新規事業創出やDX支援を強みに、コンサルティング/イノベーション/インベストメント事業を展開するイグニション・ポイント株式会社 。2014年に創設された同社は、Great Place to Work® Institute Japan(GPTWジャパン)が認定する「働きがいのある会社」ランキングで7年連続ベストカンパニーに選ばれています(※)。
企業理念に「ゆたかな人生のきっかけを」を掲げ、創業当初から従業員エンゲージメントの向上という課題に取り組んできた同社の共同創業者 兼 代表取締役社長 末宗喬文氏にインタビューを行い、その秘訣を明かしていきます。後編では、組織の成長フェーズによる人材課題、モチベーションの高い人材を育成する方法などについて語っていただきました。
組織を健全に保つため、ポジティブな新陳代謝は必要 Q.イグニション・ポイントは、7年連続でGPTWジャパンの「働きがいのある会社」に選出されています。この7年間で、従業員エンゲージメントが高まったフェーズや転機となった出来事はありますか?また、今イグニション・ポイントが掲げている、「1,000人規模への成長」には、これからどのようなことが必要だとお考えでしょうか?
末宗: 組織の成長フェーズでは、30人の壁、50人の壁、100人の壁があると言われていますよね。イグニション・ポイントには現在350人を超える社員がいますが、「300人の壁」も感じました。 社員が30人までであれば、私の目も全体に行き届きます。ですが50人を超えるとマネージャーに権限委譲しなければ事業が回りませんし、100人になるとさまざまな制度・仕組みを整えなければなりません。そして社員300人というフェーズは、こうした課題を複合的に解決する必要があります。各部署の規模によって生じる問題も違うため、その芽を早期に見つけ、それぞれ対策を打つことが大事だと思います。 例えば、ある部署のエンゲージメント指数が明らかに低くなったとか、離職率が明らかに高くなった、ということが起こったとします。その背景には、リーダーからの強すぎるプレッシャーがあった。そのような時に、仮にその部署の業績が良かったとしても、リーダーを変えることができるかどうか。そこは覚悟が必要ですが、社員にとっては会社からの強いメッセージになります。会社として実際に行動を起こすことで、社員に対しても信頼を重ねていくことが大切なのではないかと思います。 1,000人規模に成長するにあたっても、やはり部長職にあたるリーダーの育成・雇用が重要です。社内で人材を育てるのはもちろん、慎重に面談を行い、理念を共有できるリーダーを採用することも重要だと考えています。
イグニション・ポイント株式会社 末宗 喬文氏 Q.イグニション・ポイントは年々成長し、社員も増え続けています。人が増えると、良く言えば多様性が生まれますが、悪く言えばカルチャーにフィットしない方も増えていくのではないかと思います。それでも離職率を抑え、社員の皆さんと理念を共有していくための秘訣は何でしょうか。
末宗: やはり採用段階がとても重要だと考えています。弊社の企業理念、ビジョン、ビジネスモデルを理解し、共感する方に入社してもらうのが大前提。そこがフィットしなければ、お互いにとって不幸なことになると思います。 とはいえ、離職者をゼロにするのは現実的ではありませんし、成長フェーズによって会社の特性も変わります。例えば社員数100人未満、これから大きく成長するというフェーズでは、ある意味で「攻め」の姿勢の強い、いわばギラギラ感のあるメンバーが集まりやすい、というのは事実だと思います(笑)。それが300人規模になると、会社の雰囲気もだんだんと変わってきて、それまで以上に組織としての統率を取ることが必要になってきます。そうやってフェーズが変わる時には、ポジティブな意味での新陳代謝があってもいいのではないかと思います。社員個人も会社もフェーズによって求めるもの・求められるものは異なってくると思うので、その時期に応じた環境や人材をお互いに選ぶことが必要で、それに伴って生じる変化や新陳代謝はゆたかな人生においても受け入れられるものだし、さらに言えば不可欠なものと言えるのではないでしょうか。一方で、明らかに離職者が多いということになれば、これは組織に問題がある可能性が高いため、まずは自分たちの体制を見直さなければなりませんが。
従業員エンゲージメント向上には、経営層の本気の取り組みが必要 Q.根本的な質問になりますが、モチベーションの高い人材はどうすれば育つのでしょうか。
末宗: ある程度は、その人の資質によるところもあります。ですが、それに加えて、「本人がやりたいことを実現できているかどうか」がとても大切です。そのため、当社では社員1人ひとりが中長期的にやりたいこと、短期的にやりたいことを明文化してもらっています。その上で、できるだけ目標に近づくようなプロジェクトにアサインし、モチベーションを高めてもらえるようにしています。 私自身もそうでしたが、自分がやりたい仕事だとモチベーション高く取り組めますし、成果も出ますよね。「プロならどんな仕事にも全力を尽くせ」と言われてしまえばそうなのですが、どうしてもテンションが上がらない仕事があるのも事実です。モチベーションが高まるプロジェクトの方が、パフォーマンスが上がって結果も出しやすいので、会社にとってもメリットが生まれます。全ての要望に応えられるわけではありませんが、できるだけ希望するプロジェクトに携われるようにしたいと思っています。
Q.末宗さんが考える、理想的なトップ像はありますか?
末宗: まず、理念やビジョンをきちんと伝えられるトップでなければならないと考えています。あとは、情熱と覚悟を持って事業を持続できるか。やはり会社を経営するとなると、日々問題に直面します。情熱と覚悟があれば何とか乗り越えられるので、そこは重要だと思いますね。
Q.最後に、従業員エンゲージメントについて悩みを抱える企業に向けてアドバイスをお願いします。
末宗: まず、経営陣が従業員エンゲージメントの重要性を理解しなければ何も変わりません。ピープルマネジメントが売り上げに直結すると思えば力も入りますし、何よりも働きがいのある会社の方が楽しいですよね。その重要性を把握すれば、「じゃあ向上のために何をすべきか」という課題が見えてきます。定量的なモニタリング指数を把握し、社員のエンゲージメントが低い原因を見つけて対策を打つ。まずは、そこからだと思います。 5%、10%の事業成長で十分なら、あえて組織を変えなくても目標を達成できるでしょう。ですが、高い成長を掲げるのであれば、その都度起きる問題に対応するため、組織の体制や制度を大胆に変え続けるしかありません。今のままでは達成できない、でも単なる夢物語ではない目標を持つことが第一。それが、社内に変革を起こすためのモチベーションにつながると思います。
従業員エンゲージメントは、企業の成長を推進するキードライバーです。経営層がその事実を理解し、ビジョンを持って職場環境や制度の改革を行うことが社員の働きがい向上につながるのだと分かりました。人事課題を抱える企業は、今一度、掲げている理念、現状の体制を見直してみてはいかがでしょうか。
※ 2023年「働きがいのある会社」調査 中規模部門(従業員100~999名)の企業カテゴリーにおいて。