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LGBTQ+調査 2020No.1

LGBTQ+の「Q+」の存在を知っていますか?~最新調査レポート

2021/06/03

※調査結果修正のお知らせ(2024.2.20.)
記事中にある下記の調査結果について誤りがございました。修正の上、お詫び申し上げます。

【該当調査】
「LGBTとはセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつということを知っている。」という質問に対する、凡例と2020年の回答結果の割合

【誤】
「知っている」43.3%、「なんとなく知っている」36.6%、「聞いたことはあるがよく知らない」12.0%、「知らない」7.9%

【正】
「そう思う」35.0%、「ややそう思う」34.7%、「あまりそう思わない」16.3%、「そう思わない」13.9%​

今年3月17日、札幌地裁で、同性同士の結婚を認めない現行制度は「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反していると認定。同性婚を巡る訴訟で初めて違憲判断を示すという、歴史的な判決がありました。

また、LGBTQ+の人々に対しての不適切な発言に対し、抗議が起こることも珍しくなくなり、より平等な社会への関心が高まってきていることを感じます。

ダイバーシティ&インクルージョン領域(各人の多様な個性を尊重し、全ての人の社会参加を目指す考え方)の研究を行っている電通ダイバーシティ・ラボでは、2012年からLGBTを含む性的少数者=セクシュアル・マイノリティーに関する大規模調査「LGBT調査」をスタート。

LGBTに対する認知が浸透してきたことを踏まえ、今年4月に発表した調査では、「LGBTQ+調査」と名称を改め、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)だけでなく、多様なセクシュアリティー(Q+)の内訳についても詳細な分析を行いました。

なお、(Q)は、クエスチョニング(Questioning)のことで、自身の性自認や性的指向が定まっていない、もしくは意図的に定めていないセクシュアリティーを指します。(+)は、他にもさまざまなセクシュアリティーがあることを表しています。

本連載では、最新の世の中の動向や事例とともに調査結果を紹介。初回は、LGBT以外の多様な性にも注目し、LGBTQ+層の各人々の割合や、最新の世論、カミングアウトの状況などを中心にお伝えします。

ポイント①:LGBTQ+層の割合は8.9%。LGBT以外の多様なセクシュアリティーが半数近くを占める。

本調査では、セクシュアリティーを「出生時に割り当てられた性」(出生性)、「本人が認識する性」(性自認)、「好きになる相手の性」(性的指向)の3つの組み合わせで分類し、ストレート層(異性愛者であり、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する人)以外をLGBTQ+層と定義しています。2020年末に行った調査の結果、LGBTQ+層に該当する人は2018年の調査と変わらず、8.9%となりました。

LGBTという言葉自体の認知が低かった2015年(7.6%)から、2018年は1.3%微増しましたが、LGBTQ+に関する情報が増え、自分のセクシュアリティーに向き合うことで微増したと推測しています。情報が浸透した昨今、8.9%という数字で落ち着いたのではないかと考えられます。

また今回、「出生性×性自認」「性自認×性的指向」それぞれの組み合わせにより、多様なセクシュアリティーの主な内訳を分析しました。

「出生性×性自認」ではトランスジェンダー(0.64%)のほか、エックスジェンダー(性自認が男性・女性どちらとも感じる、どちらとも感じない)が1.20%。性自認のクエスチョニング(性自認が決められない、分からない)が0.62%でした。

「性自認×性的指向」では、ゲイ(1.94%)、レズビアン(1.33%)のほか、バイセクシュアル/パンセクシュアル(好きになる相手が男女変わることがある・一定ではない、男女どちらも好きになる、相手の性別は問わない)が2.94%。アセクシュアル/アロマンティック(他人に恋愛感情を抱かない)が0.81%、性的指向のクエスチョニング(性的指向が決められない、分からない)が1.63%など、多様なセクシュアリティーの在り方が分かりました。

LGBTQ+調査2020
MtF:「Male to Female(男性から女性へ)」の略称。「出生時に割り当てられた性」が男性で、「本人が認識する性」が女性である人。FtM:「Female to Male(女性から男性へ)」の略称。「出生時に割り当てられた性」が女性で、「本人が認識する性」が男性である人。※回答選択肢の便宜上、上記に分類していますが、上記以外にも多様なセクシュアリティーがあります。また、トランスジェンダーでパンセクシュアルなど、「出生性×性自認」「性自認×性的指向」両方に含まれる人々がいる可能性があり、足し上げても8.9%にならないのはこのためです。
 


ポイント②:「LGBT」という言葉の認知度は約70%。その一方で「Q+」の多様性は認知不足

続いて、LGBTという言葉の認知度についてです。2015年調査の37.6%から、2018年調査では68.5%と大幅上昇しました。今回の2020年調査では69.8%とほぼ変わらない結果となっています。

ニュースやドキュメンタリーで扱われることが増えており、映画や本の力も大きく、海外だけでなく、日本の作品も多数ありました。トランスジェンダーが主人公の映画「ミッドナイトスワン」が日本アカデミー賞2冠に輝いたり、本屋大賞に輝いた「52ヘルツのクジラたち」でもテーマの一つとなっていたりと、LGBTQ+の人々について扱うものが増えています。今後さらに、日本での浸透が進むと予想されます。

LGBTQ+調査2020
その一方、L(レズビアン)・G(ゲイ)・B(バイセクシュアル)・T(トランスジェンダー)以外の多様なセクシュアリティーについては、約8割の人が言葉自体も聞いたことがないと回答。半数近く存在するQ+についての認知はまだまだ進んでいないことが分かりました。

多様なセクシュアリティーについて考えるとき、L/G/B/T という枠で考えるのではなく、性自認が女性とも男性とも感じる・感じないエックスジェンダー、誰にも性的欲求、恋愛感情を抱かないアセクシュアル/アロマンティックなど、それぞれ抱える生きづらさは異なるため、まずは正しい理解と配慮が求められます。

LGBTQ+調査2020

ポイント③:約89%の人が「性の多様性」を学校教育で教えるべきと回答

学校教育でも、大きな変化が起きようとしています。女子はスカート、男子はズボンという固定概念に縛られず、男女問わず着られる「ジェンダーレス制服」を導入する学校が増えてきていることも話題になっています。大手学生服メーカー「トンボ」によると、女子生徒用のスラックスを採用している中学校や高校は、全国で約1000校と、3年前のおよそ2.7倍に増えているそうです。

学校教育でLGBTQ+をはじめとする「性の多様性」について教えるべきかを聞いたところ、「教えるべき」「できれば教えるべき」と回答した人は88.7%と大多数である結果となりました。一方で「教えてもらったことがある」と回答した人は10.4%にとどまり、大きなギャップがあることが分かりました。ただ、2015 年 4 月、文部科学省からセクシュアル・マイノリティーの子どもへ配慮を求める通知が全国の小・中学校、高校などへ出され、学校教育に盛り込まれる学校も増えているようです。

LGBTQ+調査2020

ポイント④:誰にもカミングアウトしていない人は、やや減少。母親、友人へのカミングアウトが進む

続いて、LGBTQ+当事者であることをカミングアウトしているかを聞いたところ、「誰にもカミングアウトしていない」という人は、57.4%となりました。2018年の調査に比べると、「誰にもカミングアウトしていない」人は8.3ポイント減少しており、ややカミングアウトが進んだようです。カミングアウトをした相手で見ると、母親が9.0%から12.9%に増加したほか、男性の友人、女性の友人、LGBTQ+の友人のスコアがそれぞれ増加しており、母親と友人へのカミングアウトが進んでいます。

LGBTQ+調査2020
その一方、「以前に比べて、近年周囲の人にカミングアウトしやすい環境になっていると感じますか」という問いに対しては、前回とほぼ変わらず、70.2%の当事者が、「カミングアウトしやすい環境にはなっていない」と回答。環境が改善されたとは、決して言えないようです。

ただ、パートナーシップ制度(地方自治体が、二人のパートナーシップが婚姻と同等であると承認する制度)がある自治体に住んでいる当事者層のみに限定して同じ質問をした場合、カミングアウトしやすい環境にはなっていないと回答したのは、47.7%にとどまり、過半数の人がカミングアウトしやすい環境になったと回答しました。100以上の自治体まで広がりを見せているパートナーシップ制度ですが、これが、カミングアウトしやすい環境づくりに寄与していることが推測されます。

LGBTQ+調査2020


ポイント⑤:親にカミングアウトした当事者の約18%は、「未だに親に受け入れられてはいない、完全に拒否されている」

さらに、「LGBTQ+当事者であると気づいたとき、自分自身はどう思いましたか。また、カミングアウトをした際、親はどのような反応を示しましたか」の質問をしたところ、18.4%の人が自分でもまだ受け入れられていないと回答。さらに、親にカミングアウトした人の中で、「未だに受け入れられてはいない」「完全に拒否されている」人は、父親では18.7%、母親では19.2%  と、約2割程度いるという、厳しい現状が浮き彫りとなりました。

LGBTQ+調査2020
電通ダイバーシティ・ラボが2012年に調査を開始してから約9年。LGBTに対する認知が浸透し、同性婚の法制化の議論も進んできていますが、Q+に当たる多様なセクシュアリティーの認知や正しい理解の促進、また、当事者が安心してカミングアウトをすることができる環境づくりも取り組むべき課題と言えるのではないでしょうか。
 

<事前スクリーニング調査概要>
・ 調査対象:20~59歳の個人60,000人
・ 調査対象エリア:全国
・ 調査時期:2020年12月17~18日
・ 調査方法:インターネット調査

<電通LGBTQ+調査2020概要>
・ 調査対象:20~59歳の個人6,240人(LGBTQ+層該当者555人/ストレート層該当者5,685人)
・ 調査対象エリア:全国
・ 調査時期:2020年12月17~18日
・ 調査方法:インターネット調査

※ LGBTQ+層割合、人口構成比に合わせて、都道府県、性別、年代(20~30代/40代~50代区切り)でウェイトバックをかけています。


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