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食ラボ調査から見えてきた「食のキザシ2023」No.2

1日3食は、もはや当たり前ではない?時代を象徴する「0.5食」

2023/08/28

食のキザシを探る、本連載。今回のテーマは「0.5食」です。食ラボの調査では、1日3食きちんと食べている人は7%に過ぎないことがわかりました(※1)。また、回答者の20%は「ゆで卵だけ、バナナだけなど、単一食品を食事代わりにすることがある」(※2)と答えています。このような人は、女性20代に絞ると40%にもなります。

みなさんも心当たりがあるかもしれません。ご飯、みそ汁、おかずといった、いわゆる「1食」の食事。それには満たないものの、「1回」の食事として何となく生活に定着している「0.5食」なるもの。

それを食ラボは「次なる食のキザシ」と捉え、今回実施した食ラボ調査やヒアリング結果から実態を明らかにしていきたいと思います。

※1 第7回食ラボ生活者調査、全国10-70代男女1300ss、2022年9月実施。回答者1300名の内、「朝昼晩、ほとんど毎日食べる」「一度の食事で食べる量はだいたい決まっている」「一度の食事ではたいてい複数の食品を食べている」全てに該当する95名のこと。

※2 第7回食ラボ生活者調査、全国10-70代男女1300ss、2022年9月実施。回答者1300名の内、「ゆで卵だけ、バナナだけなど、単一食品を食事代わりにすることがある」に「あてはまる」「ややあてはまる」に該当する270名のこと。
 

 

1日3食きちんと食べているのは、わずか7%

食事というと「朝昼晩で1日3食」「朝食と言えばパンに卵料理にフルーツヨーグルト」などのイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし、1日3食をきっちり食べている人は7%にとどまります。

食ラボが実施したインタビューでは、下記のような言葉が聞かれました。
    
「以前は朝昼晩の1日3食だったが、在宅勤務になり、食べる時間も食べるものも自由になったので、バナナやゆで卵など、食事とは言いづらいちょっとしたものも含めて1日5食くらい食べるようになった」

「お昼を食べ損ねて仕事をしている時に『そろそろ栄養的に食べておくか』と思い立って、大豆バーを食べる」

いずれも彼らの食生活が、1日3食の形ではなく、自由なタイミングで簡単なものを適量食べる形になっていることがわかります。食は多様化しており、若い世代ほど、朝食にアイスクリームといった常識に捉われない実態も見られます。

下の画像は、ある20代女性の1日の生活と食事についての回答です。ここには、朝食も昼食も存在しません。最初の食事は16時で、ケーキだけの時もあるようです。そして、22時に夕飯で主食、副菜、汁物を食べています。感覚的な数え方になってしまいますが、この方は16時の食事が0.5食、22時の食事が1食、計1.5食くらいと言えるでしょうか。

食ラボ

このような事例は、単に「食生活が乱れている」と結論づけられるかもしれません。しかし、見方を変えると、日々忙しく過ごしている現代人の実態を表しているように思えます。良い悪いではなくこれが実態であれば、今、世の中にある飲食関連の商品やサービスでは手が届ききらないシーンが意外と多いのでは、と考えることもできるでしょう。

このような実態を踏まえて、食ラボは「食事の時間や手間を十分にかけずに食べる、ちょっとした食べ物や飲み物のこと」を「0.5食」と名付けました。そして0.5食には今の時代ならではの生活者欲求や今後の事業機会のヒントがあると考え、3年以上前から研究を進めています。

「0.3食」や「0.8食」では、といった議論もあるかもしれませんが、定食のような複数食品をバランス良く腹八分目で食べることとも違いますし、生活者へのヒアリングを実施した感触として1食の半分くらいの量や満足感が近いように感じたので、0.5食としています。

「0.5食」の背景には、頑張る現代人の姿が 

このように0.5食は、それまでの当たり前にとらわれない自由な食生活の中で生まれていることがわかってきました。では「それまでの当たり前にとらわれない自由な食生活」はなぜ増えているのでしょうか?食ラボでは、時間的心理的に食事より優先される事柄が1日の生活の中で増えているからではないかと考えています。

子どもの頃を思い出してみると、学校や部活といったルーティンの中できちんと3食取る時間が生活に組み込まれていたように思います。しかし、年を重ねるにつれ、仕事や家事や育児・介護など食事を多少おざなりにしても奮闘せざるを得ないことが増えてきます。夢や理想に向かって頑張る人もいるでしょう。そうなると自分の送りたい生活がまずあり、残りの隙間時間でその時々に合わせた食事が取れれば良いというマインドが生まれ、それが先に挙げたような自由な食生活につながっているのだと考えられます。

さらにコロナを機に在宅時間が増えて朝昼晩の境目がぼやけだしたことや、デリバリーやテイクアウトなど食の調達方法が増えたこと、外出機会が減りそもそもおなかが空かない、といった要因で、この傾向が加速していると分析しています。

0.5食の背景をひもといていくと、今の時代の忙しいライフスタイルや、毎日頑張る現代人の姿が見えてきます。つまり、0.5食は一過性の流行ではなく、今の日本の社会構造に起因する現象であり、ある意味起こるべくして起こっている現象だとも言えます。

ビジネスチャンスの宝庫!0.5食市場         

ここまで生活者視点で見てきましたが、今度は企業視点で見ていきましょう。0.5食市場は食品・飲料メーカーなどにとって大きなビジネスチャンスになりそうです。

既存の商品やサービスは、朝食、昼食、夕食、間食のどれかに大別できたと思いますが、前述の通り生活者はその枠を超えて自由なマインドで飲食している。そして、0.5食的な現象を見るに、彼らは毎回の食事の完成度に関心があるというよりは、彼らの送りたい生活を送ることに関心がある。そう考えると商品やサービス開発の着眼も少し変わってくると思います。

つまり、開発初期段階で「間食カテゴリではこういう味がはやっている」という短期的なトレンドに着眼するのではなく、「そもそもお客様のライフスタイルや食生活自体が大きく変化している」という生活まるごとを捉え直す見方をすると、今までにない視点が生まれ、結果的にお客様に寄り添い、彼らのリアルな日常生活に入り込める商品やサービスを発想できると思うのです。このようにお客様の生活変化を深く理解して開発された商品やサービスは、お客様からの愛着も獲得し、積極的に選ばれ続けることで企業やブランドのLTVにもつながるでしょう。

例えば洋菓子メーカーが間食カテゴリで小売販売用の新しいプリンを作るとします。一般的には生活者調査などからプリンに求めることを聞き、柔らかめか固めか?どんなフルーツがのっているといいか?どんなネーミングとパッケージが良いか?といった視点で商品コンセプトを作っていくと思います。

しかし、食べる時間や食べるものが自由になっている食生活動向や、食事がままならないほど忙しい日々を送る生活者実態を踏まえ、プリンを栄養のある0.5食として通用させるとしたら?もしかしたら、隙間時間に栄養を取れるように卵やタンパク質量にこだわったり、食物繊維が取れるフルーツを選んだり、満足感があるように量や固さを調整したり、といった形で今までにないアイデアが生まれるかもしれません。

既に0.5食にあたる新しい商品やサービスは世の中に生まれ始めており、食ラボの研究からもお客さまのニーズがあることが読み取れました。ライフスタイルの多様化や忙しい生活が今後も加速していくと考えると0.5食市場が確立し、大きくなっていく日が来るのもそう遠くないかもしれません。

今後も、食ラボでは調査結果をもとに、これからの食生活の兆しを連載でひもといていきます。

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