急速に拡大するショート動画市場において、企業のマーケティング活動におけるショートドラマ活用への関心と需要が高まっている。
「Advertising Week Asia 2025」(2025年12月2日(火)~12月4日(木)の3日間、都内にて開催)のセッションでは、電通とセプテーニが共同で設立した「ショートドラマ・マーケティング・ラボ」の取り組みを中心に、ショートドラマ領域の最新トレンドやマーケティングへの活用アプローチについて、電通CXクリエイティブセンターの児玉尚樹氏、セプテーニジャパンの江村雄一氏が、具体的な事例を交えながら解説。モデレーターは電通イノベーションイニシアティブの石川遼氏が務めた。
成長を続けるグローバルのショートドラマ市場
セッション冒頭では、グローバルにおけるショートドラマ市場の成長見通しが共有された。石川氏は、2030年時点で260億ドル(4~5兆円)規模の予測があると紹介。市場拡大が前提となる中で、国内におけるショートドラマの活用状況と事例を手がかりに、企業がどう取り組むべきかをひもといていった。
ショートドラマを4つの型で整理する
続いて、児玉氏がショートドラマを「SNS上で無料視聴」と「配信アプリで有料視聴」に大別し、企業活用の視点で4つの型に整理した。
児玉氏はSNS上で無料視聴される領域について、企業の使い方として①クリエイターアカウントでのタイアップ、②自社アカウント内でのコンテンツ投稿、③ショートドラマ 専用アカウント開設の3パターンがあり、さらに④として、配信アプリの有料視聴領域も企業活用が増えていると述べた。
江村氏は「特にグローバルだと中国の事例がかなり先行していて、映画を企業が一緒に作るのに近い座組も出ている」と補足し、日本でも同様の展開が広がる可能性を示唆した。石川氏は若年層の視聴行動について、「10代から20代中盤ぐらいまでの方々のテレビ離れが注目される中、アテンションはSNSに移行している」と整理しました。
事例で見る実装方法
事例①:クリエイターアカウントでのタイアップ(アイフル)
江村氏は、クリエイターアカウントでのタイアップ事例として、アイフルの取り組みを紹介。目的はブランド好意度の向上で、年間3回・計6話を投稿し、結果は6本合計で2900万回に迫る再生数を獲得。特に、広告配信を全くしておらず、オーガニック再生のみ、つまり制作費のみでこれだけのリーチを獲得できた点を強調した。
事例②:企業自社アカウント内コンテンツ(ミツカン「カンタン酢 トマト」)
次に江村氏は、ミツカン「カンタン酢 トマト」の事例を紹介。目的は認知・好意・購入意向の向上で、4本で1700万回以上の再生を獲得した。江村氏は、タイアップではない座組でも数字が出た点を「特筆すべき」と述べつつ、「プラットフォームごとの伸び方がクリエイティブの質によって大きく違う」と説明した。
事例③:アプリ内のドラマ本編×切り抜き動画SNS拡散(Bump)
3つ目に紹介されたのは、課金型の視聴アプリ内でブランドストーリーに近い本編を作り、SNSでは切り抜きを多本数展開して面を広げる型だ。江村氏は視聴専用アプリBumpを例に、「アプリの中で配信することによって数万〜数十万回の視聴が獲得できる」ことに加え、「切り抜き動画が1本で数万回、数十万回まわるため、結果として数千万回規模まで伸び得る」と説明した。児玉氏はこの構図を「質も面も量も担保できる」と強調。石川氏も、「どこを切り出すか、長さはどれぐらいにするか、切り口の違うものを何本出すのかといった運用知見が重要」だと述べた。
「エンゲージメント×拡散力」のループが生む価値
後半では、ショートドラマがなぜ有効なのかを、エンゲージメントと拡散の観点から議論した。児玉氏は、ドラマの世界観によって感情移入が生まれ、その中に企業メッセージが自然に届く点がショートドラマの強みだと説明。さらに、「いいね」や「シェア」といった能動的反応が拡散を促し、結果として「コンテンツマーケティングとコミュニティ施策が絡み合った存在」になると語った。
石川氏は、切り抜きなどで流入したユーザーを「滞留させる」ことの重要性を指摘し、反応を捉えて次の制作やプロセスにフィードバックする必要性を示した。児玉氏も、ショートドラマは反応を読み込みながら「作りながら育てていける」点に可能性を感じていると語った。
江村氏は、「離脱ポイントの特定やコメント欄分析がPDCAの核になる」と述べ、「離脱するポイントがどこか」「そのポイントに何があったか」を見ていく重要性を提示。児玉氏も、TikTokでは「数秒単位でガクッと視聴が下がっている」ことが見えてしまうとしつつ、だからこそ「良かった・悪かったが分かりやすく見える」ことが改善につながると語り、定量と定性を往復する運用の知見が共有されました。
「ショートドラマ・マーケティング・ラボ」立ち上げの狙い
終盤、石川氏から、電通、セプテーニ、emole、GOKKOの4社共同で「ショートドラマ・マーケティング・ラボ 」を2025年11月に立ち上げたことを説明。石川氏は、電通・セプテーニが広告会社として制作やメディアプランニングを担ってきた一方、GOKKOとemoleはショートドラマ領域のけん引プレーヤーであり、両者の強みを掛け合わせて共同で知見とサービスを整備していく考えを示した。
提供サービスは、企画制作から配信、運用、データ解析、改善のループまでを一気通貫で回す設計で、石川氏はPDCAを回し続けるために、下図の4と5の重要性を強調。「単発で終わらせず、良い点、悪い点両方をレビューして、次にフィードバックする」ことを高速に回すことが、ラボとして最低限提供したい価値だとした。
PDCA事例:ガンホー「青春パズドラブ!」
「ショートドラマ・マーケティング・ラボ」によるPDCAの具体例として紹介されたのが、ガンホー の「パズドラ」事例だ。パズドラでは、ショートドラマ専用アカウントを立ち上げ、若年層アプローチを目的に「青春パズドラブ!」として学園もののドラマを展開。取り組みを続ける中で「緩やかなコミュニティができていて、IP化する」現象が見られ、継続によって認知、好意度、利用意向が増加した。特に、接触者と非接触者で好意度に4倍以上、利用意向に約7倍の差が出たというデータが示され、児玉氏は驚きを率直に語った。
ショートドラマ・マーケティング・ラボの今後の展開
最後に石川氏は、「ショートドラマ・マーケティング・ラボ」の今後について提示。直近はソリューション提供開始とKPIの策定・運用を回し、知見を蓄積。IMCプランニングの中での位置づけを明確にし、ファネル上のどのKPIに効かせるか、テレビCMとの統合プランニングにも触れていきたいと述べた。
さらに2026年下期以降は、派生的なプロダクトの検討・リリース、トライアルやPoCをブランドと連携して進めていく構想が示され、ショートドラマを単発の話題施策から確立した手法へと押し上げていく意思を語り、セッションを終えた。