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公開日: 2025/12/25

業界横断スマートホームプロジェクト「HAUS UPDATA」。家の中のデータをもとにAIが生活サポート

「家の中」のデータが、暮らしを変える――。センサーやIoT家電が収集した日々の生活データをAIが解析し、睡眠や家事、買い物までをパーソナライズしてサポートする。そんな、次世代のスマートホームを実現しようとしているのが「HAUS UPDATA」プロジェクトだ。

本プロジェクトは、電通、日鉄興和不動産、家電・消費財メーカーなど複数企業が参画。これまで正確な把握が難しかった生活者の生活習慣・趣向を多角的に捉え、生活者が自身のデータを活用してウェルビーイングを実現すること、企業がそのデータをもとに新しいマーケティング活動を実現することを目指している。

家の中に設置されたセンサーやIoT家電によって、部屋にいる時間、睡眠の質、洗剤の使用量など、暮らしに関する多様なデータが蓄積される。それらのデータをAIがセキュアに解析し、生活者一人一人に合ったより良い暮らしの提案をする仕組みだ。

2024年5月~10月に第1弾の実証実験を実施し、主にデータの蓄積・解析の有用性を検証。2025年6月~12月まで実施している第2弾では、AIエージェントによる提案・サポート機能を拡充・発展させている。

ウェルビーイングの実現に向けて開発されたAIエージェント

音楽や天気といった雑談機能、生活リズムのサポート、商品情報のレコメンドという3つの役割を担う。

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第2弾 実証実験の仕組み

モニターの生活行動データを自動で収集し、AIエージェントがそれぞれのモニターに合った生活習慣の改善の提案や購買レコメンドを実施。生活習慣の改善にむけた行動をするとポイントがたまり、電子マネーに変換できる。

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(左)白い壁にある丸く白い機械がセンサー。睡眠時間や心拍数と呼吸数から睡眠の質を測定。(右)モニターが設定した理想の生活習慣や趣向に合わせて、「最近、睡眠時間が短いようです」といった生活改善のコメントをAIエージェントが届ける。
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(左)重量センサーで洗剤の使用量を自動計測。(右)ドアや引き出しに設置したセンサーで開閉を計測し、帰宅時間や滞在時間をAIで解析する。
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生活習慣やその改善行動の結果、「生活スコア」と「ポイント」が表示される。(画像はサンプル)

データ活用にあたってはモニター参加者のプライバシーと「気持ちよくデータを提供できること」を最優先に設計。事前にデータ利用内容を丁寧に説明し、同居者からも同意を得た上で、個人を特定できない形でデータを収集している。さらにAIによる自動処理で、人の手を介さずデータを処理・解析している。

プロジェクトの可能性と背景にある思い

プロジェクトの企画推進を行っている電通の前川駿氏は、次のように語る。

「生活者の方々に、お金と同じくらい“自分のデータを大切に管理して、その価値を感じてもらう”ことができないかと考えたのが始まりです。そのために、自分のデータが、自分のより良い暮らしにつながると実感できる取り組みを目指しました」。既にスマートホーム事業を展開していた日鉄興和不動産が協働事業者となり、IoT家電メーカーなど複数社の技術を掛け合わせてプロジェクトが始動。「一社では実現が難しいことも、共創によって実現可能になります」と前川氏は語る。

家の中のデータは、企業にとっても新しいマーケティング機会を生む。「商品の購入後、“実際にどう使われているか”は、把握しづらいものでした。商品を使い続けてもらい、ファンになってもらうことはマーケティングにおいて非常に重要です。家の中のデータは、その課題解決に大きな可能性を持っています」(前川氏)。

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電通 データ・テクノロジーセンター 前川駿氏

実際に第1弾の実証実験では、アンケートでは見えなかった生活行動の発見があったという。プロジェクトを主導する日鉄興和不動産の畑中信二氏は語る。「あるモニター参加者は、1日のうち8時間もの時間を台所で過ごしていました。ですが、アンケートではその時間を『家族の団らん』や『食事』の時間と回答していたんです。実際の行動データを考慮すれば、台所をより広くする、座って過ごせるようにするなど、家づくりの考え方が変わってくるかもしれません」

生活者自身も気づいていない“無自覚のニーズ”を捉えたものづくりが、日鉄興和不動産が目指す「暮らしを一緒につくるパートナー」への一歩になると語った。

また、トイレ洗剤の使用量をセンサーで計測し、より良い使用方法をアプリで提案したところ、「役に立った。私に合わせてもっと厳しく言ってほしい」という声もあったという。畑中氏は、「HAUS UPDATAが生活習慣を変えるきっかけになる可能性がみえました。第2弾ではAIエージェントからの提案や、ポイント還元など、自分のデータの価値をより実感できる仕組みにしています。より暮らしに寄り添うパートナーになって、未来の暮らしをともに描いていきたいですね」と、成果への期待を語った。

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日鉄興和不動産 畑中信二氏

すでに、第3弾の実証実験準備も始まっており、ペットや介護など社会課題への展開も検討中。2026年で300世帯、2030年には1万世帯の導入を目指している。「規約や制度が整えば、2030年の1万世帯は実現不可能ではないと思います。現在のスマートホームはまだ、“便利”の域を出ません。“便利のその上の価値”を持つスマートホームを実現したいです」(畑中氏)。

前川氏も展望をこう語る。「実証実験で終わらない仕組みづくりのためには、エンドユーザーにとって、データの価値を感じていただけるかどうかが大事だと思っています。データを使って日々の暮らしに貢献していくこと。そして企業の方々、日々の暮らしを幸せにするために精魂込めて作った製品を自然に溶け込ませていくこと。エンドユーザーにもその価値を十分にご理解いただいて、そこでつながる企業のネットワークを広げたいと思います」

生活者のデータを生活者自身のために生かす「HAUS UPDATA」は、データ社会の新たな可能性を切り開こうとしている。

お問い合わせ先:電通HAUS UPDATA事務局 haus_updata@dentsu.co.jp

※写真は全て日鉄興和不動産LIVIO Life Design! SALONのマンションギャラリーにて撮影
※第2弾 実証実験の概要および、参画企業と役割はこちら
電通、日鉄興和不動産、CAPCO AGENCY、電通マクロミルインサイトが主導 業界横断スマートホームプロジェクト「HAUS UPDATA 第2弾 実証事業」開始 

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