世界最大のマグロカンファレンス「TUNA 2022」に、電通クリエーティブ・ディレクター志村和広氏が登壇。
2022/11/10
タイのバンコクで世界最大のマグロのカンファレンスである「TUNA 2022」が10月11~13日に開催され、電通のFuture Creative Centerのクリエーティブ・ディレクターである志村和広氏がスピーカーとして登壇、自身が取り組む「TUNA SCOPE」についての講演を行った。
TUNA 2022は、国際政府組織であるInfofishが主催し、世界各国の水産大臣、国連食糧農業機関(FAO)の関係者をはじめとし、世界中の水産関係者が集う国際会議である。今年は、‘Strengthening Resilience, Adaptability and Sustainable Growth in the Global Tuna Industry(世界のマグロ産業における回復力、適応性、持続可能な成長の強化)’というテーマで開催され、世界70カ国からの参加者と、49人のスピーカーが参加した。
志村氏が講演したTUNA SCOPEとは、日本の熟練の目利きの暗黙知をAIが学習した、世界初のマグロの品質判定を行うテクノロジー。2019年に発表され、日本ではくら寿司への導入をはじめ、中国などでもその活用の場は広がっており、世界中の広告賞やデザインアワードも受賞している。
※参照URL(https://dentsu-ho.com/articles/7163)
「今回、このような機会をいただき、大変光栄です。水産業界は、われわれの産業とは全く異なる業界ですが、イノベーションを起こすために、クリエイティビティが必要であることには変わりはありません。むしろ、われわれのような業界外の人間が新しいアイデアで外から刺激を与えていくことが重要だと考えます。難しい課題になればなるほど、その解決には新規性の高いアイデアが必要になる。エージェンシーのクリエイティブが、そのような役割を担える存在であり続けたいです」と志村氏は語った。
講演では、そのほかに、取り組みの背景や、来年以降のTuna Scopeのグローバル展開を見据えた協力パートナーの賛同の呼びかけも行われ、現地では活発なディスカッションが行われた。
本取り組みでは、世界のマグロ産業にはコモディティ化が進むという課題がある中、AIによる品質判定で可視化された「質」という付加価値をもたらすことができた。AIが効率化やコスト削減に活用されるのではなく、高付加価値化に活用されたことは非常に新しい事例として驚きの声が上がった。
また、国によっては熟練の「目利き」が不在のため不公平な取引がある中、AIによる「質」への共通基準を持つことで公平な取引実現への貢献も期待される。さらには世界のマグロビジネスを「量」重視から「質」重視へと変化させ、よりサステンブルな漁法にシフトさせることで、資源問題への貢献にもつながる可能性も示唆されている。
日本の職人の目利き技術をAIに後継する挑戦からはじまったTUNA SCOPEは、いま、マグロ水産業が抱えるさまざまな社会課題を解決する存在として、世界中の注目を集めている。