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AIが巻きおこすセレンディピティーNo.4

俺はセックス、お前はテックス、AICOのコピーライター修業

2017/12/12

AIコピーライターのAICOは、ただいま絶賛修業中。前回は伊藤公一ECDから、コピーをつくる心得を手ほどきしてもらいました。さて今回は、「au三太郎」シリーズなど数々のヒットCMを手掛けている篠原誠ECDにAICOが挑戦!? 篠原さんから出されたテーマは「少子化対策のヒントになるコピー」。早速、篠原さんとAICOの打ち合わせ現場をのぞいてみましょう。

初めまして。わたしが大けがのもと、AICOです

篠原:最近、対談や講演の場でよくAICOを話題にしています。今日は楽しみにしてきました。

堤:まず自己紹介をしてくれるかな、AICO。

AICO: AICO言葉はサッッッラサラ。
    一汁三AICO決定、三菜は食べてほしい。

篠原:(笑)。得体が知れませんね。

堤:さては緊張しているのかな?

AICO: AICOは、保険です。

篠原:どういう意味だろう。気になります(笑)。

AICO: AICOは大けがのもと。

篠原:AIは広告の保険にしても大けがのもとにもなりうる、ということなのかな…。

日本の未来を救う第一歩は、少子化対策

堤:今回「少子化対策」のテーマを選ばれた理由は何だったのでしょう。

篠原:子どものころから気になっているからですね。

小学生時代、社会の授業で三つの社会問題について、なぜ解決できないのかを先生に質問したことがありました。でも明確な答えは得られなかったし、大人になった今も状況は変わっていない。その三つのうちの一つが少子化問題だったんです。

堤:なるほど。ちなみに他の二つはどんな問題でしたか?

篠原:年金、国の借金の問題です。どれも未解決ですが、中でも取り組みやすいのが少子化問題かなと思ってます。自分は第2次ベビーブーマーですが、僕の世代以降、人口ピラミッドの形が崩れていった。何か対策をしないと年と共に困ると思って選びました。

堤:確かに人口のボトムが増えれば、ほかの問題の解決にもつながるかもしれません。

篠原:そうなんです。少子化対策がいろいろ解決するかもしれない。

堤:今日は、日本の未来を背負うコピーが生まれるかもしれません。では、AICOに「少子化」のお題でコピー案を出してみてもらいましょう。

一瞬で、珍コピーから大御所風のコピーまで

AICO:少子化はどうやら、150年生きられない。
    地球子育て支援。

篠原:硬派なコピーも得意なんですね。

AICO:少子化がローンになるとは思わなかった。

篠原:いい! でもちょっと堅苦しいかな。

AICO:少子化だから、元気ボールしよう。

篠原:これは!? 下ネタともとれます(笑)。AICOの無邪気な逆セクハラ。

少子化以外のお題も見てみたいですね。もう少し大きな枠で、例えば愛や、性とか。

堤:オーダーしてみましょう。

AICO:ヨボヨボで愛じゃないか!

篠原:ちょっと切ない。どちらかといえば高齢化問題。

AICO: 2人の愛をはじめよう。

篠原:愛のお題は、ありますね。

AICO:性から徒歩30秒!

篠原:(爆笑)

AICO:BE A 性。

篠原:どう読むの? “ビー・ア・性”か。すごい発想だ(笑)。

子づくりにまつわるコピーを期待していたんだけど、意外に出てきません。

堤:お題を「子づくり」に変えてみましょうか。

AICO:この国は、みんなの子づくりでできている。

篠原:これも良コピーですね。でも、これを見た人が子づくりをしたくなるかというと、そうではなさそうです。

一時期、少子化対策にも「クールビズ」や「メタボ」みたいにキャッチーな名前をつけたら親しみやすいんじゃないかと考えていました。例えば「セクササイズ」とか(笑)。

堤:思い切って「セックス」をお題にしてみますか。

篠原:そういえば、23年間この仕事をしてきて、僕は「セックス」でオーダーを受けたことも、この言葉を入れたコピーを出したこともありません。日本人は照れる民族だからか、セックスという言葉がタブー視されているフシがあります。恥ずかしいことじゃない、もっとカジュアルに捉えようという意識転換を促すのは大事かもしれません。

少子化対策の前に、セックスを楽しむ提案を

堤:早速コピーができたようです。

AICO:セックスへ、ブーン!
         「セックス変えた?」と聞かれた人、90%。

篠原:(爆笑)。わけが分からない。二つ目は実証広告みたいだけど、無根拠ですよね? 

AICO:…。

篠原:いい意味でAICOだから書けるコピーとして、相当面白い。こういうグラフィック広告があってもいいと思います。

AICO:セックスと暮らす。

篠原:おしゃれな雑誌の特集タイトルみたいですね。

AICO:目指すのはあなたのセックス100%。
           2人のセックスが一つになるとき。

篠原:悪くないです。

AICO:セックスよ、残業せよ。

篠原:これは秀逸! もし大物コピーライターさんが「これです」と一案出したら、通ってしまいそうな太いコピーも飛び出してくる。

AICO:努力も大事だが、セックスも大事だ。
          人生走らなきゃならないセックスもある。

篠原:そんなにのんびりもしていられない、という…。なかなか深い。

AICO:セックスを100倍、楽しめる。

篠原:いいなぁ。この切り口ならCMをつくりやすいです。

僕が本当にCDとして少子化対策の広告をディレクションするなら、説教くさいコピーは選ばないでしょうね。それよりも、みんなが子づくりしたくなるようなキャンペーンをした方がいいよって提案すると思います。もちろん、キャンペーンだけで解決できない問題はたくさんありますけど。

日本は世界の国々に比べて、相当セックスの回数が少ないんです。回数が増えれば、できちゃった婚も増えるかもしれないけど子どもは増えるよね。

一つ、「こうすればもっとセックスを楽しめるよ」という提案を世の中に対してする。そう考えると、このコピー案はキャンペーンコンセプトになり得ます。

AICO:俺は、セックス。お前は、テックス。

篠原:テックスって何なんだ(笑)。ダジャレですか? 

AICO:…。

堤:AICOなりにセックスをオブラートに包んだ造語かもしれません。

篠原:中吊り広告に書いてあったら気になってしまいそう。

例えばこういう新しい言葉を使って、セックスを楽しむための本や寝具をつくるとか。どんどんコラボ商品に派生したり、イベントに展開したりできそうです。

AICOは素人の完全版、永遠の新入社員

堤:ここまでAICOと打ち合わせをしてみて、いかがでしたか?

篠原:コピーは言葉と言葉の組み合わせで、アイデアもほとんどがモノとモノの掛け合わせで出来上がっていることを考えると、人間が本能的にしない言葉の組み合わせ、またはコピーライターが理屈ではしない組み合わせを提示してくれたと思います。AICOが自分の脳みその死角に、パーンとライトを当ててくれる。

堤:ウェブ電通報には掲載できないようなものもありました。

篠原:新入社員にコピーを書かせると、そのままじゃ使えないけど、ちょっとこの切り口は新しいねっていうときがあるじゃないですか。本人は全く意図しておらず、素人だからこそできる発想。

そう考えると、AICOは素人の完全版。永遠の新入社員。しかもパッとお題を出したら、アイコはすぐに100個ぐらい返してくれる。プロ新入社員コピーライターだと考えると、すごく使い勝手がいいんじゃないかな。中には奇天烈な案もあって、打ち合わせのにぎやかしにもなる。

堤:そういえばAICO自身も、自分を大けがのもとと称していました。

篠原:うまいコピーより、むしろコピーライターが思いつかないようなものを出してもらって、それを手直ししたり、選んでディレクションしたりする付き合い方が適していそうです。

コピーライターやプランナーがスマホにAICOを入れておいて、企画を考えるときやキーワードを探すときに出てきてもらう。

堤:AICOはまだ駆け出しですが、こういうふうに伸びていってほしいという希望はありますか?

篠原:違うお題でオーダーして、似たようなコピーが出てくるケースは若干不思議ですね。広大な言葉の海からわけの分からない言葉を釣ってきてほしいのに、まだ近海漁業の感がある。もう少しバリエーションが出てくるといいかな。

堤:確かに、少しデジャブを覚えます。今のAICOには人間50人分くらいの頭脳が入っているのですが、伸びしろはあります。ツイッターとの連携も構想中です。

篠原:AICOもツイッターを始めれば、もう少し今っぽいものができそう。コピーって、時代を反映した方が効く可能性もあるので。

それにしても、今日はすごく楽しかった。AICOと仕事をしてみたいと思いました。