“Beyond AI”の時代に企業が下すべき決断とは 電通グループ・佐野CEO が語るAI×PI 「Xplorers 2026」開催
事業変革の最前線を探究するビジネスカンファレンス「Xplorers 2026」が8月27日(木)、東京・港区の八芳園 CLUB FLOORで開催された。企業の意思決定者や各領域のエキスパートが一堂に会し、事業変革や新規事業創発の未来について議論するこのイベント。2026年のテーマは「Beyond AI」。AIの導入自体がもはや企業としての競争優位性にならない時代において、自社の資産・人財をAIとどう結びつけ、新たな市場価値を創出するかが問われている。
オープニングを飾ったキーノートパネル#1「Beyond AI時代、日本企業は何を決断すべきか」で、各業界のトップリーダーとともに登壇した電通グループ 代表執行役 社長 Global CEO 兼 dentsu Japan CEO 佐野傑氏は、AI時代における企業の未来像について語った。
AIとPIの掛け合わせによって価値を最大化
登壇者の自己紹介からスタートしたセッションで佐野氏は、「営業部門に長く携わり、2021年からはデジタルトランスフォーメーション領域にも関わっている」と自らの経歴に触れつつ、海外事業比率6割、広告領域以外の売上総利益が国内で約4割を占めるなど、事業が多角化している電通グループの現状を紹介した。
また「社員こそが資産」と語り、AIとPI(People Intelligence:人の力)の掛け合わせによって価値を最大化する基本戦略を提示。「人間の能力を、AIと共にどのように高めていくか」を日々模索していると言い、「本質的な課題、顕在化していない課題を見つけ、アジェンダを設定し、合意形成を行う。これは人間ならではの力ではないか」と述べた。
続いてのテーマは、「CEOに就任してから見える景色がどう変わったか」。
グローバルCEOとして世界を見る佐野氏は就任後、より長期的な視点を持つようになったと振り返る。2026年で創立125周年を迎える電通グループに対し、「仲間のために、“ここから125年存続するために、今どんな判断をしなきゃいけないか?”という思いは強くなった」と語った。さらに「社会の中で自社グループがどのような価値を提供すべきかを、より真剣に考えるようになった」と述べた。
「PSDCA」により施策の成功確率を高める
セッションの中心的なテーマである「AIが各業界に与える変化」で、佐野氏は電通グループのAI戦略の核となる「AI×PI」の考え方を具体的に説明した。
「マーケティング領域とAIは相性がよく、施策を通して速度と精度が上がっていく」と実感値を口にした後、「DO、つまり実行する前にシミュレーションを高速で繰り返す」新しいマーケティングフレームワーク「PSDCA(Plan, Simulate, Do, Check, Action)」を紹介。これは、さまざまな業種や商材ごとに異なる生活者や市場のリアルな反応を事前に再現できる業種特化型の「AIマーケットツイン」上で施策を何度も検証し、実行する前に成功確率を高めるアプローチである。
「マーケティング施策を実施する前に一定程度のシミュレーションを行うことで、施策の精度とマーケティングROI(投資利益率)を向上させられるだろう」と、力強く語った。
最後に、AIによるマーケティングの効率化が進む一方で、スポーツやエンターテインメントなど、熱狂を生み、感情を動かす体験に時間とお金を使う層の増加にも触れた佐野氏。「人の心を動かす領域と、企業の事業変革を支援する領域に、われわれの人財もシフトしていく。そこにこれからの未来があると思う」と、AI時代における“人の役割”を展望した。
日本発のモデルで世界市場に挑む
最後のテーマは、地政学リスクが高まり、その一方でAIによるボーダレス化が進む中、企業のトップとして世界とどう向き合うか。
佐野氏は、AI時代は電通グループにとってチャンスだと捉える。海外の競合企業がメディア、クリエイティブ、CRM(顧客関係管理)といった機能を個別の会社で提供している場合が多いのに対し、電通・dentsu Japanは日本市場でこれらを統合して提供してきた。「元々統合されている会社という点が、グローバルでは非常に有効なのではと思う。また、スポーツ領域におけるマーケティングや事業開発の長年の知見も一つの勝ち筋になるのでは」と述べ、日本発のモデルで世界市場に挑む姿勢を見せた。
さらに佐野氏は、「AIにできることはAIでやりながら、AIだけでは作れない明るい未来を、企業同士力を合わせながら描き、実現していきたい」と、AIと人、あらゆる企業間での共創による未来創造の在り方を示した。
AIという強力なツールを手に入れた今、それをどう使いこなし、どのような未来を描くのか。変革のリーダーの言葉は、不確実な時代を乗り越え、次の成長を設計するための重要な示唆に満ちていた。




