デバイスやプラットフォームの多様化が進む中で、オーディエンスの行動は細分化・分断されつつある。こうした環境において、マーケターは「複雑化するチャネルを横断しながら、いかに一貫した成果を生み出すか」という課題に直面している。
Advertising Week Asia 2025( 2025年12月2日(火)~12月4日(木)の3日間、都内にて開催)では、Oguryと電通が共同で登壇。その解決策の一つとして「ペルソナマーケティング」をテーマに議論を行い、ペルソナがマーケティングにどのような変化をもたらすのかを、3つのセッションを通じてひもといた。
セッション1:ペルソナを活用したマーケティングとは?
セッション1では「ペルソナを活用したマーケティングとは?」をテーマに、Ogury Japanの河本幸子氏を進行役として、バカルディジャパンでマーケティングマネージャーを務める金城従氏、Ogury Japanのブランディングディレクター林信輔氏が登壇した。
冒頭、ペルソナの捉え方を問われた金城氏は「ペルソナを作ることで、商品をどんな人に飲んでもらいたいかという仮説を持てるようになり、現実とのギャップが見えてくる。結果として次の施策につながり、最終的にはブランドが選ばれる商品になる」と語った。
林氏は「ペルソナの最大の特徴は、一人であること」と述べ、「一人にまで落とし込むことで、マーケティングとクリエイティブをつなぐ存在になり、顧客の心の動きを具体的に想像できる」と説明。河本氏も、「一人の人間として立体的に捉えることが重要」と補足した。
金城氏はペルソナの重要性を実感した背景として、スコッチウイスキー「デュワーズ」の事例を紹介した。「居酒屋を中心に展開していた時代は、メニューに載っているかどうかが重要だったが、ハイボールの普及やコロナ禍を経て、バーやプレミアムウイスキーへ展開が広がる中で、誰が、どんな気持ちでその一杯を選ぶのかを考える必要が出てきた」(金城氏)
バーでは、慣れた人がブランド指定で注文し、連れられてきた人が「同じもので」と頼む構図が生まれる。金城氏は「連れられてきた人の気持ちを考えることが、ペルソナを深掘りする出発点」と語り、林氏も「バーでの注文は、自分をどう見せたいかが表に出る瞬間。そこにこそペルソナが表れる」と応じた。
デュワーズのペルソナは、価値観や酒との向き合い方まで掘り下げて設定されている。金城氏は「他の人の目を意識せず、好きだから選ぶ。その感覚が重要」と述べ、河本氏も「行動の背景にある価値観まで描けているから、一貫したコミュニケーションが可能になる」と評価した。
最後に、ペルソナ作りで意識している点として、金城氏は「必ず現場に行き、一次情報に触れること」「複数人で議論してまとめること」を挙げた。林氏は「完成したペルソナは、写真ではなく、映像のように動いて見える状態でなければ使えない」と述べた。
河本氏はまとめとして、「数値や理論だけでなく、なぜ商品を選んでくれたのかという理由や、顧客の価値観を理解することが、マーケティングの質を高める」と語り、セッションを終えた。
セッション2:dentsu persona hubを活用した事例
セッション2では「dentsu persona hubを活用した事例紹介」をテーマに、Ogury Japanの三上智也氏が進行を務めた。登壇者は、バカルディジャパンの金城従氏に加え、電通ジャパン・インターナショナルブランズの横田祐介氏、電通デジタルの後藤百香氏の計4名。
冒頭、三上氏はdentsu persona hubについて、「ペルソナを起点にデジタルマーケティングを支援する仕組み」と説明。「電通グループが保有する調査データ、消費者データ、広告主のファーストパーティデータを活用してペルソナを設計し、さらに∞AI(ムゲンエーアイ)を用いながら人の手も介在させて精緻化する。最終的には、SNSや大手動画プラットフォーム、Oguryのネットワークで、同一ペルソナに基づいた配信を行う点が特徴」と述べた。
具体事例として紹介されたのが、バカルディの主力商品である「バカルディラム」のマーケティングだ。金城氏は、代表的なカクテルであるモヒートに着目し、「どんな人が、どんな場で飲んでいるのか」を徹底的に考えた結果、「パリピ未満」というペルソナに行き着いたと語った。
※本キャンペーン、および本ペルソナ設計はいずれも20歳以上の成人消費者を前提としている。
このペルソナは、まず担当者が仮説として描き、社内で議論を重ねて磨き上げた後、必要に応じて量的調査で検証していく。「本当に存在しそうだと社内の関係者が納得するところまで作り込むことが大事」と金城氏は強調した。
作られたペルソナは、広告配信だけでなく、イベント設計やコミュニケーション、提供するドリンクの提案など、あらゆる施策の軸として活用されている。三上氏は、「今回の事例ではdentsu persona hubが、ペルソナをデータに翻訳し、媒体ごとの最適なターゲティングへと橋渡しする役割を果たした」と補足した。金城氏は「媒体ごとに分断されがちだった効果測定を、一元的に見られたのは大きなメリット」と評価した。
後半では、BtoBキャンペーンにペルソナを追加で活用した事例が紹介された。後藤氏は、外資系IT企業の中小企業オーナーをターゲットにした施策について、「dentsu persona hubを使って分析したところ、ゴルフや釣りといった意外な興味関心が浮かび上がった」と説明。従来の職業属性だけのターゲティングよりも高い完全視聴率を記録し、「どのペルソナが成果に貢献したのかまで可視化できた点が評価された」と語った。
三上氏は、「ペルソナを作るだけでなく、データを通じて実行・検証まで一気通貫で支援できることが、dentsu persona hubの価値」と述べ、セッションを総括した。
セッション3:dentsu persona hubを活用した今後の展望
セッション3では「dentsu persona hubを活用した今後の展望」をテーマに、Oguryの三上氏が進行を務め、電通の赤羽巧司氏、前川駿氏が登壇した。
まず赤羽氏が、APAC地域における取り組みを紹介。東南アジアでは依然として年齢・性別・地域といった属性だけを用いたブロード配信が主流だという。その中で紹介されたのが、タイで実施された家電メーカーの事例だ。「独自調査により、タイ国内のエリアごとに、製品に対する期待や利用シーンが違うことが明らかになったため、それぞれのエリアごとにペルソナを描写。Oguryとの協業により、地域別のペルソナに基づいたターゲティングとメッセージングの切り分けを実施しました」(赤羽氏)。
三上氏が「ペルソナの活用は海外の方が進んでいるイメージがあった」と印象を語ると、赤羽氏は「欧米では受け入れられているが、APACではこれから広がる段階。今回の事例で、実際に形にできたこと自体に大きな意義がある」と強調した。
続いて前川氏は、AI活用が進む中で「ファーストパーティデータをAIに学習させる重要性」に言及した。電通ではデータクリーンルームを活用した「Tobiras Shared Garden(TSG)」を展開している。そこで注目されるのが、Oguryが持つコンテキストデータを活用し、ペルソナの意味や文脈をAIが解釈して、各媒体で設定可能なターゲティングに変換する仕組みである「セマンティックマッチング」だ。
従来はユーザーIDを使ったマッチングが主流だったが、プライバシー規制やスケールの問題がある。これに対し、AIによるセマンティックマッチングを用いれば、統計情報や文脈情報を基に、自動的に最適なターゲティング候補を提示できる。「運用者が手作業で行っていた煩雑な設定を、AIで省力化・高度化の支援をできる可能性がある」と前川氏は語った。
前川氏は今後の課題として、効果検証の重要性にも言及し、「ペルソナに基づく配信が本当に成果につながっているのかを検証するため、Oguryと電通ではデータクリーンルームを活用し、テレビ視聴データや購買データなどをセキュアに連携させたメジャーメントの仕組みを検討している」と述べた。
「精度だけでなく、測定できることが重要」とまとめた三上氏は、「dentsu persona hubは国内にとどまらず、グローバル展開やAI活用、メジャーメントまで含めた進化を続けていく」と語り、セッションを締めくった。








