「そのひと言」の見つけ方No.4
400字書いたら半分に削る。
2014/11/20
コピーには短く印象的なキャッチコピーと、それを受けてストーリーや商品の特徴、価値を語るボディコピーがあります。このボディコピー、たとえば400字という原稿用紙1枚に書いてみて、ばっさり半分に削ると、かなり発見があります。
以下は僕が実際に社内の研修で教えてもらった、コピーライターの鈴木康之さんによるトレーニングです。
条件は「少なくとも3回」でしたが、僕はやれるだけやろうと思って、19日間続け、19個書きました。以下がその変遷です。
周りに愛煙家が多いことや雑誌編集者であるといった周辺情報を削り、フクチャンの置かれた状況をシンプルに説明しています。でももう少しフクチャンの心情を描いたほうが喫煙の誘惑と闘っている状況を説明できるかもしれません。
第1稿よりさらにフクチャンの心情に寄っています。でもこれだとフクチャンが実際にどういう人なのかはまったくわからなくなってしまいました。もっとフクチャンについて書いたほうがよさそうです。
エビス顔という説明が加わりました。ただ雑誌編集者であることやいつからタバコを止めているのかといった情報は省かれたままです。
書き直しをゴリゴリと続けると、10日目の第10稿ではだいぶ情報が整理されてきました。
……さて、これを19日間続けた結果、19個目は次のとおりになりました。
ついには書き手である「僕」が登場しました。
しかし、鈴木さんに見せると「こんなこと書く人は失格だ。話にならない」と、厳しいダメ出しをされました。特にダメなのは最終稿。理由は「書き手が出すぎているから」です。
鈴木さん曰く、
「コピーというのはおとりつぎ。クライアントの商品のなかにある本質を消費者におとりつぐ、そのフィルターとしての役割がコピーライターなわけで、そのフィルターに書き手の気持ちみたいなものが入っていくのはよくない」。
コピーライターの神髄のような話です。
さきほどの文章を、鈴木さんはこのようにまとめました。
原文から読み取れる、ちょっとぽっちゃりした体型のフクチャン。いま、フクチャンはどういう心境なのか? 職業柄、いろいろな人に神経を使う毎日。「禁煙」という言葉で「断ちたい断ちたい」という気持ちを本当に表現できるのだろうか? もう少し強い言葉があるはずだ。そこで、「禁煙」ではなく「断煙」という言葉をチョイス。福島信男さんに「フクチャン」とルビを振れば、文章の量はそのままで、さらに伝えたい情報を加えることができる。……まさに職人技としか言いようがありません。
厳しい叱責の一方で、19個書いた行為に対しては「クリエーティブという視点から言えば、原文をただ縮めるのではなくて、読んでもらう、おもしろいなと思ってもらう文章を目指したことだけは評価に値する」と少しだけお褒めの言葉をいただきました。
つまり、この塩梅こそが、広告のバランスなのでしょう。
企画書をつくるときも、「言いたいことをまず半分にしたら何が残るのか」というのを自らに課すと、意外にシンプルで強いメッセージになると思います。
800字を400字に、100字を50字に、つまりばっさりと半分にするというのが肝です。ぜひやってみてください。
絵/根岸 明寛(電通 第4CRプランニング局) |