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日本の食生活のトレンドを知り、これからを考える、電通「食生活ラボ」(以下、食ラボ)。本連載は、食ラボの調査データなどを踏まえて、食のキザシをひもといていきます。

食ラボでは、2020年頃から見られ始めた、「1日3食をしっかり食べる」という従来の食習慣にとらわれず、ちょっとした空腹やその時々の生活リズムに合わせて食を取り入れるスタイルに着目。「食事の時間や手間を十分にかけずに食べる、ちょっとした食べ物や飲み物のこと」を「0.5食」と名付け、注目してきました。

2023年に電通報に掲載した「0.5食」に関する記事には、多くの反響をいただきました。当時は特に20代女性を中心に、朝・昼・夜・間食の境目を意識しながらも、自分のライフスタイルに合わせて食べる時間や内容を選択する傾向が見られていました。しかし現在、「0.5食」は特定の世代や層に限られた行動ではなくなりつつあります。

食ラボ


仕事、家事、育児、趣味、人間関係など、生活者の時間の使い方が多様化する中で、食事の量や時間、満足感を自分に合わせて調整する行動は、世代を問わず日常の中に広がっています。とはいえ、いま起きているのは、単なる“間食市場の拡大”ではありません。生活者が自分の生活に合わせて食を再編集し始めているのです。

現代人が求めるのは、「邪魔しない食」

いまの生活者が食に求めているものは、必ずしも“しっかり時間をかけて食べること”だけではありません。1食としての満腹感にまでは至らなくても、仕事や移動の流れを妨げず、食後の身体の重さによって午後の活動や次の予定に支障をきたさないことが重視されています。趣味や人との時間を含め、生活全体のテンポを崩さずに取り入れられる食。そうした「邪魔しない食」へのニーズが高まっています。

このニーズをひもとくと、以下の4つの要素が見えてきます。

・時間を奪わないこと=短時間で、スピーディに食べられる
・量が重すぎないこと=身体や胃に物理的な負担をかけない
・気持ちを切らさないこと=思考や集中力を阻害せず、次の行動に移れる
・それでいて、自分の体にとってよい選択だと思えること=ただ空腹を満たすだけでなく、少しでも自分をいたわっている感覚がある

日常のパフォーマンスを維持するための“軽さ”と、自分の身体への“いたわり”をいかに両立させるか。これこそが、現在の「0.5食」を読み解く上で欠かせない視点です。

お菓子が“食事気分”をまとい始めた

時間の不足や多忙、そしてそもそも「考えることが面倒くさい」といった心理などを背景に、食事をスキップしたり簡略化したりする風潮が広がっています。ただし、生活者が求めているのは、単なる欠食や食事の簡素化だけではありません。「短時間で済ませたい、量を抑えたい」という合理化ニーズと同時に、食事としての満足感や、体にとって納得できる選択であることも求められています。

食ラボの調査では、「お菓子や栄養補助食品、飲料を食事代わりにすることへの抵抗感」を示すスコアは年々低下しています。その一方で、「脂っぽいもの・甘いものを食べるときの罪悪感」は増加傾向にあります。

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手軽なお菓子や補食で食事を済ませることへの抵抗は下がっているものの、体への負担や罪悪感は避けたい。そんなねじれた意識が定着しつつあります。このような葛藤に対して登場したのが、「食事風味のお菓子」や「食事としての満足感を追求したスナック」でした。

たとえば、チャーハンの味がする煎餅や、スープ味のパイ、ファストフードでは、簡単に食べられてボリュームも多すぎないホットスナックが登場しました。

お菓子でありながら“食事をした気分”を演出できる商品であれば、手軽さを享受しながらも、心理的な負荷や罪悪感を軽減できる。2026年にはこうした商品が相次いで市場に登場し、単なる嗜好(しこう)品としてのおやつではなく、“食事の代わり”や“食事までのつなぎ”として受け入れられる動きが一気に加速しました。生活者は、矛盾する感情を抱えながらも、自分なりに納得できる選択肢を見つけ、「0.5食市場」を押し広げているのです。

求めているのは「メリハリ」と「体験」

一見すると、現代の食行動は、食への関心が薄れ、食事が簡略化されているようにも見えます。しかし食ラボの調査から見えてくるのは、生活者が食を手放している姿ではなく、平日と休日で食に求める役割を使い分ける姿です。


平日の食事

「食事のやさしさを求める」スコアが休日より高い傾向にあります。「体に負担の少ない、まろやかで安心感のあるものを食べたい」「食べやすく配慮された料理を食べたい」といったことを求めていることがうかがえます。

休日の食事
「食事の楽しさを求める」スコアが平日より高く、特に朝食で+3.2pt、昼食で+3.6ptの差が見られました。休日は、「気分が高まる食事をしたい」「五感を使い心が満たされる食事をしたい」といった“楽しさ・刺激”を求めているようです。

食ラボの調査では、平日と休日の食事に求める感情に違いが見られました。平日は、仕事や生活をスムーズに回すために、体にも気持ちにも負担をかけない“やさしさ”を求める傾向があります。一方で休日には、五感を満たす刺激や、気分が高まる体験を求める傾向が見られます。

生活者にとって食べることは、単に「食べ物を口にして空腹を満たす作業」ではありません。その時間をどう過ごすか、どんな気分を得るかという、食を含めた体験全体として捉えられています。

同じことが「0.5食」にも言えます。「0.5食」は、“食事を軽くする行動”でありながら、食の楽しさや満足感を完全に手放すものではなく、むしろ、生活者がその時の体調や予定、空腹度に合わせて、食べる量やタイミング、満足感を調整するための選択肢として定着し始めています。このように「0.5食」が日常の中に広がるほど、食品やサービスに求められる価値も変化していくのです。

0.5食はもっと自由になる——商品・サービスに求められる新たな視点

かつて、空腹を感じたときに小腹を満たすために食べられていたおやつは、食事と食事の間を補う「補食」へと進化し、「0.5食」というスタイルを確立しました。これからの「0.5食」は、さらに「シチュエーションに応じたセルフカスタマイズ」へ向かっていくと考えられます。

1日の食事の総量をどう配分するかという発想そのものが自由になり、従来の「1の食事×3回」という固定観念から離れて、自分の活動リズムや体調に合わせて「0.5の食事×6回」のように分散させる生活者も現れてくるでしょう。こうした食行動の変化に伴い、食品・流通・マーケティングにおける「対策」や「商品のあり方」にも新たな示唆が得られるのではないでしょうか。

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食事のタイミングや量を企業が決めるのではなく、生活者が自分で調整できる余白をどう設計するか。これが、今後の商品開発や売り場づくりにおいて重要な視点になるはずです。

生活者は、「食を再編集」し始めている

「0.5食」は、食を雑に捉えた行動というよりも、むしろ企業の決めた分類や、「1日3食」という固定的なルールに縛られず、その時々の生活に合わせて、自分に心地いい食の形を柔軟にデザインしていくための新しい考え方でもあります。

いままでの固定観念を捨て、自分のライフスタイルに合わせて食事のスタイルを賢く組み替えていくこと。食べないことを肯定するのではなく、少しでも自分に合う形で食べることを肯定すること。完璧な食事を求めすぎず、いまの自分にちょうどいい選択肢を持つこと。こうした生活者の食を再編集する、しなやかな変化を捉えることが、これからの食ビジネスにおいて重要になると考えています。

【食生活に関する生活者調査2025 調査概要】
・目   的:日本の食生活における生活者の意識や実態、満足度、トレンドなどを把握
・対象エリア:全国
・対象者条件:15~79歳
・サンプル数:1300
・調 査 手 法 :インターネット調査
・調 査 期 間 :2025年9月2日~4日
・調 査 機 関 :株式会社電通マクロミルインサイト

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著者

大林 由季

大林 由季

株式会社 電通

第4マーケティング局

コミュニケーションプランナー /食生活ラボ主宰

電通入社後、新聞局、営業局を経て、現在は第4マーケティング局に所属。食品・飲料をはじめ、幅広い業種において、企業・ブランドの課題に対するPR視点からのコミュニケーション設計を手掛ける。電通「食生活ラボ」では主宰として、生活者の食意識や食行動の変化を継続的に研究。定点調査「食生活に関する生活者調査」や市場・商品動向の分析を通じて、これからの食の兆しや生活者インサイトを探索し、得られた知見を企業の商品開発、マーケティング戦略、コミュニケーション施策へとつなげる活動を行う。食を生活者の価値観や社会の変化を映すものと捉え、生活者研究とマーケティングの両面から、食を起点とした新たな価値やビジネスの可能性を探っている。

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