SDGsに取り組み、その内容を発信していても、効果的に発信しなければ人々には伝わりにくいものです。そして、伝わらなければ取り組んでいないものと見なされてしまうのがSDGs。だからこそ、どのような方法で伝えるか、その手法が取り組みの内容と同じくらい重視されるのではないでしょうか。
株式会社広島銀行と株式会社 電通西日本、そして株式会社広島ホームテレビは、3社協業でSDGsプロジェクト『変わるけん。』を開発。3社の得意分野を掛け合わせることで地域一丸となってSDGsを推進し、各企業の取り組みを地域社会に発信しています。
前編では、広島銀行法人企画部の佐藤健司氏と電通西日本プロジェクト推進部の頼本高成氏に、広島が現状抱えている課題とポテンシャル、『変わるけん。』プロジェクト発足の背景についてお話しいただきました。続く後編では、両社が目指す『変わるけん。』プロジェクトのゴールと具体的な取り組み、これまでに出ている成果などについて、さらに詳しくご紹介します。
地域社会と連携した横展開が、経済に好影響をもたらす
株式会社広島銀行 法人企画部 佐藤健司氏佐藤:このプロジェクトに参加されるのは、そもそもSDGs的な取り組みをしている自負のある、意識が高い経営者がいる企業が多い印象です。加えて、普段はなかなかテレビCMを実施するようなチャンスの少ない中小企業の中には、CMを発信する良いチャンスと捉えていただくケースもあります。
さらには、このプロジェクトには地域のお子さまと触れ合うようなイベント活動もありますから、そういった面でも「自社の活動をさまざまな方に知ってもらう機会になって、企業としても得るものがあった」というご意見もいただいています。
頼本:イベントはこれまでに3回行いましたね。1回目は、広島銀行さん本店の1階スペースを借りて、プロジェクト参加企業のSDGsへの取り組みを紹介するパネル展を開催したんです。窓口やATM、はたまた1階スペースに入っているカフェにいらっしゃるお客さまに対して、「この企業はこんなことをやってるんだ」と知っていただけるように掲出しました。
佐藤:エントランスを入ってすぐ右側にあるモニターには、このプロジェクトで制作した各企業のSDGs CMを流し、パネル展前日には広島ホームテレビさんでイベント紹介の生中継も実施しました。これが2021年10月でしたね。
頼本:はい。2回目は2022年の3月で、大学の1区画を借りて、広島の高校生・大学生、プロジェクト参加企業の若手社員で一緒にグループワークを実施し、「かけアイ」というビジネスアイデア発想のカードゲームを用いてSDGsを学びました。
佐藤:3回目が2022年の8月で、県内の学習塾とのコラボレーションイベントでしたね。
頼本:2018年に学習指導要領が改定されたことで、SDGsは教育にも組み込まれるようになりました。学習塾としても、今後試験に出てくる可能性を考えて、机上の学習だけでない体験の機会を与えたいとご賛同いただきまして。小学校4年生から6年生までの児童を対象に、プロジェクト参加企業のSDGsの取り組みを子どもにも分かりやすいような形で説明したんです。その話を受けて子どもたちが感じたイメージを絵にして、これもまた広島銀行さんの本店1階スペースに掲出しました。子どもたちの絵を通して、今度はご家族の皆さまに「この企業はこんなことをやっているんだ」と伝わるようなサイクルを生み出したんです。このイベントは、学生やファミリー層と、地域社会との連携を深めていくという意味合いで開催しました。
佐藤:こうした横展開の動きは金融機関ではなかなかできないんです。今回、電通西日本や広島ホームテレビの皆さんと一緒にやらせていただく中で、お客さまにもこの『変わるけん。』プロジェクトに徐々に注目していただけるようになり、企業にご案内をすると、今まで以上に多くの企業にご興味を持っていただけるようになってきました。認識の広がりを実感しています。
銀行にはPRする力があまりありません。しかし電通西日本さんの企画力、実行力、行動力は、銀行員の凝り固まった考えとは違って非常に柔軟でスピーディです。私たちがCMを作るなんて言っても「銀行ができるのか?」という目で見られるだけですが、電通西日本さんというパートナーがいてくだされば、お客さまには安心していただけます。そういう意味で、今回のプロジェクトは広島の経済活性化にかなりつながっている気がします。
プロジェクトのゴールは広島から全国、そして世界への発信
株式会社 電通西日本 プロジェクト推進部 頼本高成氏頼本:電通西日本は、そもそもは広告領域の仕事が中心的であるのですが、今回、広島銀行さんとご一緒させていただいたことをきっかけに、経営課題や事業課題といった、より企業の根幹に関わる領域についてのご相談をいただくことが増えました。これもやはり、普段から地域企業と密接に関わっている広島銀行さんと一緒にプロジェクトを進行できたからこその産物ではないかと思います。広島銀行さんは常に企業の経営状況と向き合っているわけですから、そこで得られるさまざまな課題感が、私たちにとってもご支援できる領域を広げていくための大きな刺激になっています。
佐藤:確かに私たち銀行員は、普段から経営者の方々とお会いする機会が多い仕事ですので、そういった意味では「経営課題」や「経営者の悩み」を理解する能力には長けているのだと思います。逆に言えば、せっかく社長さんにお会いしているのに、そこでご期待にお応えできなければ、「担当を変えてほしい」とすぐ言われてしまうので、緊張感がある仕事でもありますね。
頼本:それに対して、私たち電通西日本を含めた電通グループは、事業開発については多くの知見・ノウハウを持っていますので、お互いの得意領域を持ち寄って一緒にやることで、地域企業にとって良い形になればと思っています。
この『変わるけん。』プロジェクトをきっかけに、多くの企業が「自分たちの事業でもっとやれることがあるよね」と考え、取り組むようになっていったという話を多く聞いています。しかも、経営者だけがやる気を出すのではなく、いかに社員を巻き込んでいくかまで考えられた取り組みなんです。これは『変わるけん。』プロジェクトの1つの重要な意義でもありますよね。
佐藤:そうですね。今はまだ100人弱程度の小規模なイベントですが、今後はこの動きを県内全域に広げて、県外からの参加者ももっと巻き込んでいきたいですね。
頼本:おっしゃる通りです。まだ構想段階ですが、宿泊施設や地域の土産物屋はもちろん、広島県内だけでなく、他県からも参加を募って地域の復興につなげる大きなイベントなども考えています。
佐藤:こうした企業の取り組みを、広島県内にとどまらず全国に発信していければと思っています。まずは広島で、次に山口、岡山、愛媛と地元4県に広げていく。
頼本:そういった広がりを通して広島が日本全国、あるいは世界から注目される地域になっていく。それがこの『変わるけん。』プロジェクトの大きなゴールですね。
『変わるけん。』プロジェクトは、広島銀行の地元企業との接点と営業力、電通西日本の事業開発力、そして広島ホームテレビが持つ人々への影響力という、3社の得意領域を掛け合わせたプロジェクト。お互いの長所を生かし、補い合いながらプロジェクトを進めることで、これまでにない規模で地域全体にSDGs推進の機運を醸成することができそうです。SDGsは持続が重要なプロジェクトであることから、今後よりプロジェクトの効果が目に見える形で広がっていくことも予想できます。
地域にはそれぞれにさまざまな課題がありますが、実はどの地域にも通じる共通課題も多くあります。またSDGsへの取り組みと発信は、全国のあらゆる地域でも期待されているものでもあります。そう考えると、今回の『変わるけん。』プロジェクトは、広島だけでなく、他の地域に応用することもできそうです。3社がタッグを組んだ『変わるけん。』プロジェクトの今後の展開に、どうぞご期待ください。
SDGsへの注目が、さらに高まる中、「SDGsに取り組んでいるけど、うまく外部に発信できていない」「地域に貢献したいけど、何から始めたらいいか分からない」といった課題・ニーズを抱えている企業もあるのではないでしょうか。ぜひ一度、私たちにご相談ください。