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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.186

クリエイターを経営に参加させるべき、3つの理由

2024/03/13

前回このコラムで、八木彩さんのご著書「デザインを、経営のそばに。」について「これは共感する」「でも、これはわからん」などなど、好き勝手な感想を書いたのですが、それをきっかけに八木さんが設立した「アレンス」の青田さんを含め、久々に三人でお話をする機会を持てました。

続ろーかるぐるぐる#186_書影

たとえお互いの考えが違うとしても、A or Bの「対立」ではなく、A and Bの道を探る「対話」の重要性を実感しましたが、中でも「そもそも、なぜクリエイター(デザイナー)を経営に参加させた方が良いのか?」という話題が印象的でした。

そこには大きく3つの理由があるように思われます。

1つは、アウトプットの質を上げるため。

たとえば「デザイン」はしばしば「意図をカタチにすること」と定義されます。だからこそ、デザイナーと意図を正しく、その本質まで丁寧に共有する必要があります。経営者自らがクリエイターに向き合うことで広告、パッケージ、店頭といったありとあらゆるコミュニケーションツールのクオリティは確実に向上します。

一方で、これだけの理由では、(クリエイター側がそれを望むのはわかりますが)忙しい経営者が時間を割く根拠として十分ではありません。

そこで2つ目は、「コンセプトの品質管理」をするためが挙げられます。

たとえば「ブランドらしさ」といった意図は最終的に「コンセプト」にまとめられます。それは戦略の中核に位置すべき、極めて重要なモノのはずです。

しかしビジネスの現場を見ると、コンセプトとして書かれているものの中には、ただ威勢の良いスローガンだったり、到達したい目標でしかなかったりする内容もあり、その“品質”が管理されているとは到底言えません。そこに生まれた新しい意味を的確に言語化する能力は、経営戦略に直結する問題です。(この「コンセプトの品質管理」については次回、詳しくお話しする予定です)

しかし、この2つよりもさらに本質的な理由があります。それが、「いま・ここ」を感じるためです。

続ろーかるぐるぐる#186_図版01

上図は、広告会社に伝わるユニークな思考プロセスをモデル化した「ぐるぐる思考」です。

この図にもあるように、クリエイターは何かの解決策を考える際に、現状を正しく分析する代わりに、(そういった分析結果も含めて「いま・ここ」のすべてを)何が正しくて、何が正しくないかを価値判断することなく、いったん「感じる」ことによって、その全体を受け入れます。いわば「Don’t think, feel!」です。

なぜなら、既存の価値観に基づいた判断をしている限り、組織に飛躍的成長をもたらすイノベーションなど起こりえないからです。多くの現場で、経営を科学的に、正しく論理的に進めようとするあまり失われてしまった、この「感じる」という思考態度を取り戻す先導役として、クリエイターほど適切な人材はいません。

八木さんと青田さんとの対話を通じて、「いま・ここ」を感じた上で、戦略的に意味のあるコンセプトを開発し、質の高いアウトプットまで作りきるためにこそ、「デザインを、経営のそばに。」置く必要があるのであり、また組織にクリエイターを棲み込ませるIndwelling Creatorsが有効なのだと整理することができました。

【「Indwelling Creators」に関するお問い合わせ】
opeq78@dentsu.co.jp 担当:山田
続ろーかるぐるぐる#186_ロゴ

そういえば、最近カレッタ汐留に棲み込む、というか新しい仲間に加わったのが「TOKYO NOODLE LAB」です。実はこのお店、横浜郊外の山の中にある小学校で同じクラスだった東健太郎さんが経営に携わっているようで、在宅勤務が多い中、ようやく顔を出すことができました。

続ろーかるぐるぐる#186_写真

鶏白湯ラーメンは、旨みたっぷりのスープを泡立てて、歯切れの良い麵と合わせた逸品。トッピングのひとつひとつも丁寧で、ついつい替え玉まで注文しちゃいました。聞けば、ここをきっかけにアメリカ全土、世界制覇を志しているのだとか。

つくし野のハンバーグに続き、幼なじみの料理を楽しめること自体が、なんかとても幸せです。

どうぞ、召し上がれ!

続ろーかるぐるぐる#186_書影2

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