2017年テレビ業界を振り返る No.5
フェイクニュースのまん延を阻止できるか?マスメディアの責任と課題
2018/01/30
フェイクニュースとは、虚偽の情報で作られたニュースを指し、ネット上で発信、とりわけSNS上で拡散されることが危惧されています。英国のEU離脱やトランプ氏の大統領当選には、フェイクニュースの影響もあったのではないかといわれています。
2016年に表面化し、サイトの閉鎖にまで至ったWELQ問題における、そもそもの医療専門家の監修の欠如、記事の実質的な無断転載(著作権の問題)など、従来はまとめサイト、キュレーションサイトのあり方が「フェイクニュース」の典型であったかもしれません。しかし、17年の風景としてはマスメディアの報道に対して、正誤の交ざった批評・批判が「フェイクニュース」の温床になり、ひいては「マスメディアこそがフェイクニュースの発信源」のような主張が、生活者が普通に目にするようなメジャーなサイトでも流通していることを軽視できないように思うのです。
人の心理は不思議なもので、「○○には何かウラがあるのでは?」と疑う気持ちがあれば、さまざまな情報を探し、検証し、真実にたどり着けそうなものですが、疑った気持ちに応える「心地よい答え」に出合うと、そこで探求心に決着がついてしまうのでしょう。
この状況を踏まえると、もちろん、何事もきっぱり白黒つくものではありませんが、視聴者(生活者)の疑いを解けるような専門家の分かりやすい解説、証言などが、今以上にテレビ・マスメディアには求められそうです。それを突き詰めていけば、1980年代に番組形式に登場し、一般化した「コメンテーター」の存在・役割の見直しであったり、転じて、いわゆるワイドショーや情報番組の典型的な作りを変えるべき時に直面しているということかもしれません。
テレビ広告の取引指標が変わることや、テレビとネットの垣根が以前にも増して曖昧になる中で打たれている施策の数々は、“次にどうするか”を決めるための布石に違いありません。ビデオリサーチとしても、それに応じたデータの整備であったり、システムやサービスの提供であったりを18年にはこれまで以上に進めていく必要があると認識しています。
「申酉騒ぐ」を経て、2018年は「戌笑う」。皆さまにおかれまして、当社においても、置いた布石のなにがしかの成果を得て、「笑った1年」になることを願ってやみません。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
この記事は2017年12月に発刊されたビデオリサーチのVR Digestを基に編集したものです。