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企画者は3度たくらむNo.2

私生活では誰もがたくらんでいる

2015/03/12

前回のコラムでは、企画とは、課題を解決するための手法であるとご説明しました。「そんなことはわかってるよ!」と思われた方も多いかと思いますが、この考え方は、企画の基本であり、全てでもありますので、議論のスタートラインとして書かせていただきました。

ここからが本題です。企画を立てるのではなく、企画を「たくらむ」とは一体どういうことなのでしょうか。

たくらむと聞くと一見、難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は難しいことではありません。なぜなら、普段の生活では、誰もがたくらんでいるからです。私生活でのたくらみを、仕事にまで持ち込む。そうすれば、生み出される企画はより一層強くなり、世の中を動かす力を持つようになっていきます。

例えば、誕生日パーティを想像してください。

普段は仕事や家庭の都合で会えなくなってしまった仲間たちが久々に集まり、近況を報告し合う。場所は誰かの家かもしれないし、普段から行き慣れたレストランやカフェかもしれない。食事が終わると奥からケーキが運ばれてくる。

「誕生日おめでとう!」。その演出は、サプライズの会でなくとも嬉しいものである。そして、みんなからのプレゼントが渡される。中を開いてみると、なんと、前から欲しいと思っていたカバンが顔を見せた。「あれ、どうして知ってるの?」。出席者は大成功と言わんばかりに顔を見合って、思わせぶりに「秘密」と告げる。本当は、何気なくSNSに投稿した写真を発見した参加者の一人が、プレゼントとして提案したのだ。

これは日常のちょっと特別な一コマを切り取ったものです。皆さんにも近い経験をしたことがあるのではないでしょうか。 そして、こんな小さなエピソードの中に「企画」と「たくらみ」の違いが潜んでいます。

相手の誕生日さえ知っていれば、誕生会を行うことは実に簡単です。もしかしたら、以前誰かの誕生会でウケたネタを使いまわすことで、場を盛り上げることもできるかもしれません。しかし、それでは、本人や周囲の人たちの気持ちをも動かすことはできないことはおわかりの通りです。

しかし、先ほどの例では「彼女が前から欲しいと思っていたプレゼントを渡す」というたくらみが入っています。この小さな差こそが、人の心を動かす大きな要因になっています。

無意識のうちに行っていたこの行動を細分化してみると、2つの要素によって成り立っていることがわかります。

それは「相手のことを良く知ること」と「相手の予想や期待を越えること」です。

誕生会が開かれるのであれば、おそらく彼女はケーキやプレゼントが用意されているだろうと予想しています。そこでケーキやプレゼント渡すだけでは、うれしいとは思うでしょうが、ちょっと嫌な言い方になりますが、それ以上の感情を感じることはないかもしれません。親しい友人との誕生会であっても、です。

もしも、その相手が見ず知らずの企業や製品、ブランドであったならば…ふーん、で終わってしまう可能性は否定できません。

このコラムでは、先に挙げた2点の「相手のことを良く知ること」「相手の予想や期待を越えること」を中心にしながら「たくらむ」の正体を突き止め、どのようにすれば仕事にたくらみを持ち込めるようになるのかを解説していきたいと思います。

しかし、企画の中心にあるものが、課題解決であることに変わりはありません。その課題解決のプロセスにおいて、3度たくらむと企画がもっと強くなるというのが書名『企画者は3度たくらむ』に込めた思いです。

その3点については追々ご説明するとして、まずは「たくらむ」について考えを進めていきましょう。しばらくの間、お付き合いくださいませ。

Illustrated by Tokuhiro Kanoh