loading...

LGBTQ+調査 2020No.2

2021/06/25

一番多いのは「知識ある他人事層」~LGBTQ+に対するストレート層のクラスター分析

ダイバーシティ&インクルージョン領域(各人の多様な個性を尊重し、すべての人の社会参加を目指す考え方)の研究を行っている電通ダイバーシティ・ラボでは、2020年12月にLGBTQ+を含む性的少数者=セクシュアル・マイノリティに関する大規模調査「LGBTQ+調査2020」を実施しました。

本調査では、ストレート層(異性愛者であり、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する人と定義)のLGBTQ+に対する考えを把握することで、効果的な理解促進の啓発アプローチにつなげるため、初めての試みとしてストレート層のクラスター分析を実施しました。今回は、このクラスター分析の結果を紹介します。

分析方法については、20~59歳のストレート層5,685人に対し、LGBTQ+に対する意識や知識を問う数十問の質問を用意。得られた回答を、課題意識、配慮意識、生理的嫌悪、社会影響懸念、知識の5つの因子で分析し、6つのクラスターにグループ分けしました。

・課題意識:「当事者に対する差別を改善するべきだと思う」といった、LGBTQ+にまつわる課題を改善すべきというもの。

・配慮意識:「目の前で誰かが差別的な言動をとったときは、話題を変えたり、注意をする」といった配慮を行っているか。

・生理的嫌悪:「同性愛やトランスジェンダーは生理的に嫌だと感じてしまう」といった性的嫌悪感があるかという因子。

・社会影響懸念:「LGBTQ+が増えると日本の少子化につながる」「子供に悪影響がある」といった懸念・誤解の因子。

・知識:LGBTQ+にまつわる知識

6つのクラスターを発表!最も多いのは「知識ある他人事層」

6つのクラスターに分けた結果がこちら。色の面積が大きいほど、割合が多いということになります。

LGBTQ+調査2020
・アクティブサポーター層(29.4%):課題意識が高く、積極的にサポートする姿勢がある。身近な当事者や、海外コンテンツを通して理解を深めた。

・天然フレンドリー層(9.2%) :知識のスコアは低いが、課題意識や配慮意識が比較的高く、ナチュラルにオープンマインド。

・知識ある他人事層(34.1%):知識はあるが、当事者が身近にいないなど、課題感を覚えるきっかけがない。現状維持派。

・誤解流され層(16.2%):少子化といった社会への悪影響を懸念するなど、誤解が多いため一見批判的だが、もともと人権意識はある。

・敬遠回避層(5.4%):積極的に批判はしないが、配慮意識が乏しく関わりを避ける。知識はある程度あっても、課題と感じていない。

・批判アンチ層(5.7%) :生理的嫌悪、社会への影響懸念が著しく高い。人種差別や環境問題などの社会課題に対しても興味を持たない。

今まで、日本は表立った批判層は少ないものの、無関心の人が多いのではと言われていましたが、今回のクラスター分析の特徴からも、同じような傾向が明らかになりました。では、それぞれの層の特徴を見ていきましょう。

①アクティブサポーター層(29.4%)“みんなが生きやすい社会を。世の中変わらなきゃ! ”

配慮意識はもちろん、知識や課題意識をしっかりと持っていることが特徴。後ほど紹介しますが、身近に当事者が多かったり、海外コンテンツを見て意識が変わったり、大きなきっかけによって理解を深めた層です。

女性の比率が69.1%と高く、若年層の割合が高くなっています。「多様なセクシュアリティの人たちも、基本的人権が尊重され、平等に扱われるようにする必要がある」「当事者の人たちへの差別は今も存在するので改善するべき」といった課題意識に対するスコアがとても高い傾向に。

また、この層は、Black Lives Matterといった人権課題や、ジェンダー課題にも意識が高く、全体に比べて、人とのつながりを大切にしていることが特徴としてあげられます。

LGBTQ+調査2020


本調査は、調査回答者が各年代で均等ではなく、20代は回答数が全体的に少なくなっています。


②天然フレンドリー層(9.2%) “人類みなファミリー!個性の尊重は大事” 

知識のスコアは低いのですが、課題意識や配慮意識は高くなっています。この層も女性の比率が69.1%と高く、20代と40代の割合が高くなっています。

特徴としては、例えば「最近は日本でも、同性どうしのカップルが婚姻できるようになってきた」かどうか、知識を問う質問に対して、パートナーシップ制度と混同してか、「婚姻できるようになってきた」と答えてしまう人が多いなど、正しい知識は持っていない人が多い傾向にあります。

ただ、「誰かが差別的な言動をとったときは、話題を変えたり、注意をする」「正しく理解できるよう、情報収集や、当事者の声をしっかり聞くようにしている」といった配慮をしている人が比較的多く、課題意識も高いのが特徴です。

また、人とのつながりについて、「人との関わりを維持するために、時間やお金をかけることは厭わない」「新しい人間関係を積極的に増やしたいと思う」という回答が平均に比べてとても高く、新しい人とのつながりにも積極的な層だと言えます。

LGBTQ+調査2020

 

③知識ある他人事層(34.1%) “聞いたことあるけど、自分は困らないし、今のままでもいいかな” 

今回の調査で最も多い回答となった層です。知識のスコアは高い一方で、課題意識、配慮意識は高くありません。後ほど紹介しますが、「当事者が身近にいない」と回答した人が平均よりも多く、課題感を感じるきっかけがなかったため他人事としてとらえている層と言えます。

全体的に新しい人間関係を積極的に増やしたいと思う割合が少ないなど、人付き合いがあまりアクティブではない傾向がややあります。このLGBTQ+のトピックをどこか他人事ととらえてしまっている層に、当事者が抱える課題感を伝え、啓発していくことが平等な社会実現への一歩となるかもしれません。

LGBTQ+調査2020
 

④誤解流され層(16.2%) “人権は大事だけど、LGBTって日本に悪影響あるのでは?” 

この層の特徴は、「少子化につながるのでは」といった懸念・誤解から、社会への影響を懸念するなど、一見批判的なスコアが高く見えがちですが、もともと人権意識はあり、最低限の配慮はできる層です。

「LGBTQ+が増えると日本の少子化につながる」「公の場で話題にしすぎると、子どもに悪影響がある」といった誤解をしている一方、「彼氏、彼女ではなく、パートナーという言葉を使うようにしている」「自分の身近にいる人が、当事者かもしれないと思うようにしている」といった質問のスコアは平均より高く、配慮意識を持っています。

また、「普通に異性と結婚して、子どもを産むのが、正しいあり方だと思う」「可能であれば、将来結婚したいと思っている」という回答をした人が全体に比べとても多い傾向となっており、「結婚して子どもを持つべき」という考え方が強いようです。

LGBTQ+調査2020

 

⑤敬遠回避層(5.4%)面倒そう…。関わらないでおこう”

知識は平均程度あるにもかかわらず、課題意識が著しく低い層で、積極的には批判はしないものの、配慮意識もなく、関わりを避ける傾向があります。

男性の比率が67.1%と高く、特徴としては、「社会全般において、自分の人権が守られていると感じる」「今住んでいる都道府県・市町村は住みやすいと感じる」という質問についてのスコアがとても低く、自分自身も生きづらさを感じていることが大きな傾向としてあります。

また、「人とのつながりは大切だと思う」「自分らしくいられるコミュニティがある」といった人間関係に関する質問のスコアも低く、人間関係に消極的であることが分かりました。

LGBTQ+調査2020

 

⑥批判アンチ層(5.7%)“理解できない!認めない!”

社会影響懸念のスコア、生理的嫌悪のスコアが顕著に高くなっています。男性比率が80.9%と圧倒的に高く、全体に比べ50代が多い傾向です。そのためか、管理職、総合職の正社員の比率が全体に比べやや多くなっています。

この層は、社会的影響への懸念が強く、同性愛やトランスジェンダーは生理的に嫌だと感じてしまう層です。価値観としては、人権問題や、気候変動などの環境問題についても著しく関心が低く、「家族や職場以外に、帰属していると感じるコミュニティ」「自分らしくいられるコミュニティがある」といった項目も著しく低いことから、人間関係に消極的、コミュニティに属さないといった傾向があることが分かりました。

LGBTQ+調査2020

 

アクティブサポーターとなる要因は?

ここでは、LGBTQ+に対する課題意識が高く、積極的にサポートする姿勢を持つ「アクティブサポーター層」について、どういった要因がこの層を生んでいるのか、他のクラスターと比較して分析した結果を紹介します。まず、分析の結果から3つのポイントが見えてきました。

1点目は、「当事者が家族、友人、知人にいるか」という問いをクラスター間で比較すると、「アクティブサポーター層」には、当事者が身近にいる人が比較的多く、「批判アンチ層」「知識ある他人事層」は比較的少ないことが分かりました。身近に当事者がいることで、より自分事として考え、課題意識が高くなることが傾向としてうかがえます。

2点目は、留学や海外居住経験、外国人の友人がいるなど、「アクティブサポーター層」には海外経験が豊富な人が多く、「批判アンチ層」は海外経験が少ない傾向があります。LGBTQ+についての考えが進んでいる国の方と触れるきっかけがあったことも要因かもしれませんが、留学、居住経験により、自らがマイノリティの立場となることで、相手の声を聞くことの重要性や、配慮意識が高まるのではないかと推測できます。

LGBTQ+調査2020

3点目は、海外ドラマや映画などのコンテンツをよく見るかという質問をしたところ、「アクティブサポーター層」は海外コンテンツによく触れており、逆に「批判アンチ層」「敬遠回避層」「知識ある他人事層」は比較的少ないという結果となりました。LGBTQ+に対する考えが大きく変わったきっかけを聞いたところ、ドラマ・映画・ドキュメンタリーなどのメディア・コンテンツの影響が最も多い回答となりましたが、LGBTQ+が当たり前の存在として描かれる海外コンテンツの影響は特に大きいようです。

LGBTQ+調査2020

次に、環境課題、男女平等といったジェンダー課題、Black Lives Matterなどの人権問題への関心を聞いたところ、LGBTQ+への課題意識が高い人ほど、他の社会課題に対する意識も高いことが分かりました。

LGBTQ+調査2020

最後に、同性婚の法制化について各クラスターの考えを比較します。調査対象全体では82.2%の人が「賛成、どちらかというと賛成」と回答しました。それぞれのクラスターが同性婚の法制化についてどう考えているかを比較すると、「アクティブサポーター層」「天然フレンドリー層」が最も多く賛成している層になりましたが、その2つの層だけでなく、「批判アンチ層」を除くすべての層が、過半数を上回る数で法制化に賛成していることが分かりました。関心が低い層、誤解している層でさえも、同性婚の法制化をするべきという人が多いことが分かりました。

LGBTQ+調査2020

LGBTQ+の当事者の方が住みやすい社会にするためには、ストレート層の意識改革がとても重要だと言えます。ただ、ストレート層といっても考えはさまざまであるため、今回ストレート層のクラスター分析を行ったことで、「知識ある他人事層」「誤解流され層」など、それぞれのバックグラウンドから、それぞれの考えを持っていることが明らかとなりました。

次回は、各クラスターについての考察を続け、効果的なアプローチについて考えます。

<電通LGBTQ+調査2020概要>
・ 調査対象:20~59歳の個人6,240人(LGBTQ+層該当者555人/ストレート層該当者5,685人)
・ 調査対象エリア:全国
・ 調査時期:2020年12月17~18日
・ 調査方法:インターネット調査

※ LGBTQ+層割合、人口構成比に合わせて、都道府県、性別、年代(20~30代/40代~50代区切り)でウェイトバックをかけています。

twitterリンク
新規CTA
新規CTA