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日々の営みを越えたデザインをする仕事とは

frogが手掛けるデザインとイノベーションの現在・未来 №2

  • frog

2017/06/14

日々の営みを越えたデザインをする仕事とは

連載2回目となる今回は、frogのストラテジストのひとりであり、環境保全の視点から開発途上地域の問題に取り組むアグネス・パーチラ氏のコラムを紹介します。新技術の導入やインフラ整備に当たり、その地域や団体と協働し、従来の生活や自然環境への負荷を配慮した持続可能なスタイルを構築していく同社の姿勢が伝わってきます。

日々の営みだけでなく自然の生態系全体に視野を拡大した「システム思考」によって広がるデザインの領域

「なぜソーシャルベンチャーにシステム思考が必要なのか」(Why Social Ventures Need Systems Thinking)と題したハーバード・ビジネス・レビューの記事で、著者らは、ソリューションが導入されそして実際に効果を得るには、学校区や企業構造といったより大きな環境の枠組みに的確に組み込まれる必要があると論じました。

同様に、クリーンエネルギーの消費や効率的な輸送など、frogが取り組む多くの課題においても、デザインするシステムを大きな視点で考えることが求められています。ストラテジストとしてエコシステムデザインを検討するとき、私は、ひとつの製品群や社内の事業部のことだけ考えるのではなく、考案する製品やサービスが地域社会や環境にどのような影響を与えるかを考えています。

先日、国際開発デザインサミット(IDDS)に出席するためブラジルへ出張したとき、この考え方を実践する機会がありました。国際開発デザインサミットは、学際的なチームが地域社会と協力し、教育や医療などの社会問題に対する低コストのソリューションを開発する手段として、MIT(マサチューセッツ工科大学)のD-Labから生まれました。

IDDSの最も重要な理念は参加型デザイン、つまりチームが地域社会のためにソリューションをデザインするのではなく、地域社会と協力してデザインするということです。このようなソリューションは、地域社会の生活に密着しているため即座に実施でき、なおかつ長期的に持続します。

永続可能な農業システムをベースとする総合的文化デザイン「パーマカルチャー」の理念

ブラジルで出席したサミットでは、パーマカルチャーによる環境的持続性に焦点が当てられていました。パーマカルチャー、つまり効率的で自然な生態系をデザインする有機的なアプローチです。私たちは参加型デザインとパーマカルチャーを結び付け、常に自問しました。「このソリューションは地域社会の役に立つのか? このソリューションは環境の道理にかなっているか? このソリューションで再生可能なのか?」と。そして、行動のパターンと河川の流れなどのような自然のパターンの両方を調査し、検討しました。共生的な関係を理解することが重要だったからです。

写真提供:ディエゴ・ダルマソ・マーティンズ
写真提供:ディエゴ・ダルマソ・マーティンズ

私は、ボア・ヴィスタで共生関係の例を目の当たりにしました。2週間のプログラムのほとんどをこの町で過ごし、川に面したチームメンバーの家まで、緑豊かな小道を丸太から丸太へぴょんぴょん飛び移りながら通いました。熱帯雨林の中の小道は、高さ約12メートルものアサイーとカカオの木に縁取られ、私たちはぶらぶら歩きながらカカオの実を拾ったりしました。

ある日の午後、その見慣れた木が生えた小道沿いで、先頭を歩いていたチームメンバーで地元住民でもあるマックスが、しゃがんでタランチュラを自分の肩に乗せました。私は目を丸くしました。なぜマックスはこの毒グモが怖くないのでしょうか。彼は自分がこの環境で育ったため、タランチュラの行動を理解し、生命の危険があるときにどう行動するかを知っているからだと説明してくれました。こうした理解があるからこそ、アマゾンの生物と共生できるのです。私は日々、ボア・ヴィスタの人々が、無数の生物と共有する自然環境を「熱帯雨林の家」と呼び、深い敬意を示すのを目にしました。

この地域社会と協力する中で、私は人間の営みを超越したデザインをするという課題を突き付けられたのです。例えば、養殖プロジェクトのソリューションを検討する場合に、「この環境で魚は幸せだろうか?」と自問する必要がありました。確かに最初はバカみたいに思えましたが、まもなくこの問いには深い意味があると分かりました。人工池で魚が幸せであれば、魚をそこで飼うためのエネルギーとリソースが少なくて済みます。そのためには、水草や水深の変化など、自然界の魚を引き寄せる要素を持つ池を作らなければならなかったのです。

私はそれまで、まるで自分が自然界の外にいるかのように、自然界と自分の関係を考えていたことを悟りました。そこで考えを改めたのです。私は自然と協調しているのではなく、自然の一部なのだと。つまり人間は大きな自然の生態系の一要素であり、それを有機的に捉えたデザインが必要なのです。

続きはウェブマガジン「AXIS」にてご覧いただけます。

この記事は、frogが運営するデザインジャーナル「DesignMind」に掲載されたコンテンツを、電通エクスペリエンスデザイン部・岡田憲明氏の監修の下、トランスメディア・デジタルによる翻訳でお届けします。


アグネス・パーチラ
frogのストラテジスト。大きな自然生態系に魅せられ、自然の原理に触発されながら、顧客や地域社会、そして地球への尊厳を育むために、クライアントと共にソリューション策定に取り組んでいる。

アグネス・パーチラ