Experience Driven ShowcaseNo.10
安川電機100周年式典での、テクノロジー×エンターテインメントへの挑戦
2015/07/06
4月に安川電機は100周年を迎えました。安川電機といえば、産業用ロボット「MOTOMANMH24」が居合術の神業に挑戦する『YASKAWA BUSHIDO PROJECT』のプロジェクト・ムービーが話題となっていますが、実はそれ以外にも挑戦ストーリーがあります。それが記念式典で行われた、「人とロボットの協調」をテーマに、安川電機の産業用ロボットとライゾマティクスの技術、経験を融合したステージパフォーマンスです。今回は、なかなか知ることができない、その制作工程についてレポートします。
編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局
今、世界で日本のロボット技術が注目を集めています。少子高齢化、生産年齢人口の減少が進展する中、ロボット技術が、製造業の生産現場、医療・介護現場、農業・建設・インフラの作業現場などの幅広い分野で、人手不足の解消、過重な労働からの解放、生産性の向上などの社会課題を解決する可能性を有しています。これまで以上に国内外からのロボットへの期待が集まる中、2015年4月28日に安川電機は創立100年の節目を迎えました。
安川電機は、炭鉱用電機品の受注生産からスタートし、今では売上高4千億円を超え、ロボットなどの最先端技術で世界シェア首位の製品を持つグローバル企業です。
その創立100周年事業として、ロボット村構想を実現しました。ロボット村とは、「YASKAWAの森」「安川電機みらい館」「ロボット工場」「本社棟」「厚生棟」で構成されています。安川電機は、ロボット村を通してものづくりの楽しさ・すごさを発信し、より地域に根ざした、皆様に親しまれる企業を目指し構想を進めてきました。そのロボット村オープニングセレモニー1部式典のステージパフォーマンスにおいて、安川電機は、ライゾマティクスとタッグを組み、世界へ安川電機のロボットのこれからを印象付けるステージを完成させました。
ステージのテーマは、「人とロボットとの協調」としました。安川電機がこれまでも、これからも目指していく、ロボットと人のあり方をイメージさせる演出です。ロボット技術が進むことは、ロボットが人にとって代わるわけではなく、人と協調するあり方に、ロボット技術活用の未来があると考えています。
全体の演出構成は、今エンターテインメント界で最先端技術を使った演出手法のトップランナーであるMIKIKOさん、ライゾマティクス真鍋大度さんに、テクニカルはライゾマティクス石橋素さんに担当して頂きました。彼らのつくりだすロボットの動きをCG動画で制作し、その動きを安川電機の開発しているプログラムシステムを使って、安川電機技術チームがロボットにインプットしていく、という流れで制作を進めました。実際プログラムを進めていくと、時間認識のない産業用ロボットが、人間のように音楽のカウントに合わせて動くことは難しく、安川電機技術チームとライゾマティクスチームとの協業により、正確なロボットの動きをつくり出すことに成功しました。
ステージ上では、ロボット同士がキューブを受け渡すシーンをつくり、産業用ロボットの協働を表現。その後、ダンサーと踊るシーンではロボット自体をより人間らしい動きへと演出が変化していきます。また、「モーター」から端を発している安川電機ということで、モーターを制御することで動くフライングキューブ演出を取り入れました。
キューブの動きについては、最後まで調整が必要になる可能性があったことから、プロジェクションマッピング用に編集された映像を使うのではなく、センシング技術を使い、赤外線カメラで位置を読み取り投影する手法で行いました。つい最近までは最先端技術であった手法ですが、このステージではバックアッププランとして活用しました。
最後に、安川電機の産業用ロボットを使い、パフォーマンスステージを完成させたことは、今後出てくるであろう、「ロボット×エンターテインメント」の組み合わせの先駆けとして大きな一歩となりました。産業用ロボットのプログラミングは、我々が思っている以上に詳細な調整を必要としています。
今後、さらに産業用ロボットが進化することでその動きの範囲は広がることが予測されますが、その動きを理解し、さらにそれをエンターテインメント的表現に整理する力が「ロボット×エンターテインメント」をつくり出していく上では不可欠です。その分野に、安川電機、ライゾマティクスという、どちらも最先端テクノロジーへの挑戦をしているチームと挑戦できたことは、大変価値のある経験になりました。
次回は、その舞台を手掛けた、ライゾマティクスの真鍋大度さん、石橋素さん、電通テックの関口真一郎さんへのインタビューを行いましたので、お伝え致します!