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公開日: 2025/11/05

dentsu Japan 佐野CEOが語る、企業文化変革の現在地

事業変革の最前線を探究するカンファレンス「Xplorers(エクスプローラーズ)」が2025年8月26日(火)に開催された。第一線で活躍する変革のリーダー100名が集結し、事業変革・新事業創発・DXに関する最新の情報に触れ、参加者間で議論を深めるこのイベント。

電通グループからは電通グループ 執行役 dentsu Japan CEO 兼 デピュティ・グローバルCOO/電通 代表取締役 社長執行役員 佐野傑氏、電通総研 コンサルティング本部 シニア・エキスパート 高橋舞氏、電通 小山雅史氏が登壇した。

キーノートパネルセッションでは「VUCA時代に必須!攻めの企業カルチャー」をテーマに、3名のCEOがディスカッションを行った。登壇したのは東日本旅客鉄道 代表取締役社長 喜勢陽一氏、近畿大学情報学研究所長 特別招聘教授(KADOKAWA 取締役 代表執行役社長) 夏野剛氏、佐野氏。

企業の成長と変革を幅広い領域で支援するdentsu Japan

佐野氏は始めに、dentsu Japanが目指す姿である「真のIntegrated Growth Partner」について紹介。「私たちが目指すのは社員一人一人ひとりの成長と能力を解放し、個々の力を掛け算することで、社会、そして顧客の成長と活気を共に創り出す唯一無二の存在です。われわれは工場などの固定資産をほとんど持たない会社ですから、社員こそが資産です。社員全員が能力を発揮できる環境を整えることで、顧客やパートナー、社会のために日々変革に取り組んでいます」と語った。

グローバルに事業を展開する電通グループにおいて、全体の約4割、およそ2万3000人の社員を有するdentsu Japan。広告領域だけでなく、マーケティング領域、ビジネストランスフォーメーション領域、スポーツ&エンターテインメント領域の3領域で事業を展開。経営領域から、事業、マーケティング、組織人事、IT/デジタル領域まで、顧客のバリューチェーン全体の成長と変革を支援しており、広告領域外の売上総利益は約4割に達し、拡大を続けている。「AI領域における組織事業やマーケティング事業の変革に関しても、AIプロダクトやソリューションを幅広く提供することで、顧客の成長に貢献したいと思っております」と話した。


「AI×人」の力でクリエイティビティと変革を拡大

次の話題はメインテーマである「攻めの企業カルチャー」へ。佐野氏は、日本の経済が30年間伸び悩んでいた理由のひとつとして、企業ごとの努力のベクトルの不一致を指摘。「全員が日々努力しているのに、それぞれの頑張りのベクトルが同じ方向を向いていなかったため、成長の機会を互いに打ち消し合ってしまった。加えて、過度に国内に目が向いていたことも一因ではないでしょうか」と考えを口にした。しかし希望はある、と佐野氏は続ける。

「転職が盛んになり人材流動性が上がってきている点と、生産年齢人口が減少している中でのAIの存在はチャンスだと感じています。日本は、例えば書類ひとつを見ても正確で、様式もきれいに整えられています。しかし、その『正しく整える領域』はAIの得意領域でもあります。そうした領域はAIに任せ、人のエネルギーをイノベーションやクリエイティビティの領域に投入できれば、事業成長の足掛かりになるのではないでしょうか」(佐野氏)

AIに関しては、業務効率化だけではなくアイデア面でも十分に活用できると言及。「マーケティングやクリエイティブ、ビジネストランスフォーメーションなど、アイデアを多数出すことが求められる領域においても活用できる点は魅力的です。ただし、アイデアを厳選し、作り上げていくという工程に関しては、人間とAI、それぞれの能力を掛け算して進められるのが理想的だと考えています」と話し、生産年齢人口が減少する中では、さまざまなビジネス活動の中にAIを積極的に導入していくべきだと強調した。

幅広い領域でのAI活用が期待される一方、AIのみで社員を導き、企業カルチャーを変革させることは難しいと佐野氏は言う。

「人や、人が作ったモノに心を動かされて行動するのが人間というもの。人の心を動かす仕事は、人間が担うべき領域として残っていくと思いますし、電通グループにもそのような力を持った人材がより増えていくと考えています」(佐野氏)

dentsu Japanの求める人物像について質問が及ぶと、「これまで通り多様な人に来てほしい」と変わらぬ姿勢を見せながらも、「仲間と共に、互いの良さを引き出し合い、挑戦し、成功を目指せる人。AIにはなしえないことを実現できる人に入社していただきたい」と示唆した。

続いてディスカッションは、イノベーション人材の育成方法や研修制度の話題に。「強制ではなく本人の『やりたい』という気持ちにスポットを当て、意欲ある人をしっかりとサポートすることが重要」とし、「dentsu Japanの集合研修は、自分のやりたいことや未来、そしてdentsuの未来を全員で考え、ディスカッションし、互いに刺激し合える場としてセッティングしています」と紹介した。

今回のディスカッションの焦点となったAI。dentsu Japanでは、AIを市場分析やアイデア出し、インサイト発掘、広告コピー制作等に幅広く生かしつつ、アウトプットを人が精緻化するという形で、すでに実務のさまざまな場面に活用しているのだという。

佐野氏は「イノベーションや企業カルチャーは、これからの時代において非常に大事であり、同時に難しいテーマだと思います。AIの力とわれわれ人の力を掛け算しながら、みなさんと共に企業カルチャーの変革に取り組み、これからのビジネスシーンを良いものにしていきたいと思います」と未来への展望を語り、ディスカッションを締めくくった。

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著者

佐野 傑

佐野 傑

dentsu Japan CEO/株式会社電通 代表取締役 社長執行役員

電通 入社後、長年営業部門においてクライアント業務に従事。2021年1月電通 執行役員に就任。2022年1月より電通執行役員(ビジネスプロデュース統括)および電通グループ電通ジャパンネットワーク(現dentsu Japan)執行役員(BX/DXコンサルティング・グロースオフィサー統括)。2023年1月より国内(dentsu Japanおよび電通)の管掌領域に加え、(電通グループ グループ・エグゼクティブ・マネジメントおよびグローバル全体のビジネス・トランスフォーメーション(BX)CEO を兼務。2024年よりdentsu Japan CEO 兼電通 代表取締役 社長執行役員に就任。

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