならない疾病予防活動」のイメージが強くありました。つまり、「健康」の定義が「病気でない状態」と捉えられていたのです。そもそもWHOの「健康」の定義は、身体・精神・社会という3つのウェルビーイングから構成されていますが、ウェルビーイングという言葉自体が日本にはまだ浸透していませんでした。社会的ウェルビーイングと言っても、誰も意味をきちんと理解できていない状況だったのです。

社会的健康戦略研究所の浅野健一郎氏

渡邊:私も十数年前からウェルビーイングのプロジェクトに携わっていますが、「健康」というと医学的な意味が強いので、もう少し生活寄りの言葉がないか調査したことがあります。「ウェルビーイング」に加えて、「ウェルネス」「ヘルスケア」等で認知率を測ると、当時は「ウェルビーイング」の認知度が圧倒的に低かったです。

浅野:そうですよね。ただ、現在はウェルビーイングという言葉が社会で認知され、私たちの活動も広く知られるようになったと感じます。

世界初、ウェルビーイングを規定した国際規格“ISO25554”は、なぜ日本主導で開発できたのか

渡邊:先ほど平山さんのお話に出てきたISO25554ですが、こちらの規格について、浅野さんからご説明いただけますか。

浅野:ISO25554は、世界で初めてウェルビーイングを規定した国際標準です。ウェルビーイングを規定したと言うと、「ウェルビーイングはこうです」と決めたと思われがちですが、このISO25554は組織や国、自治体などがウェルビーイングを向上させる活動をするときに“うまくいくプロセス”を定義したものです。

ISO25554の開発に取り組んでいた当時、すでに日本で“健康経営”という言葉が認知を得て、社会的にも多くの企業に実践されていました。企業が従業員の健康状況を戦略的に捉えるため、100項目ほどにリスト化された「健康経営度調査票」があり、それに1つずつ答えてもらい、計測していたのです。

ただ、健康経営度調査票には“やること”が書いてあっても“やり方”は書いていないので、多くの企業が上手に実践できてない状況がありました。そこで、うまくいくプロセスを示し、個人のウェルビーイングと組織のウェルビーイングの向上活動を持続的に実践できるようにするために、2019年頃からこのISOの開発に取り組みました。

渡邊:日本主導で開発をされたと伺ったのですが、なぜ海外ではなく、日本が主導できたのでしょうか?

浅野:2018年に行われた世界経済フォーラムのラウンドテーブルや、OECD(経済協力開発機構)の高齢社会の会議に経産省代理として出席したのですが、各国は大学教授らが参加している状況で、まだ研究の領域で現実のフェーズには移っていなかったのです。そこで、日本がリードできるのではないかとの感触を得ました。

このISO25554は、ISO組織にある標準開発の技術委員会の中でも高齢社会に対応するための技術委員会(TC314)で開発されたものになります。これから各国が“高齢社会”での社会課題に直面しますが、日本ではすでに現実の社会問題になっていて、実務においても対処するフェーズにいました。そのため、日本が初めて国際規格決定の主導権を取れたのだと思います。先の国際会議でも各国からも日本の意見を聞きたい、学びたいという声が多く聞かれていました。

渡邊:この規格は、地域の自治体や企業などのあらゆる組織と、そこに属する個人のウェルビーイングを推進するガイドラインですが、“地域でウェルビーイングに取り組む”というのは、海外では主流なのでしょうか?

浅野:おそらく多くの自治体は、地域の課題解決に主眼を置いて取り組んでおり、その先のウェルビーイングまで行き届いていません。ただ、政府レベルになると、ウェルビーイングを政策に取り入れる動きが進んでいます。

日本は高齢化が進んでいるので、高齢者が生き生きと暮らせる社会に変えていこうとしている中で、自治体においてもウェルビーイングを重視する流れが生まれています。また、有権者に占める高齢者の割合が高まったこともあり、ウェルビーイングに注力することが、自治体としてのプレゼンス向上につながります。これは社会として非常に健全な流れです。

渡邊:海外ではまだ上流でとどまっているということですね。先ほどウェルラボでISO25554を取得したお話がありましたが、平山さんはこの規格を通じて、どのように取り組みを進化させていきたいとお考えですか。

平山:これまでのウェルラボの取り組みは、「快適・楽しさ」を重視した物づくりの支援がメインでしたが、その先にあるユーザーの長期的な幸せを考える“ユーダイモニア”の領域を考慮した仕組みを作りたいですね。組織としては個々人がワクワク生き生きと、自己実現に向けて働けるような環境を支えていくことが必要だと感じています。

どのようにサポートしていくことが組織の活性化につながり、従業員も長く勤めてくれるのか。企業の存在意義が単に持続や成長だけでなく、働く従業員が幸せであることも含められた状況を作っていきたいなと思います。

電通総研の平山知弘氏

渡邊:一方で、所長としてチームメンバーのウェルビーイングなどを考えるとき、懸念していることはありますか。

平山:やはり、ウェルビーイングに対する捉え方には個人差があります。実際、ウェルラボ内でも、「過度に干渉されるのではないか、プライベートまで踏み込まれるのではないか」という懸念を示すメンバーもいました。当然個々人の価値観は異なるものですが、その個人の違いも含めて、チームとして認識を合わせ、組織的な支援をどこまで実施するのかを決めていくことが難しいなと感じています。

浅野:組織として関与する領域には、線引きが必要ですよね。組織がコントロールをする領域を明確化しなければ、不安を抱く人ももちろんいると思います。なので、あくまで仕事の範囲であり、仕事に取り組みやすい環境づくりや、誇りを持って働けるように組織はサポートし、コミットしていくと示すことが重要です。また、個人の趣味などプライベートな領域には踏み込まないということも。

平山:その線引きを設計し、丁寧に伝えていかなければいけないですよね。ただ、この線引きの境界はこれから曖昧になっていくと思いませんか。

浅野:そうですね。組織のウェルビーイングに対する取り組みが従業員から信頼されるほど、良い意味で境界は曖昧になっていくと思います。最終的には、仲間と働く中で相談しやすく、互いに助け合って良い環境を作っていける状態が目指すべき場所ではないでしょうか。

ISO認定コンサルタントはアナリストではない

渡邊:ちなみに私事ですが、今回ウェルビーイングISOの認定コンサルタントの資格を取得しました。そこで、浅野さんにコンサルタントに期待することを伺いたいと思います。

浅野:大きく2つあります。1つ目は、ウェルビーイングを具体化する作業のサポートです。言葉の認知度は以前より高まっていますが、意味や実践方法はまだ十分に具体化できていません。何かを実行する際は、まず具体に落としていく作業が必要になるので、そこをサポートしていただけるとウェルビーイングに対する正しい認識や実践が広がると思います。

2つ目は、組織に合ったウェルビーイング向上に、伴走型でサポートすることです。個人が自らのウェルビーイングを向上させる活動と異なり、ISOの条文が世界中のあらゆる組織で使えるように、かなり要点だけを記述しているので、これを読んだだけで自組織にあった活動を完璧に実施するのは難しいと思います。病気の治療で、医師が個人に合った治療方法を提案するのと同じで、その組織の特性に応じた方法を見つけることが、持続的な活動につながるのです。

渡邊:ただ組織によって規模感も異なるので、難しいところですよね。サポートする際に注意するべきことはありますか?

浅野:アナリストにならないようにしてほしいです。何をしたいか、何を求めているかは経営者の意思決定や従業員の意見に任せ、そこで出た課題に対して、PDCAを回しながら解決できるように支援してください。

平山:なるほど。先ほどのお話にもあった通り、医師の場合は「こう生活すべき」という正解が基本的にありますが、ウェルビーイングの場合も考え方の定説はありますよね。難しいのは、考えを理解してもらうために伝えれば伝えるほど、アナリストになってしまうことです。

浅野:そこは「あるべき論」ではなく、何があると働きやすいか、何が障害になっているかなど、問いの仕方で変わると思います。ですから、ファシリテーターとしての役割に近いかもしれません。PDCAを回していく中で、難しい局面に立つこともあるかと思いますが、いずれ解決の糸口は見えてきます。

一つ懸念を挙げるなら、目指す姿に対して「難しくてできない」と途中離脱してしまうことです。“たった一歩の前進”でも、繰り返せば、いずれ大きな進歩が得られますし、少しずつ改善もされていくと思うので、まずは続けてみてください。

渡邊:それこそ、ウェルビーイング=「今よりも一歩でも良い生き方を」ということですよね。

浅野:そうなんです。一つずつ課題を解決していくことで働きやすくなり、ウェルビーイング向上につながるということです。

ウェルビーイングは「主観評価」。電通総研が考える8つの類型とは

渡邊:電通総研ではウェルビーイングを「8つの類型」として分類しました。WHOが定義する「身体」「精神」「社会」の3つの考え方を主軸にしつつ、短期的な側面や持続的な側面、主観や客観による観点を踏まえて、より細分化した類型を構築しました。

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今回の主題であるコミュニティやソーシャルに加えて、キャリア、インテレクチュアル(自己成長)、メンタル(ストレスやレジリエンスなど)、インディビジュアル(個々の感覚的側面)、ファイナンシャル(収入、資産関係)、フィジカル(身体の健康)の8領域に分類しています。人のウェルビーイングは、主にこの8領域で構成されると我々は考えていますが、それぞれの構成割合(特にウェルビーイングを強く感じる事柄)は個人によって異なり、時期やシチュエーションによって変化すると考えています。また、ウェルビーイング向上で重要なのは、自身がありたい姿へ近づけていくための「主観評価」だと定義しました。

まずは浅野さん、ご覧になっていかがでしょうか?

浅野:非常に分かりやすいです。「ウェルビーイング=幸福感」と捉えられがちですが、私は人生全体の質を考えることだと思っています。例えば、資産項目一つをとっても、人並みで十分という人もいれば、もっと高い目標を目指す人もいます。目指すレベルはそれぞれですが、人生の質を高めるために必要な要素として考えると、この8領域でおおむね整理できると思います。

一方で、この領域は人生や社会の価値観によって変化するものだと思います。要するに、今の社会や環境という前提のもと構築されているということです。例えば、AIの普及によって労働が不要になれば、キャリアや収入の項目などが変わるかもしれません。ですが、現状の社会環境の中では、この8つの類型で物事を捉えることで、ウェルビーイングをよりクリアに考えられると思いますね。

渡邊:ありがとうございます。続いて平山さんから、クライアントとの関係を踏まえてご意見を伺えますか。

平山:重要だと考えているのは、あくまで「主観」であるという点と、ウェルビーイングの構成要素には種類があり個人の置かれた状況や価値観によって変化するという点です。基本的に、お客さまの製品やサービスの開発を設計するときは、ユーザージャーニーを書いてプランニングすることが多いですが、例えばその設計において、これらのウェルビーイングの視点を踏まえて体験設計することで、より良い企画が生まれると考えています。

渡邊:平山さんの領域だと、8類型の中で五感などの「感覚的な幸福度」を重視されるのかなと思うのですが、他に結び付く領域などがあったりしますか。

平山:おっしゃる通り、シンプルな「楽しさ」や「興奮」といった領域では、五感の知覚起点のため「感覚的」なのですが、世の中の製品・サービスは高度化しており、より複雑な体験価値を感じさせようとしています。よって、「感覚的」だけでなく、あらゆる領域を複合的につなげて設計することが必要になっています。例えば、私のチームは、新しいコンセプトやイノベーションを起こしたい組織に対して、学びや実践、組織風土改革の取り組みも行っています。これらは「知的・学び」「生活環境・人間関係」の領域と結びついています。

また従来の仕事の場合、保有するリソースから最大のアウトプットを生むことが重視され、苦しくても売れたらいいというように、そこで働く人の感情は業務設計において考慮が不足していたと考えています。内発的動機付けや心理的安全性の重要性が認知されてきた通り、押し付けられた仕事を嫌々こなしている状況では、当然良いアウトプットは生まれません。

では、ストレスやプレッシャーがなければ良いかというと、そうではありませんよね。私は、楽しさや苦しさを含めた感情の揺さぶりから、良い商品が生まれていると思います。ですので、業務設計の段階から「従業員がその仕事を通じてどう感じるか」というウェルビーイングの視点を取り入れることは、良い商品を生むためにも、有効だと考えています。

浅野:「楽しくても、苦しくても」というように、苦しいことを経て楽しみや達成感が生まれたりしますよね。なんとなく「ネガティブ=悪いもの」と捉えがちですが、乗り越えた先に成長や喜びがあるので、ネガティブをなくしてはいけません。

社会課題が多い今の時代、ウェルビーイングが重要視されるワケ

電通総研の渡邊磨由子氏

渡邊:ここからは「結局ウェルビーイングとは何なのか」についてまとめていきたいと思います。浅野さんが考えるウェルビーイングの本質やキーワードについて教えてください。

浅野:まず言いたいのは、「ウェルビーイング=幸福感」ではないということです。ウェルビーイングである状態の中で、感情として湧き出てくる瞬間があるという意味ではひもづいていますが、イコールではありません。ウェルビーイングとは、自分の人生をどう生きていきたいか、何があれば満足かを考え、人生をより良くするために自分自身と向き合うことが本質的に含まれています。そこから具体に落とし、行動していくのです。これこそ「ウェルビーイング=Well-Being」という言葉がある意味だと思います。

現在、個人だけでなく社会全体としてのウェルビーイング向上がうたわれていますが、これは人口減少に伴い、人材が貴重な存在になったからです。そのうえで組織がウェルビーイングに取り組む最大のメリットは、一歩一歩の積み重ねが、10年後には多くの従業員のウェルビーイング向上につながり、未来の組織を良い方向に変えていくことができる点です。「個を超えて価値を積み重ねられること」こそが、組織として持続的に実践する最大のメリットだと考えています。

平山:今、ウェルビーイングが求められる背景として、人材不足を挙げていただきましたが、他にもウェルビーイングが求められるようになった背景はあるのでしょうか。

浅野:“モノからコトへ”と価値観が変化してきたことも、ウェルビーイングが注目される背景にあると思います。かつては、モノやお金を手に入れることが人生を豊かにすると考えられていました。しかし、それが豊かな人生ではないと考えられるようになり、思い出や体験など人生の糧になる“コト”が重視されるようになってきたのです。

平山:非常に興味深いです。ビジネス的なリソース不足に加え、人の価値観が変化したことで、今、ウェルビーイングが求められているということですね。

渡邊:確かに、ウェルビーイングも“欲を満たす”という要素もありますよね。続いて、平山さんはウェルビーイングの本質をどのようにお考えですか。

平山:先ほど、ウェルビーイングは主観が前提だとお話ししましたが、その主観の本質は「良く生きられている実感」だと考えています。人間には社会性があり、他者の感情を理解し共感する機能を持ち合わせているため、自分だけの幸せより誰かと幸せを共有して、周りと楽しく生きたいと感じることも自然ではないでしょうか。それを踏まえ、良い人生を送れていると実感すること、その質を上げていく活動までを含めて、ウェルビーイングだと考えています。

ただし、「ウェルビーイングは単に幸福感だけではない」ということは、私も改めて伝えたいですね。重要なのは、短期的な快楽主義の“へドニア”と長期的な幸福主義の“ユーダイモニア”の両方を持ち、循環させていくこと。例えば、ある瞬間はストレスがかかりますが、その分努力し、困難を乗り越えた先に楽しさや達成感を得られるというようなイメージです。時にはつらさが自分を見つめ直す機会を生み、それが学びや成長につながるのは間違いないので、その負荷を否定しないことが重要だと思います。

渡邊:では最後に、これからのウェルビーイングのあり方や展望についてお二人の考えをお聞かせください。

平山:ウェルビーイングの正しい理解を広げていきたいですね。ネガティブな出来事も循環することを踏まえて感情をマネジメントし、より良く生きていく環境を整えていくことが大切だと考えています。また、組織の中で考え方を共有して「どんな組織が良いのか」「どんなマネジメントが望ましいのか」を議論できる、そんな社会になるといいと思います。

浅野:これからの時代にこそ、ウェルビーイングが必要です。現在の世界に目を向けると、かつてのような社会的協調やグローバリズムではなく、利己的な活動が目立つようになっています。その背景にあるのは人口増加による資源不足。

さらに世界情勢が不安定になる可能性もあるため、日本がリードして、共生を軸としたウェルビーイングを考え、確固たるものにする必要があります。この活動こそ、ポストSDGsにつながるのです。その第一歩は、やはり個人のウェルビーイング、組織のウェルビーイングから広げていきたいと思います。

【関連情報】
(電通総研)ウェルビーイングISOガイドライン認定取得のお知らせ
(社会的健康戦略研究所)ウェルビーイングISOガイドライン認定について

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著者

浅野 健一郎

浅野 健一郎

一般社団法人 社会的健康戦略研究所 代表理事

国立研究開発法人産業技術総合研究所 研究戦略本部 ウェルビーイング実装研究センター 招聘研究員

新潟大学 社会連携推進機構 特命教授

藤倉電線株式会社(現株式会社フジクラ)に入社した後、光通信システムの研究や現在の健康経営の企画立案に携わり、2019年6月より株式会社フジクラ健康社会研究所の代表取締役に就任。2019年10月には、一般社団法人社会的健康戦略研究所の代表理事も務めている。フジクラ退職後は、招聘研究員や特命教授の任に加え、経済産業省 健康・医療新産業協議会 健康投資ワーキング・グループ専門委員、厚生労働省 日本健康会議 健康スコアリングの詳細設計に関するワーキング・グループ委員、厚生労働省 「知って、肝炎プロジェクト」実行委員などを兼任している。
平山 知弘

平山 知弘

株式会社電通総研

コンサルティング本部 社会共創戦略ユニット ウェルラボ 所長

「人科学×テクノロジーで世界中の人々のWell-beingに貢献」をミッションとするウェルラボの所長として、一人一人が、よりよく生きられる社会の実現に向け、人中心の製品・サービス企画開発支援およびR&Dを統括。感性工学・心理学・生理学など従来知見と先端デジタル技術を融合させ、人の特性に基づく価値創出プロセスの構想から実装まで一貫して推進。
渡邊 磨由子

渡邊 磨由子

株式会社電通総研

コンサルティング本部 未来事業開発ユニット

エグゼクティブ・プロフェッショナル(株式会社電通より出向中)

新卒で電通入社。マーケティング部門および研究開発部門を経て、ビジネス開発部門にて長年にわたり健康・医療領域担当。健康経営関連、政府系国民運動・広報事業、ヘルスケア・医療・ウェルビーイング関連新規ビジネス開発、各種クライアントコンサルティングを手掛ける。電通総研においても継続してヘルスケア・医療系ビジネス開発に携わりながら「ウェルビーイングエコシステム」の構築を目指す。専門分野は公衆衛生学、行動経済学、消費者行動学。京都大学大学院 医学研究科 健康情報学分野 研究員、金沢大学 未来知実証センター 客員研究員。日本公衆衛生学会 学会員。 ウェルビーイングISOガイドライン認定制度 認定支援コンサルタント 

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