カテゴリ
テーマ
公開日: 2023/05/18

壊れたモノに、テクノロジーの力で付加価値を。Dentsu Lab Tokyoが「アップサイクルの可能性展UP-CYCLING POSSIBILITY」を開催

Dentsu Lab Tokyoは、"考えながら創り、創りながら考える"をモットーに、クリエーティブの研究・企画・開発が一体となったR&D組織。テクノロジーを起点とした新しい表現開発に取り組む同チームは、現在、「UP-CYCLING POSSIBILITY(アップサイクルの可能性)」と題した新プロジェクトに着手しています。

2023年4月4日(火)~4月22日(土)/5月15日(月)~6月3日(土)、資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)(神奈川・横浜)にて、「アップサイクルの可能性展UP-CYCLING POSSIBILITY」を開催中のDentsu Lab Tokyo。前期を終え、後期をスタートさせた中での手応えや企画展の狙い、プロジェクト発足の背景などを、クリエーティブ・テクノロジスト/リサーチャーのなかのかな氏に聞きました。

「金継ぎ×テクノロジー」で生まれる、新体験

Q.「UP-CYCLING POSSIBILITY」は、捨てられたモノや壊れたモノに、テクノロジーとクリエーティビティを継ぎ足すことで、新たな機能や価値をつくり出す、アップサイクルプロジェクトだと聞いています。始動したきっかけを教えていただけますか?

なかの:きっかけは2つあります。1つは、2020年に話題になったある論文です。それは、人が生み出した人工物の総重量が約1兆1000億トンに達し、地球上の生物の総重量を上まわったというショッキングな内容でした。モノが増えていることをうすうすは分かっていたものの、こういう事実を目の当たりにして、未来はどうなってしまうんだろうと考えたんです。

モノを新しく作らずに、何か新しい価値を生み出す方法はないのかと思案していたとき、プライベートで体験した金継ぎを思い出しました。金継ぎは割れたり欠けたり、ヒビが入ったりした陶磁器の破損部分を漆で接着して、金属粉で装飾して仕上げる伝統技法。これを応用して何かできないだろうかと。

もう1つは、電流の流れ方によって温冷を切り替えられるという、大阪ヒートクール株式会社さんの技術を紹介してもらったことです。皮膚に当てて温冷を切り替えて、そのときに生じる痛みを使って、皮膚を傷つけることなくかゆみを紛らわせることができるデバイスを体験したのですが、こういった温冷の切り替えやピリッとする刺激のようなものを、食器に使うことができたら新しい体験を生み出せるのではないかと感じました。こういった出会いがあり、金継ぎとテクノロジーを掛け合わせたアップサイクルのプロジェクトがスタートしました。

Dentsu Lab Tokyo なかの かな氏

誰もが「捨てる」以外の選択肢を持つきっかけに

Q.「アップサイクルの可能性展UP-CYCLING POSSIBILITY」では、プロジェクトで開発したプロダクトを展示しているとのことですが、実際にどんなものが見られるのでしょうか?

なかの:大阪ヒートクールさんと共同開発した温度変化を楽しめるパーツや、振動するパーツを金継ぎした器を準備しました。割れたかけらをスキャンして3D制作したステンレスパーツを金継ぎした皿もあります。

金継ぎしたプロダクト

なかの:もう1つ、壊れたら捨ててしまうモノの代表格である傘も、アップサイクルしました。折れてしまった骨の部分にLEDライトの棒を継いで、ただ修理しただけでなく「夜道でも明るい傘」へとアップサイクルしたんです。このアイデアは、プロジェクトチームメンバーの中山さんと話していて出てきたものだったのですが、企画中にちょうど息子が「傘が壊れた!」と言って帰ってきて。普段だったら「どうして壊してしまったの?」と言うところなんですが、プロジェクトを始めてから意識がアップサイクルに向いていて「壊れたこの傘を、どう生まれ変わらせようか?」と自然と考えている自分がいました。

今回のイベントが来場する方々が、壊れたモノを「捨てる」のではなく、「どうしようか」と考えられるマインドセットを持つきっかけになるといいなと思います。会場には、お子さんにも楽しんでいただける体験型の「アップサイクル発明ゲーム」も用意しました。「壊れたモノ」のカードとさまざまな「テクノロジー」のカードをランダムで引いて、組み合わせたらどんなものを発明できるかを考えるゲームです。

前期の展示だけで、80ほどの発明品のアイデアが誕生したんですよ。まずは難しく考えずにぜひ親子でも足を運んで、アップサイクルを身近に感じてもらいたいですね。

アップサイクル発明ゲーム。ユニークなアイデアにプロジェクトメンバーが触発されることも

<開催要項>

・開催期間:5月15日(月)~6月3日(土)

・開催時間:11:00〜18:00 定休日 日曜

・開催場所:資⽣堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)2階 S/PARK Museum FUTURE ZONE

〒220-8559 神奈川県横浜市西区高島1丁目2-11

(みなとみらい線「新高島」駅 1・2番出口すぐ)

・公式サイト: https://spark.shiseido.co.jp/

 


 

壊れたモノを捨てるのではなく、どう生まれ変わらせるのか考える「アップサイクルの可能性展UP-CYCLING POSSIBILITY」。さまざまなプロダクトに触れることは、未来について楽しみながら考えるきっかけになるでしょう。ご興味を持たれた方は、ぜひ足をお運びください。

※掲載されている情報は公開時のものです

この記事は参考になりましたか?

この記事を共有

著者

なかの かな

なかの かな

株式会社電通

国内外の技術をリサーチして培った知見を生かし、未来の生活におけるテクノロジーの活用やコミュニケーションの変容を、具体的な体験として形にすることが得意領域。クーポンつきAR蝶をスマホでつかまえる「iButterfly」(2010)、脳波を用いた猫耳型コミュニケーションツール「necomimi」(2011)、モノのキモチを見える化するIoT「mononome」(2014)、マインドフルネス瞑想トレーニングデバイス「Onigilin」(2016)、壊れたモノに機能を組み込む未来の金継ぎ「UP-CYCLING POSSIBILITY」プロジェクト(2023)など。趣味は生きものや食べものの本を読むこと、街を歩きまわること。

あわせて読みたい