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企画者は3度たくらむNo.1

企画は世の中を動かすベクトルだ

2015/03/05

はじめましての方が多いと思います。電通プロモーション・デザイン局の梅田悟司と申します。コピーライターという肩書ではありますが、言葉を書くことだけが仕事ではありません。企画を生む。新製品を創る。事業を立ち上げる。そんなプロジェクト全体の設計図を描きながら、最終的に、一言に落とし込む。それが私の仕事です。そういった意味では、クリエーターやコピーライターというよりも、コンセプター(コンセプトを立てる人)といった方が正しいかもしれません。

この度は、日本経済新聞出版社から『企画者は3度たくらむ』を出版いたしました。一言に落とし込む前の、企画をどのように生み出すか、にフォーカスした内容になっています。

『企画者は3度たくらむ』梅田悟司・著/池永忠裕・協力/日本経済新聞出版社

本書でテーマにしているのが、書名にもなっている「たくらむ」です。

メディア発達が著しく、情報が飽和している現在。企業や自分が発信した情報に気付いてもらうために必要なのは、企画を立てるのではなく、企画をたくらむ心構えだと思います。

 たくらむは、漢字で表記すると「企む」となり、企画という言葉の一部を成していることがわかります。しかし、私は企画とたくらみは、似て非なるものであると実感しています。いまの時代、世の中や人の心を動かしていくのは、ちょっと危険な印象すらある「たくらむ」なのです。

たくらむについて話を進める前に、明確にしなければならないことがあります。それは、企画とは一体何なのか? 何のために企画が必要なのか? です。

端的に言えば、企画は、課題を解決するための方法と定義できます。そして、課題は、現状とあるべき理想とのギャップです。つまり、問題が山積みになっている現状を、よりよいものへと導いていく取り組みであり、ベクトルこそが企画なのです。

私たちが行っている広告をはじめとしたコミュニケーションも、企業や生活者の課題を情報で解決する、広告ソリューションです。それと同じく、新製品開発や店舗設計、都市開発、地域の活性化、販売計画から人事制度の見直しなど……世の中には仕事の数だけ企画が存在していると言えるのではないでしょうか。

もちろん領域や案件によって、やり方や慣習、求められることは違うと思います。しかし、企画立案には「何かの課題を解決する」という共通の目的があるのです。

その意味では、課題を発見することが企画の第一歩であることは、疑いようもありません。数学で問題が出題されていないのに「答えは3だと思います!」ということがあり得ないように、全ての企画には課題が必要なのです。

そこで私が常に気を付けていることは、「問題ではなく、課題と向き合う」ことです。

仕事をしていると、知らず知らずの間に、表面化してしまった結果としての問題を解消することに躍起になってしまいがちです。しかしながら、問題を解消したところで、その本当の原因である課題が解決されていない限りは、同じような問題がまた発生するだけです。

問題を解消することはマイナスをゼロに戻す作業と言いかえることができます。その一方で、課題を解決することは、世の中をベースアップさせ、いい方向へと導いていく推進力になるでしょう。その視点を持つだけでも、これから立てる企画は、格段に強いものへと変化していくと思います。

だからこそ私は、「製品が売れない」という問題に向き合った時にも、「製品を売ればいい」と短絡的に考えないようにしています。もちろん製品を売ることは大事なのですが、売れるという現象もまた、結果でしかないからです。

企業が考える市場とは、気持ちを持った人の集合体です。製品を発売するということは、製品を市場に投入するのではなく、製品を生活者に届けることです。ですから、私自身を含めた人々の暮らしを良くするために、製品との新しい関係をどう創るかから考えるようにします。その関係を描くなかで「なぜいまその製品が必要とされていないのか」という課題は、自然と炙り出されていきます。

「ちゃんとたくらんでる?」