レジェンドたちは、どんな未来を示すのか?
2013/06/17
今年で60回目を迎える、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル。ここ数年は毎年参加している京井が、現地からナマの様子をレポートします。まったく独自の視点から、まったく無責任に、好き勝手に語ります。さて、世界の潮流はいかに?
こんにちは、京井です。いよいよカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2013が開幕。今年も現地にやって来ました。 しかし、なんで毎年こんなに遠くまで、はるばる来ちゃうんでしょうか?
以前は正直、カンヌって「クリエーターのご褒美の場」だとしか思っていませんでした。でも、そうじゃなかったからなんですね。
広告を取り巻く環境の変化で、カンヌは単に過去を表彰するアワードから、これからのアイデアを競い、ナレッジを共有する場に変貌しました。いわば、「未来を拓くアイデアの見本市」になっているんですね。ならば、この目で見ずにはいられません。どんなに遠かろうが、来ちゃうわけです。
昨年は、NIKEの「FUEL BAND」や、アメリカンエクスプレスの「Small Business Saturday」などの受賞によって、広告の世界が、単に表現するものから、実体を伴うデジタルプロダクトや、長期的な活動そのものまでへと広がりました。
そして今年は、カンヌが開催60回目を迎えるとあって、早くから盛り上がりが期待されています。
審査員の顔ぶれもハンパないです。 BBHの創設者John Hegartyや、Widen+Kennedyの創設者Dan Wiedenをはじめ、Droga5率いるDavid Drogaや、R/GAのBob Greenbergまで。よくもまあ、集まったなという、広告界のレジェンドがずらりと揃っています。(といっても、Bob Greenbergさんは、先ほどピザ屋で横にいらっしゃいましたが…)
さて、このレジェンド軍団は、広告のさらなる未来を拓くのか、はたまた逆に、伝統的な広告表現を再評価するのか? 新設されたイノベーション部門を含めて全部で16部門となった賞は、月曜日の夜から順次発表されていきます。いや、楽しみですね。
そんな中で迎えた開催初日、会場は早くも多くの人でごった返しておりました。
参加者は年々増えていますが、今年は92カ国以上から1万数千人の参加規模とのこと。エントリー数も3万5千を超える過去最高になっているとのことで、そりゃあ、混むはずです。
初日は授賞式がなく、セミナーとワークショップが中心ですが、ここでもすっかり広告の枠は取っ払われています。 今日の内容でいうと、世界の公衆衛生を解決するためにクリエーティブな便器をつくる活動が紹介されたり、元スパイスガールズのMel Bが、セレブリティとメディアの新しい関係について語ったり、2012年のロンドン五輪でパラリンピックと障がい者のイメージを変えた事例だったり、MAKERSという映画化もされた女性の市民運動を記録するデジタルプラットフォームの話だったりと、従来の広告セミナーをイメージしていると、面食らってしまうものばかり。
今後予定されるセミナーの概要にも、ソーシャル、ウェアラブル、ストーリーテリング、メイカーズ(こちらはいわゆるMAKERSムーブメントの方)など、新しい広告世界のキーとなりそうなワードがいっぱいです。
そう、もうカンヌの視点は、「モノを売るための表現」から完全に脱却しているわけです。
成熟した社会では、ブランドや企業は、より良い世の中を目指す存在にならざるを得ません。そして、ソーシャルメディアでパワーを持った人々と、個々の関係を構築し、彼らを味方に活動していくことが重要になります。
ブランドや企業の活動を、世の中をよくするために位置づけたり、人々の参加を促したりするにはアイデアが必要です。そのソリューションとしてのクリエイティビティが求められているということです。
だからそのアウトプットは、表現だけに収まらず、プロダクトやサービス、長期的な活動やカルチャーの創造にまで広がっていくわけです。
さあ、今回のカンヌは、広告にどんな未来を指し示してくれるのでしょう?
目の離せない一週間となりそうですね。
というわけで、このレポートは、現地から3回に渡ってお届けする予定です。
それでは、また次回。