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公開日: 2026/07/07

AI時代の教育は「考え方の考え方」をどう育てるか――広告小学校20周年フォーラム

2026年6月16日、電通コーポレートワンは「広告小学校20周年記念フォーラム」を開催した。2006年にスタートした広告小学校は、広告づくりを通じて子どもたちの「考える力」と「伝える力」を育む教育プログラムとして展開されてきた。

20周年を迎えた今回のフォーラムでは、教育関係者やクリエイターらが登壇し、AI時代に求められる教育のあり方について議論が交わされた。

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AI時代に変わる教育の前提

基調講演では、東京都小金井市教育委員会教育長の大熊雅士氏が登壇。広告小学校の立ち上げ当初からプログラム開発に携わってきた同氏は、人口構成の変化や生成AIの普及など社会環境の変化を前提として教育改革が進められていることを紹介し、「教育は大きな転換点を迎えている」と指摘した。

その中で大熊氏が強調したのが、「考え方の考え方」を教える重要性だ。

「よく考えなさい」と促すだけでは、子どもたちは教師が期待する答えを探そうとしてしまう。一方、発想の切り口や思考のプロセスを学ぶことができれば、自ら問いを立て、多様な視点から考える力が育つという。

背景には学習環境の変化もある。塾やオンライン教材の普及で授業内容を事前に知る子どもが増え、「正解を知っている前提」で授業に臨むケースも少なくない。そうなると子どもたちは勉強するフリをするという。大熊氏は、このような状況を「低熱量適応」と表現し、「学ぶことより周囲に合わせることが優先されている」と指摘した。

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さらに生成AIの普及により、正解へ短時間でたどり着ける一方、試行錯誤の機会が失われつつあることにも言及した。

例えば、インゲン豆の発芽実験で「どのくらい肥料を与えればよいか」という問いにはAIが答えられる。しかし、「この学校で最後の一粒のインゲン豆を最大限に増やすにはどうするか」という問いには、土壌や気候を調べ、地域の人に話を聞くなど、責任をもって現実と向き合う探究が必要になる。

大熊氏は、「AIでは代替できない身体性を伴う探究と、自ら判断し責任を持つ経験が、これからの教育には不可欠だ」と述べた。

20年前から実践してきた広告小学校の価値

大熊氏は、こうした考え方は広告小学校が20年前から実践してきたものだと説明した。

広告小学校では、発想法を学ぶだけでなく、「自分探検CM」や「ふるさとCM」を通じて、自分や地域を観察し、五感で価値を発見するプロセスを重視してきた。また、多様なアイデアの中から自ら選び、その理由を言語化する経験は、発想力だけでなく、自分の判断に責任を持つ姿勢も育むという。

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左から、モデレーターを務めた電通コーポレートワン 吉田祐子氏、電通 田中元氏、小金井市教育委員会教育長 大熊雅士氏、アドミュージアム東京館長 牧口征弘氏


続くトークセッションには、大熊氏、広告小学校の校長でもある牧口征弘氏(アドミュージアム東京館長)と、メインキャラクター「コマ犬くん」の生みの親である田中元氏(電通 アートディレクター)が登壇した。

田中氏は印象的なエピソードとして、「もう少し面白くなるといいね」と子どもに伝えたところ、その場で「面白いとは何か」をパソコンで検索し始めた出来事を紹介。便利なツールで定義や参考例は得られる一方、本来は自分の経験や想像から生まれる発想まで外部に委ねてしまうことへの危機感を語った。

牧口氏も、劇作家・野田秀樹氏による東京大学の入学式での祝辞に触れ、「容易に正解らしいものへ到達できることが、本当に創造的なのか」と問いかけ、試行錯誤そのものの価値を強調した。

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AIと共存する時代に、人が育てるべき力

セッションを通じて繰り返し語られたのは、「身体性」と「責任」の重要性だった。

大熊氏はそば打ちを例に、AIが理論上の最適な加水率を示せても、実際にはその日の湿度や粉の状態を手で感じながら調整する必要があると説明した。経験を重ねることで培われる直感は、体を通じて得られる知識であり、AIだけでは代替できないと語った。

牧口氏も、電通の会議や将棋のAIを例に挙げながら、同じ空間で生まれる空気感や、生身の人間同士だからこそ働く直感の価値を指摘。田中氏も「AIは多くの案を出してくれるが、最終的な責任は取らない」と述べ、自ら考え、自ら選ぶことの重要性を強調した。

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フォーラムの最後に、大熊氏は「施無為(せむい)」という言葉を紹介した。仏教に由来する「恐れが無い状態を施す」を意味する考え方であり、「何を考えてもよい」と思える心理的安全性のある教室づくりが、主体的な学びにつながると締めくくった。

広告小学校が20年間積み重ねてきた実践は、生成AIの登場によって新たな意味を持ち始めている。知識や正解を教えるだけでなく、問いを立て、思考のプロセスを学び、体を使って探究し、自らの選択に責任を持つ力を育むこと。

AIと共存する時代において、教育が果たすべき役割は、そうした人間ならではの能力を育成することへと、より明確にシフトしつつある。

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