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公開日: 2026/03/12

タカラスタンダードと取り組む伴走型支援とは?

髙月 真剛

髙月 真剛

タカラスタンダード株式会社

牧草 敬太

牧草 敬太

株式会社電通

 

両社の取り組みについて語り合うインタビュー動画

企業競争力を生み出す源泉として、技術の重要性はかつてないほど高まっている。だが実際には、多くの企業がR&D(研究開発)の成果を事業に結びつけきれていない。研究開発と事業経営、マーケティングが分断されたままでは、せっかくの技術も埋もれてしまう。

そこで電通は、企業の技術価値を事業創出へとつなげる実践的支援プログラム「R&D For Growth」をリリース。企業に新たな視点をもたらし、R&D変革へと導いている。ここでは、タカラスタンダード パネル事業部の事例をもとに、電通独自のアプローチと伴走支援の実態に迫る。

※このコンテンツは2025年8月6日に日経ビジネス電子版SPECIALに掲載されたPR記事の転載です。https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/ONB/25/dentsu0806/


なぜ今、R&D変革が必要なのか。事業成長を阻む3つの課題

失われた30年といわれる日本においても、右肩上がりに成長を続けている企業がある。「共通している大きな要因の一つとして、R&Dの構造変革を抜本的に進めている企業であるという点があります」と、電通 第2ビジネス・トランスフォーメーション局の牧草氏は指摘する。

「自社のコア技術を新領域に転用することでビジネスを拡大し、事業価値を大きく伸長させた事例は少なくありません。一方で、研究開発への投資が事業や価値の創出につながりにくい、とお悩みの企業が多いのも事実です」(牧草氏)

これには、大きく3つの壁があるという。1つ目は、自社のコアな技術が広く事業部門に伝わっていないこと。2つ目は、本来新たな活用方法を見いだせるはずの新規事業部門がアクセスできていないこと。そして3つ目は、市場に出せたとしても顧客に伝わる価値として伝わりにくいため、事業として成功につながりにくいという壁だ。

電通 第2ビジネス・トランスフォーメーション局 変革パートナー7部長 牧草敬太氏

この3つは、まさにタカラスタンダードのパネル事業部が直面していた課題でもあった。独自のホーロー技術を応用したパネル材は、優れた耐久性や清掃性といった特長を持っていたものの、その価値を適切な部署や市場に伝えきれず、収益化に苦戦していたという。

電通は2024年3月から、パネル事業部のグロースを支援。技術価値に基づく戦略策定から実践までの徹底した伴走とパネル事業部の努力により、わずか1年で黒字化を達成した。そのポイントはどこにあったのか——。後に「R&D For Growth」として体系化された一気通貫のアプローチを、探ってみたい。

事業創造戦略の骨子となるホーローの技術価値を再定義

タカラスタンダードは、高いホーロー技術を武器に、水まわり製品を製造販売する住宅設備機器メーカーだ。1967年には世界初のホーローキッチンを発売。現在も、国内キッチンシェアトップを誇る。そうした中にあって、水まわり以外の製品を担当しているのが、パネル事業部である。

「当社は、1985年にホーロー外装材『エマウォール』を開発。これを販売する部署として、パネル事業部が設立されました。事業部といっても、その実態は営業部隊。既存の販路や取引先を相手に、製品特性に応じた提案を続けてきた販売のプロではあるものの、長期的な事業成長を描く戦略戦術に乏しく、長らく赤字が続いていました」

タカラスタンダード株式会社 ビジネスディベロップメント本部長 兼 パネル事業部長 執行役員 髙月 真剛氏

こう話すのは、タカラスタンダード執行役員の髙月氏。2023年、パネル事業部の部長に就任した当初から、部のやり方に課題を感じていたという。そのようなとき、広告案件で付き合いのあった電通の営業担当から紹介されたのが、BX(ビジネス・トランスフォーメーション)領域を担当していた牧草氏だった。

「電通さんが、広告以外に新規事業のコンサルティングもされていることを、そのとき初めて知りました。実際にお会いしてわれわれの現状を相談するうちに、彼らなら力になってくれそうだと実感し、部内会議にも参加していただくことになりました」(髙月氏)

部内会議では、パネル事業部が抱える課題や目指す姿、その礎であるホーロー技術についてのきめ細かいヒアリングが行われた。それをもとに、電通のBXチームから提案された課題解決のためのプロジェクトは、髙月氏の期待に応えるものだった。

「提案には、われわれには持ち得ない視点が盛り込まれ、絵に描いた戦略で終わらない手応えを感じました。これは絶対にやるべきだと考え、すぐ社長に上申。トップの快諾を得てほどなく、電通さんを正式なパートナーに迎えて取り組みを開始しました」(髙月氏)

変革プロジェクトがスタートしたのは、2024年3月。牧草氏率いる電通BXチームは、ホーロー技術の知識をより深めるため、まず知多工場を訪れた。技術価値の源泉は、製造現場にこそあると考えたからだ。

「『ホーロー=焼き物』というイメージを持っていましたが、実際に現場を見てみると、釉薬(ゆうやく)の調合から施釉(せゆう)、焼成、加工まで、すべての工程にタカラスタンダードさんの職人的独自性があることが分かりました。それは大きな強みであると同時に、技術の属人化という課題も孕んでいます。その技術価値を明確に言語化することが、事業伸長につながると直感しました」(牧草氏)

タカラスタンダードのホーローは、「汚れがつきにくく、キレイが長持ち」「色あせせず傷つきにくい」「意匠性に優れている」などの特長を併せ持つ。これは、ホーローが汚れや衝撃をはじき返し、光の反射を適切に制御するという性質に由来する。電通のBXチームはこの特性を、「多様なマテリアルの反射・反発を永続的にコントロールする技術」と再定義。多面的な特長を一つの軸に束ねることで、ホーローの技術価値に新たな光を当てた。
 

タカラスタンダード独自の技術価値を再定義し、一枚のシートで表現。電通ならではのコミュニケーション力で共通認識を高め、戦略につなげていく。


さらに、再定義・再発見した価値を視覚化し、一枚絵として全員で共有。この技術コンセプトの明快な可視化により、クライアントの経営層や技術部門からも「なるほど」と納得される共通認識が生まれ、以後の戦略策定の強固な基盤となった。

「ホーローの価値は私たちがいちばんよく分かっていると思っていましたが、第三者の視点から俯瞰(ふかん)して見ると、実はまだ知らない価値があることに気づかされました。電通さんの理解の速さと深さには、本当に驚きましたね。ホーローの技術を鋭く観察し、われわれにも見えていなかった価値を分かりやすく言語化してくれたおかげで、戦略の方向性も明らかになりました」(髙月氏)

営業のテコ入れで黒字化に成功。R&D変革により、さらなる事業成長へ

価値の再定義から生まれた、パネル事業部の次なる戦略。それは、新たな市場への進出だ。

「主に日常の水まわりで活用されるホーローですが、『反射反発コントロール』の特性を生かせば、より過酷な環境でも活躍できるのではないかと考えました。例えば、温泉・温浴施設や海中、あるいは塩害や紫外線の強い場所など、展開先は多彩に広がります」(牧草氏)

ホーローパネルの新たな需要喚起に向け、現在は市場調査を進めるとともに、R&D部門との商品開発にも取り組んでいるという。

一方で、パネル事業部の赤字を脱却すべく、足元の改革にも注力する。収益を上げるためには技術や市場のみならず、営業プロセスや原価構造の理解も欠かせない。牧草氏のチームは、社内でバラバラに管理されていた営業月報や原価計算書などをもとに、改善策を抽出。技術価値に立脚した事業戦略へとつなげていった。

「戦略に基づき、まずは地下鉄をはじめとする公共交通と文教施設に営業のターゲットを絞ることにしました。ここからホーローの認知を高め、次の展開につなげていく考えです。これまでバラバラに動いていた事業部が一丸となって取り組んだ結果、24年度は黒字決算を迎えることができました。これも、電通さんが戦略面を担ってくれたおかげで、われわれが営業に集中できた成果だと考えています」と髙月氏は笑顔を見せる。


初年から大成功を収めたプロジェクトであるが、これは変革の始まりに過ぎない。パネル事業部は、25年1月に新設されたビジネスディベロップメント本部の直下組織として、新領域開拓事業を担うこととなった。つまり、ここからがR&D変革の本番となるわけだ。

タカラスタンダードでは、26年にホーローのコア技術の研究開発拠点となる「R&Dセンター(仮称)」を大阪・八尾市に開設、28年には福岡工場に新棟を増設し、ホーローの生産力を約1.5倍に引き上げる予定だという。

「戦略と実現に向けたロードマップが明確になったことで、やるべきことは見えてきました。公共施設で高い評価をいただいたホーローパネルを、今後は民間や新たな市場にも広げていく計画です」と、髙月氏は展望を語る。

その道のりを、電通はパートナーとして伴走していく。単なる戦略策定にとどまらず、事業創出や市場展開、マーケティングまでを一気通貫で支援することが、チームの使命だからだ。研究開発部門をはじめ、プロジェクトに関わる両社のメンバーも着実に増え、変革のこれからがますます期待されている。

一気通貫の伴走支援でR&Dを事業成果につなげていく

技術の価値を再定義し、それを事業へと昇華させる──。タカラスタンダードの伴走支援で実施した、この一連のプロセスを体系化したのが、電通の「R&D For Growth」だ。

「R&D For Growth」は、企業の技術資産を起点に、事業創出とマーケティングまでを視野に入れた、電通独自の伴走型プログラムだ。その特長は、戦略策定から事業化を見据えたマーケティングまでを一気通貫でやりきる実践的アプローチにある。

「R&D活動を研究開発で終わらせず、新規ビジネスや市場戦略へとつなげる“R&B(ビジネス)”へと進化させることを狙いとしています」と牧草氏は説明する。

プログラムは主に3つのアプローチで構成されている。1つ目は、企業の技術を深く掘り下げ、その本質的な価値を再定義・可視化する「技術価値のリ・フレーミング」。2つ目は、技術価値を起点に、社会や生活者の視点から事業化の可能性を分析・構想化する「事業コンセプト・モデリング」。3つ目は、構想した事業を成功に導く「マーケティング・デザイン」だ。これらを一気通貫で伴走することにより、ローンチ後の事業拡大や市場定着までを支援するという。

「R&D For Growth」の全体像。コアコンピタンスを可視化し、事業として価値化し、事業推進を活性化する。3つのアプローチによって、新規ビジネスや市場戦略へとつなげる


それを可能にしているのが、電通ならではの3つの強みだ。すなわち、技術価値を理解し、独自の視点で表現する「クリエイティブなコンセプト構築」。膨大な生活者研究データをベースに技術の機会市場を抽出、実証につなげる「顧客インサイトと独自検証スキーム」。広告業務での知見を生かした、実行フェーズでの「マーケティングコミュニケーション」である。

「さらに、クライアント企業内でハブとしての役割を果たせることも、われわれの強みです。R&D部門と事業部門が分断されている企業も多いと聞きます。電通が橋渡し役となることで、部門横断の変革をドライブできると考えています」(牧草氏)


「R&D For Growth」に、決まった“型”はない。クライアントの持つ技術価値や事業課題、成長戦略に応じて、一社ごとにオーダーメードで提供されるという。そこもまた、フレームワーク型のコンサルティングにはない魅力といえるだろう。

「日本企業が成長していくためには、今こそ真のR&D変革が必要です。私たちはこれからも多くのクライアントのグロースに伴走し、技術大国ニッポンを元気にしていくことを目指しています」(牧草氏)

電通の「R&D For Growth」は、技術に着目することで企業の新たな価値を発掘するプログラムだ。その先に続く確かな事業成長に向けて、変革の一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

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著者

髙月 真剛

髙月 真剛

タカラスタンダード株式会社

ビジネスディベロップメント本部長 兼 パネル事業部長 執行役員

牧草 敬太

牧草 敬太

株式会社電通

第2ビジネス・トランスフォーメーション局

変革パートナー6部長、BXプロデューサー

マーケティング部門、営業部門を経て、現在ビジネストランスフォーメーション領域のプロデュース業務に従事。事業計画、コーポレートブランディング、オンオフ統合のメディアプランニング、商品開発、クリエーティブ、プロモーション等、クライアント企業の多岐にわたる課題にワンストップで対応。「R&D For Growth」を担当。

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