東北大学・災害科学国際研究所
巨大災害に備える!防災・減災対応を進化させる学際研究を推進
2015/10/06
東北大学・災害科学国際研究所は10月1日、「メディアフォーラム~巨大災害に備える!防災・減災対応を進化させる学際的研究とその役割~」を東京・千代田区の東北大学東京分室で開催した。
大災害を繰り返さないための実践的防災学を目指す!
冒頭、今村文彦所長が同研究所の設立経緯と概要について説明した。同研究所は、未曽有の東日本大震災の経験を踏まえ、従来の防災とその減災システムでは対応できない巨大災害に対応するため、2012年4月に設立。7部門37分野の研究者約100人が集結し、災害リスク研究部門、災害医学研究部門、人間・社会対応研究部門など、文理融合の包括的取り組みに特徴を持つ。
ミッションは、「大災害を繰り返さないための研究・実践」。同所長は、国内外の研究機関や産学官民の多くの団体や個人との連携を重視し、研究を進めていることを強調した。
震災を記録し伝える~みちのく震録伝
柴山明寛准教授は、「震災から5年目アーカイブの挑戦」について語った。東日本大震災アーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」は、「震災を記録し伝える」プロジェクト。同研究所が核となり、被災体験者、自治体、NPOなどの協力、産官学120以上の機関と連携し進めている。
2012年1月、宮城県沿岸部15市町村の地元住民による「みちのく・いまをつたえ隊」を結成。写真約10万点、証言記録3000人以上のデータが集められている。被災地の現況や後世に伝えたいことを調査・記録しており、Facebookやウェブで公開している。
体験と教訓を伝える活動にも力を入れており、展示、ワークショップ、かたりつぎのイベントやシンポジウムなども継続して開催している。
震災記録データは、約40万点集積。国立国会図書館の東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」で閲覧することができる。
こころの防災~自分でも、支援体制でも
富田博秋教授は、「東日本大震災後のメンタルヘルスの実態と今後の“こころの防災”体制の整備」について話した。
同教授は、宮城県七ヶ浜町において災害ストレスの調査を2011年から2014年まで、経年で実施。2011年と2014年では、ストレスを抱えている人の割合は3割前後で変わらない結果を報告した。ストレスが緩和される人もいる半面、数年たってから新たにストレスの症状を訴えている人がいることによるという。
心的外傷後ストレス障害など心の病にかかっても自分では気付かないということも、調査を通じて発見された。同教授は、行政や保健師他支援団体と連携して心の専門家に相談しやすい環境をつくるなど「こころの防災」体制整備の重要性を訴えた。
災害統計グローバルセンター設置で国際貢献
同研究所は、国際研究所として、東日本大震災の経験、データ、数値モデルなどの強みを生かしながら各国の大学や研究機関と連携し、研究を行っている。また、海外での緊急災害調査を実施する中で海外学術支援などにも力を入れている。
丸谷浩明教授は、国際的な取り組みとして2015年4月、同研究所内に設置された「災害統計グローバルセンター」について解説した。現在、災害被害統計をとっていない国が多い中、災害の実態を知らなければ良い防災政策は立てられないとの考えから設置に踏み切った。
同センターは、世界82カ国以上での災害統計データベース構築支援の実績を持ち、各国の関連機関との強いパイプを持つ国連開発計画(UNDP)と連携し、プロジェクトを推進していく。
同教授は、「今後、同センターのグローバルデータベースに各国の災害統計情報を集約・アーカイブし、災害統計データを分析することで各国の防災政策に貢献することを目指す」と意気込みを語った。