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経営戦略としての「人事」No.5

若い人の可能性を芽吹かせる「人事」とは?

2021/12/14

経営戦略としての「人事」

ご自身のキャリアをベースに、企業のあるべき姿、形を提言しつづける八木洋介氏。八木氏が説くテーマを、一言で表すなら「人事改革」だ。人事改革なくして、企業の持続的成長などあり得ない。「人材こそが、わが社の宝である」と多くの企業は言う。しかしながら、その宝を「持ち腐れ」させてはいないだろうか?記事化にあたっては、八木氏ウェビナー(※)を聴講し、独自のインタビューも試みた。

老いも、若きも、男も、女も、他国の人々も。さまざまな個性が、ひとつの企業に集う。そのことの意味、そのことの楽しさ、そこから生み出される未来というものを、八木氏が顧問を務めるサイコム・ブレインズの取り組みからひもといてみたい。私たち一人ひとりは、ただ単に企業という「箱」に押し込められた「道具」ではないという思いを込めて。

文責:ウェブ電通報編集部

(※)サイコム・ブレインズによる「八木洋介氏と考える、これからの会社をリードする人事に必要な学び~ポスト・パンデミックの世界で勝つ~」と題されたウェビナー。詳細は、こちら

八木洋介氏: people first 代表取締役(前LIXILグループ執行役副社長) サイコム・ブレインズ顧問 1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。96年National Steelに出向し、CEOを補佐。99年にGEに入社し、複数のビジネスで人事責任者などを歴任。2012年にLIXILグループ 執行役副社長に就任。Grohe, American Standard, Permasteelisaの取締役を歴任。17年 people firstを設立して、代表取締役。TBSホールディングス 社外取締役、GEヘルスケア・ジャパン 監査役。その他複数の会社の顧問に就任。著書に『戦略人事のビジョン』。
八木洋介氏:
people first 代表取締役(前LIXILグループ執行役副社長)
サイコム・ブレインズ顧問
1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。96年National Steelに出向し、CEOを補佐。99年にGEに入社し、複数のビジネスで人事責任者などを歴任。2012年にLIXILグループ 執行役副社長に就任。Grohe, American Standard, Permasteelisaの取締役を歴任。17年 people firstを設立して、代表取締役。TBSホールディングス 社外取締役、GEヘルスケア・ジャパン 監査役。その他複数の会社の顧問に就任。著書に『戦略人事のビジョン』。
タイトル1

「新規事業へのチャレンジ」「○○トランスフォーメーション」といったようなことを、多くの企業が掲げてはいるものの、その多くが「精神論」になってはいないだろうか?と八木氏は警鐘を鳴らす。「経営を、文化と捉えてはダメなんです。カルチャーというものは、自然発生的に生まれるものではありません。誰かが、明確な意識をもって形にする。それを、世の中に投げかける。それに共感した人たちが多ければ多いほど、文化が出来上がる。茶の湯でも、歌舞伎でも、なんでもそうだ」。そして、その際に必要なクリエイティビティというものを、八木氏はこう定義してくれた。「とっぴなこと、奇抜なことをやることが、クリエイティブということではないんです。誰もが目にしていて、誰もが普通に相対しているものの価値に改めて気づかせてくれる力。それが、クリエイティブというものの本質だと思います」
大事なことに気づかせてもらうと、人は驚くと同時に、ありがとうという気持ちになるものだ。「気づかせてくれた相手には、リスペクトの感情が芽生えませんか?そこに付加価値というものが生まれる」。八木氏の指摘によるクリエイティビティとは、一流アーティストによるものであろうが、普段、なにげなく使っている生活用品に込められたものであろうが、その本質は変わらないものだと思う。

タイトル2

「これは人事部門に限ったことではなく、現在マネジメント職に就いている人間、将来マネジメント職を志している人間、すべてに言えることですが、オーセンティックリーダーシップというものが求められているんです。分かりやすく言うなら、自分らしく、自分をリードできることが、指導者としての一丁目一番地。それができていない人間が、人をリードできるわけがないでしょう?」。八木氏による指摘は、連載の最後まで刺激的だ。
「経営は、多数決じゃない。みんなで手をつないでいきましょう、ではダメなんです。この指、止ーまれ!と言える勇気をもつこと。その提案に、どれだけの説得力を持たせられるかということが、リーダーにとって大事なことだと思います」。人事畑(ひとのはたけ)に、どんなタネをまいてみせるのか。そこにリーダーとしての資質が問われる、ということだ。

タイトル3

「繰り返しになりますが、経営や人事は、民主主義で成立するものではありません」。そう、八木氏は強調する。「そもそもこの時代に、なんのために働くのか。それは、『ただ生きる』のではなく『よく生きる』ため、なんです」。そこから逆算して物事を考えてみれば、未来への道筋は、おのずと見えてくる。「みんなで肩を寄せ合うこと」が目的なのではない。よりよく生きるために、お互い助け合うという手段を共有しているだけのことだ、と。
それには、個々人がとにかく「自立」することだ、と八木氏はインタビューを締めくくった。「自律、ではありませんよ。自立です。だって、そうでしょう?自分の力で立っていられない人間が、自分を律することなんかできませんから。もちろん、制度だの、肩書だのといった、印籠のようなものの力で他人を律しようとするなど、論外です」
マネジメントという言葉は、ある程度、社会に根付いた。でも、その本質を、私たちは本当に理解しているのだろうか。制度をつくって、人を縛り付けるのは簡単だ。だが、豊かな人材を育もうとするときに、果たして「管理」を徹底することだけが、正解への道筋なのだろうか。その答えを模索し、もがくことが、今、すべての人間に等しく課せられている宿題のように思えてならない。

サイコム・ブレインズによる講座は、こちら。

CCBP育成講座
~個のキャリアを支援し組織を強くする変革リーダーを育成する~

次世代戦略人事リーダー育成講座

■講師コメント(酒井章氏)

新型コロナによって起こったことは「キャリア・ショック」と呼ばれています。働き方をめぐるさまざまな環境変化に加え、在宅を余儀なくされたことで、多くの人がこれまでの、そしてこれからの人生や働き方を深く考えたのではないでしょうか。誰もが自分のキャリアに不安を持ついま、キャリア支援を行う人の役割がますます重要性を増しています。本講座は、このようなニーズに対応し、他の講座には見られないような多彩な講師陣からの豊富で多角的なインプットに加え、職種も世代も多様な参加者との刺激的な切磋琢磨(せっさたくま)によって、これからのキャリア支援職に必要とされるマインドとスキルをアップデートすることができます。

■講師コメント(山口周氏)

これまでの「正解」も「定石」も通用しなくなったいま、人に求められる要件も劇的に変化しました。それは、問題を自ら発見できる「意味」のある人です。一方、仕事に対するやりがいでは世界でも最低ランクに位置づけるなど、日本人の働き方は異常な状態に陥っています。そして、新型コロナという未曽有の事態の到来によって、潜在的に起こっていたこのような問題があらわになりました。いまこそ、企業における最大の資源である人財を生かすキャリア支援職の皆さんの出番ではないでしょうか。こうした問題意識に基づいて立ち上げられた本講座の理念に賛同し、講師として参加させていただきます。これからの働き方やキャリアをより良くする志を持った皆さんとディスカッションさせていただくのを楽しみにしております。


本記事の作成にあたっては、八木洋介氏に筆を入れていただくとともに、電通OB酒井章氏(クリエイティブ・ジャーニー 代表/電通アルムナイ・ネットワークマネージャー)に監修を依頼しました。

酒井章氏が代表を務めるクリエイティブ・ジャーニーのHPは、こちら

酒井章氏:
電通に入社後、コピーライター、営業(自動車担当)、マーケティングプロモーション部門を経て2004年よりシンガポール(アジア統括オフィス)に駐在。11年帰任後はグローバル部門を経て人事局、キャリア・デザイン局でキャリア開発施策を担当。19年3月定年退職後、4月に起業。

酒井章氏と電通キャリア・デザイン局(当時)大門氏によるアルムナビでの対談記事は、こちら