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生成AIと広げる“空想力”の可能性No.1

生成AIで子どもの空想をビジュアル化!? 「AI LOVE YOU展」で子どもたちの無限の空想力を引き出してみた

2025/06/04

AIは人間の仕事を奪ってしまう“悪い”ものなのか、未来を見せてくれる“良い”ものなのか…。近年活用の場が増えるAIをどう捉えたら良いのか、モヤモヤしている人もいるのではないでしょうか?

電通では、そうしたAIの可能性を新たなカタチで模索する試みとして、AIのプロデュース事業を手掛けるウィットコレクティブ合同会社とともに生成AIで子どもの空想をビジュアル化し、子どもの空想力を育む展示イベント「AI LOVE YOU展」を開催しました。(4月18日~20日六本木「WHEREVER」にて)

本記事では、同展で展示ステートメントやパネル文言を担当した電通第1CRプランニング局の下穂菜美が、展示会の様子とともに、展示に向けたスタッフの想いやその裏側、今後の展開等をメンバーの声と併せてお伝えします。

AI LOVE YOU展#1_キービジュアル

AIって何者なんだろう?を、誰もが分かるカタチで示してみたかった

今回の展示の開催のきっかけは、以前からお仕事をご一緒していたウィットコレクティブの久高一洋さんから、生成AIをテーマに一緒に何かやりませんか?とお話をいただいたことでした。

私は生成AI に興味はあったものの、少しとっつきにくいイメージがありました。SNSを中心に賛否両論が起きている印象もあり、「AIって人間にとって何者なんだろう?」と考えることもありました。

そこで、プロジェクトをはじめる前に、ウィットコレクティブのAIプロデュース事業の方々から生成AIについてできること・できないことを勉強する時間をいただきました。

勉強をしていく中で、一番興味深いと思った話が「生成AIは人間の考えたことをカタチにすることが得意」という点です。人間のこうしたい!という想像がたとえどんなものであっても、言葉で生成AIに伝えることで、その言葉を通じて写真、イラスト、歌、小説などを作ることができます。言葉という意味では、和歌などいつの時代に考えたものでも、生成AIはさまざまなカタチにすることができます。

そのうえで、人間の中で最も想像力が高い人=子どもたちではないかと考えました。AIをうまく使えば、彼らの空想を広げる手助けができるのではないかと思い、想像力豊かな子どもたちを主役にし、その空想を生成AIでビジュアル化する展示企画が生まれました。

私自身、子どもの想像力に対して生成AIがどんなカタチを表現してくれるのか興味がありました。家族向けのAI展示も今まで見たことがなかったため、誰にとっても分かりやすく、良い意味でAIらしくない展示を表現できるのではないかとワクワクしました。

子どもの“空想の余白”は年々減っている!?

展示内容を詰めていく中チーム内で一つ議題となったのが、「子どもの想像力を生成 AIで拡張することは、果たして良いことなのだろうか?」という疑問です。その確証を得るために、子どもの空想について研究されている三重大学教育学部の富田昌平教授にお話をお聞きすることにしました。

富田教授によると、空想は人にとって安らぎをもたらし、深く没入することで新たな創造性を育むものですが、現代のデジタル環境では、情報や答えがすぐに手に入るため、昔に比べてじっくり空想を巡らせる余地が減りつつあるそうです。そんな中、生成AIは、言葉や絵、音楽などさまざまな形で、子どもの空想世界を広げる可能性を秘めていて、空想と創造の循環を生み出し、柔軟で心強いツールになり得る、とお話をいただきました。

今回の展示を通じて「生成AIが子どもの空想力を支援する存在になりうる」こと、また、生成AIが子どもたちの多様な個性や空想力を受けとめることで、子どもたち自身が自分の「好きな部分」の発見や、自分自身をもっと好きになれる可能性があると考え、展覧会タイトルは「AI LOVE YOU展」に決めました。

子どもの空想を広げた3つのコンテンツ

1「キミの空想、AIがカタチにしてみた」
3人の子どもたちに協力してもらい、「なりたい!やりたい!」空想をもとに、その世界に入り込んだようなビジュアル作品を生成AIで作り、展示しました。

空想のビジュアル作品は1人につき7〜8点。生成AIと彼らの空想を掛け合わせていくうえで特に意識したのは、子どもたちにできあがった作品を一度見てもらい、もっとこうしたい!を聞いたところです。「一度作って終わり」ではなく、作品を通じて子どもたちの空想をより拡張することを目指しました。

AI LOVE YOU展#1_写真01
3人の子どもの“空想”作品。一度できあがったものがブラッシュアップされた様子も合わせて展示された。

作品はウィットコレクティブのcreAItive conductor※清水勝太さんチームと協力して行いました。

※creAItive conductor
複数の生成AIプラットフォームを横断してプロデュースするウィットコレクティブ独自の肩書き
 
AI LOVE YOU展#1_清水氏ソロカット
生成AI作品を手掛けた清水さん。

清水さん:
生成AIクリエイティブで特に意識したのは、子どもたちの想像力をさらにワクワクする方向へ広げることです。ヒアリングの情報やお子さんの写真を手がかりに、1人につき1500枚ほど生成しています。私自身にも子どもがいるので、一目見たときに彼らが「すごい!」と感動できるようなインパクトのあるビジュアル作りを心がけました。 

2「空想AI写真館」
会場にきてくれた子どもたちにも空想をビジュアル化する体験をしてもらおうと考え、フォトスポット形式の「空想AI写真館」を実施しました。その場で子どもが思い描いた空想を入力すると、 生成AIが画像化。生成された世界を背景にプロジェクターの前で写真を撮ることができます。

AI LOVE YOU展#1_写真02
空想AI写真館の様子。

ウィットコレクティブの久高一洋さんを中心に、生成フローやプロジェクター周りを運営してもらいました。

AI LOVE YOU展#1_久高氏ソロカット
空想AI写真館を中心となって運営した久高さん。

久高さん:
当初はワークショップ的に PC 上で生成体験をしてもらう案も出ていました。けれど、 子どもたちに、空想すること自体にワクワクしてもらいたい、より没入できる体験にしたいとの考えから、プロジェクターで投影し、空想の世界に入り込んだような写真が撮れるフォトスポットを提案しました。

実際に設置をしてみると、太陽光が差し込んでくる限られたスペースで没入空間を作るのが結構大変で(笑)。プロジェクターを変えながら何度も検証し、無事空間を作れたのですが、イベントで子ども達が歓喜する風景を見て、この方法にして正解だったと思いました。

3「生成AIのQ&Aコーナー」
「生成AIってなにがすごいの?」「生成AIを使うときに気をつけることは?」など、生成AIに関する素朴な疑問に答えるQ&A形式のコーナーをパネル形式で展示しました。こちらの内容は会場パンフレットにも掲載し、ご自宅でも子どもたちと一緒に学んでもらえるようにしました。

ご協力いただいた富田教授による「子どもの空想力と生成AIの可能性」についてのコメントも併せて展示しました。

AI LOVE YOU展#1_写真03
生成AIのQ&Aコーナーと富田教授のパネル写真。

さらに来場のお土産として、2030年の子どもが2025年のあなたに向けた「未来の子どもからのお手紙」を配布しました。手紙の内容は生成AIに考えてもらいました。運動が得意な子ども、歌が好きな子ども、恥ずかしがり屋な子どもなど 10パターンほど作り、ランダムで手に取ることができるようにしました。

展示会場の中央には、協力してもらった3人以外の子どもたちから事前に募集した空想を別途画像化し、その写真を貼り付けたモニュメントも設置しました。

AI LOVE YOU展#1_写真03
(写真上から)「未来の子どもからの手紙」「みんなの空想のおうちモニュメント」。

生成AIを使った実験的展示で伝えたかった2つのこと

AI LOVE YOU展#1_下氏ソロカット
展示ステートメント、パネル文言担当・下。

展示のステートメントとパネル文言を制作するにあたって、「生成AIが子どもの空想を手助けするパートナーになり得ること」「子ども大人問わず空想が大切であること」が読後感として伝わることを意識しました。

また、保護者と子どもが一緒に読みたくなるパネル文言を目指し、小学校6年生以下の子どもでも読めるようなやさしい文章や漢字選定を行いました。(生成AIにも、パネル文言を入力して、漢字選定を協力してもらいました!)  

AI LOVE YOU展#1_写真04
会場に飾られたキービジュアル。

会場の雰囲気と展示作品のトーン調整は、電通のアートディレクターの松下仁美さんに依頼しました。 

AI LOVE YOU展#1_松下氏ソロカット
アートディレクターを務めた松下さん。

松下さん: 
サメや海の中などいろんなモチーフがあったので、生々しくならずかわいいトーンの仕上がりを目指しました。展示会自体の印象を統一したかったので、生成AIを使ってパステル調で表現した画像を作り、その画像をターゲットにトーンを統一しました。

生成AIは過去のデータから学習するため、どうしても無意識に固定観念や偏ったイメージを含んでしまいます。子どもたち自身の言葉や感じている気持ちを丁寧に聞き取り、しっかりとビジュアルに反映させることを一番大切にしました。

生成AIが「子どもの感性を制限する存在」ではなく、「自由な想像をさらに広げる心強い味方」として役立ってくれたのではないかと思っています。

AI LOVE YOU展#1_写真05
AI LOVE YOU展#1_写真06
会場の様子

AIと子どもが関わり合うことによる、明るい未来への可能性

展示の来場者数は想定の2倍以上の結果となりました。ウェブメディアを中心に複数の媒体から取材もいただき、展示の様子が紹介されました。都内のイベント情報を発信しているインフルエンサーにも「AI LOVE YOU展」をおすすめイベントとして取り上げていただきました。

来場者は想定していた家族層が中心でした。「子どもの空想がカタチになると面白い」「生成AIは子どもたちの未来を明るくする存在かもしれない」「できたものが、思ってたのと違うところもきれいでたのしい!」など、大人から子どもまで前向きな言葉を多くいただきました。

子どもの自由な空想は10歳以上になるとなかなか難しいとの声もあり、子どもの写真と空想をセットにして作品に残せること自体が、家族にとってポジティブな体験だということも分かりました。

「AI LOVE YOU展」を通じたこれらの発見や意義は、電通が提唱している「"人間の知(=Intelligence)"と"AIの知"の掛け合わせによって、顧客企業や社会の成長に貢献していく」という独自のAI戦略「AI For Growth」にも通じるものです。

「AI LOVE YOU展」チームでは、本展示をきっかけに、引き続きプロジェクトを広げていくべく他イベントへの出展や子どもの空想を作品として残すサービスを画策中です。「一緒にやりたい!やれそう!」という方は、ぜひお声がけください。

AI LOVE YOU展#1_集合カット
【「AI LOVE YOU展」プロジェクトチーム】
電通:
下穂菜美(第1CRプランニング局)・佐藤佳文(第3CRプランニング局)・松下仁美(第3CRプランニング局)・重政直人(第2CRプランニング局)・清水崇弘(第3CRプランニング局)・北野歩実(第3CRプランニング局)
 
ウィットコレクティブ: 
久高一洋・清水勝太・高野斐依・江田一然・見黒広太
 
ウィットコレクティブ合同会社とは

「ココロが動く、世界が動き出す。」を掲げ、エンタテインメントの新たな価値をプロデュース。広告・映画・イベント等の知見をもとに、最適なチームでコンセプト設計から制作・展開までを一貫して手がけています。AIプロデュース事業では、映像のプロであり生成AIの知見が豊富な"CreAItive Conductor"が最先端技術を横断的に活用し、アウトプットを設計。生成AIによる映像・ビジュアル表現の可能性を広げ、新たなエンタメ体験を提供します。また、生成AIを駆使し広告動画やIP開発を提供するAI動画プロデュースサービス「DO/AI」も展開中。 ウェブサイト URL:https://wit-collective.jp/

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