カンヌライオンズ2015① 
Year of Convergence~集結の年

今や広告賞の枠を超えた祭典「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」が、6月21日から27日まで南仏カンヌで開かれ、94の国と地域から1万3500人が参加した。同フェスティバルに先行して行われる「ライオンズヘルス」を創設した昨年に続き、今年は新たに「ライオンズイノベーション」を会期中に併催。これら三つのフェスティバルへのエントリー作品総数は4万点以上と昨年の記録をさらに更新した。

“アドバタイジング”から“クリエイティビティ”の祭典へと名称変更して5年。主催するライオンズフェスティバルズのテリー・サベージ会長は「広告業界で起きている全ての要素がここカンヌに集結した」と自信を見せ、「コンバージェンスの年」と総括した。
現地写真=Getty Images

注目のスタートアップも登場、新設「ライオンズイノベーション」

2013年に誕生したイノベーション部門が、新設のクリエイティブデータ部門を伴い、コミュニケーションのランドスケープを塗り替えるテクノロジーとデータに特化したフェスティバルとして独立。R/GAの「Start-up Academy」、ユニリーバの「Foundry 50」では注目のスタートアップが紹介された。イノベーション部門グランプリは新住所表記システム「what3words」。英国の同名スタートアップは、世界を3㍍四方ごと57兆個に分割し、三つの単語を組み合わせた新住所を考案。全地球上を余す所なくシンプルかつ正確に特定でき、約40億人が有効な住所を持たないという社会問題も解決するという。

カンヌで熱い歓迎、フェスティバル史上初のヒト型ロボット

ヒト型ロボットがカンヌに初めて姿を現し、多くの人の心を捉えた。ソフトバンクの「Pepper」はセミナーのステージに上がり大喝采を受けた他、会場前のブースでおもてなし。愛らしい表情やしぐさは国籍、年齢、性別を問わず人々を引き付け、その魅力がユニバーサルであることを示した。日本テレビ「マツコとマツコ」でおなじみの等身大アンドロイド「マツコロイド」も、カンヌ名物レッドカーペット前とセミナーに登場。インパクトあるビジュアルと精巧な作りで、マツコ・デラックスさん本人を知らない人たちまでをもくぎ付けにした。

クリエイティブ・マーケターにハイネケン

クリエイティビティの力を信じその可能性の限界に挑戦する広告主を表彰する「クリエイティブ・マーケター・オブ・ザ・イヤー」に、ハイネケンが選出された。「クリエイティビティこそが私たちのDNA。競争優位の源であり、マーケティング戦略以上の意味を持つ」と語る同社。ブランドの核となる価値を守りつつ、クリエイティビティをいかんなく発揮できるよう組織として取り組む姿勢が評価された。代表的なキャンペーンに、「Newcastle Brown Ale」ビールの「If We Made It」など。

 

女性が輝く世界”実現へ、本格始動

クリエイティブ業界の男女不均衡を是正しようと、女性クリエーター支援プログラム「See It Be It」が昨年スタート。この動きに続く形で、洋の東西を問わず社会に根強く残る差別や偏見を打破しようという広告作品を顕彰する「グラス」部門が新設された。授賞式では、審査員長を務めた「IfWeRanTheWorld」創業者兼CEOで元BBHのシンディ・ギャロップ氏が「クリエイティビティには文化や社会を変える力がある」と語り、その力に責任を持ち世の中をより良くする仕事をしようと訴えた。初代グランプリは、P&Gインドの生理用品「ウィスパー」のキャンペーン「Touch the Pickle」。偏見に根差したタブーに挑戦し、社会通念に変革をもたらした。

 

広告の原点から新しいチャレンジまで、多様な作品を評価

少数の作品がアワードを席巻した例年とは異なり、各部門それぞれの基準で多様な作品が評価された。唯一複数部門でグランプリを受賞したのは、プロモ&アク ティベーションとデザイン両部門でのボルボ「Life Paint」。自動車のヘッドライトだけに反射するサイクリスト向けの特殊スプレーで、自転車と自動車の接触事故防止に貢献した。「2020年までに新し いボルボ車が関わる交通事故による死亡者や重傷者をゼロにする」という、同社の安全目標「VISION2020」施策の一環。伝統のフィルム部門では、ラ イカカメラの誕生100周年広告「100」がテレビカテゴリーで、米自動車保険ガイコのプレロール広告(動画再生前に強制的に視聴させる広告) 「Unskippable」がノンテレビカテゴリーでグランプリ。前者は完璧なまでの映像美によるストーリーテリングが評価され、後者は、スキップされる 前の冒頭5秒でメッセージを伝えきるもので、フィルムの常識を覆しメディアの捉え方に再発見をもたらしたことが評価された。

「ライオンズヘルス」 ヘルス&ウェルネスにエントリーが集中、
ファーマには初のグランプリ

「医療・ヘルスケア分野を対象とする「ライオンズヘルス」。2回目を迎えた今年、各国当局の規制の厳しいファーマ部門のエントリーは減少したが、ヘルス&ウェルネス部門が前年比58%増の1430件と大幅に増加、全エントリーの77%を占めた。昨年該当なしだったファーマ部門初のグランプリには、2匹の魚のユーモラスな対話を通じて中性脂肪の弊害を説いた、アストラゼネカのキャンペーン「Take It From a Fish」が選出された。電通は「FUTURE HEALTHCARE-2020」と題するセミナーを開催、ビジネス・クリエーション・センターの清水真哉プラニング・ディレクターが、2020年を視野に進むヘルスケア市場での新しいパートナーシップの在り方について事例を交えて紹介した。

バックナンバー
♯01 Year of Convergence~集結の年
♯02 電通社員スペシャルリポート~太田祐美子&日塔
♯03 CMOの本音に迫った「Wake up with The Economist」
♯04 先駆者ジム・ステンゲル氏に聞く、カンヌ参戦成功への方法論
♯05「ハイネケン」がクリエイティブ・マーケターに選ばれる理由

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ