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うつくしいくらしかた研究所レポートNo.4

お正月が失われる?Well-beingと年中行事の関係性とは

2022/12/12

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日本人が古くから日々の暮らしの中で実践してきたことや、暮らしの中にあった考え方に改めて注目し、現代にも受容されうる形でさまざまな活動を通じて提案する、うつくしいくらしかた研究所(※)が、「うつくしいくらしかた」とはなにかを考えていく本連載。

第4回となる本記事では、ライフスタイルが変化する中でも「自然に寄り添う」きっかけとなり、Well-beingの向上、ひいては「うつくしいくらしかた」につながる可能性のある日本の文化「年中行事」の実態について調べてみることにしました。

日本には五節句と呼ばれる正月7日の「人日(じんじつ)」、3月3日の「上巳(じょうし)」、5月5日の「 端午(たんご)」、7月7日の「七夕(しきせち)」、9月9日の「重陽(ちょうよう)」があり、他にもさまざまな年中行事があります。これらは季節の移ろいに合わせ、人間と自然が対話し、その時々の自然の力を生活に取り入れる形で、各様式が地域や家庭で受け継がれ発展してきました。こうした年中行事が今どれくらい知られ、実施され、継承されようとしているのか。生活者の意識、実態をレポートします。

※うつくしいくらしかた研究所についてはこちら


年代差のある行事の認知。20代では14%が「正月」を知らない!?

五節句を含む18の行事の認知についてたずねると、最も知られているのは「正月」で92.0%、続いて「大みそか」が91.3%、「節分」「お盆」の90.5%となりました。年代別に見てみると、全体的に若年層での認知率が低く、20代の14%が「正月を知らない」という結果になりました。

また、年代差が顕著な行事として、「小正月」「桃の節句」「八十八夜」「端午の節句」「正月事始め」があり、70代と20代では30%以上もの差が見られました。子どもの頃、多くの人が親しんだことがあるであろう「桃の節句」「端午の節句」は、20代ではそれぞれ57.0%、50.0%の認知にとどまりました。「ひなまつり」「こどもの日」と聞けばイメージがわいたのかもしれませんが、「節句」としての行事認知が低いことが伺えます。

五節句の一つでもある「重陽の節句」については、認知率が全体でも17.3%となり、他にも「夏越(なごし)の大祓(おおはらえ)」「八朔(はっさく)」「卯月八日(うづきようか)」が2割以下の認知率になるなど、ほとんど知られていない行事もありました。

お正月といえば30年ほど前は金融機関だけでなく、商店も閉店し、大みそかはあわただしくも静かに新しい年を迎える風習があり、40代以上では当たり前に認知されている「正月」。現代では多くの商店やさまざまな機関も営業していて、20代やZ世代にとっては「正月」も日常と変わらなくなり、行事の認識が薄れつつあるのかもしれません。 

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「正月」でも実践度は約5割。フルタイムワーカーには実践が厳しい現実。

「正月」にはおせち料理に鏡餅、門松やしめ飾り、「小正月」には小豆がゆや餅花など、行事にはその時々に自然から得られるものを工夫して作った食事や飾り付けがあります。そのような行事食や飾り付けは、どの程度実践されているのかたずねたところ、行事食と飾り付けの両者において最も実践度が高いのは「正月」で行事食51.8%、飾り付け38.8%となりました。“行事食”の実践度が次に高いのは「大みそか」で38.3%、“飾り付け”においては「お盆」が13.2%と、いずれも「正月」の実践率とは大きく離れた結果となり、認知の高い行事でも、実践されていない習わしが多いことがわかりました。

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また、年代別に見てみると、認知と同様、全体的に中・高年層より若年層の方が低い実践率となりました。職業別に見ると、専業主婦(主夫)、パートタイムでの実践率が高く、フルタイムワーカーは、それら職業に比べ低い結果となっています。家に関われる時間の長さが行事の実践に大きく影響していると考えられます。コロナ禍により在宅勤務をする人が増えることで、行事の実践にもつながるかもしれません。家族の形態や働き方が変わっていく中で、どのような形で生活に行事を取り入れられるのか、考えていく必要がありそうです。

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継承意向は「正月」でも約4割。年中行事は継承し続けられるのか!?

続いて、各行事について「大事にして後世に受け継ぎたいと思う」かどうか、継承意向をたずねました。実践度が最も高い「正月」の継承意向が最も高くなりましたが、40.7%と過半数に満たない結果でした。

年代別では、30代が最も低く30.0%、続いて20代の36.0%となり、若年層での継承意向が低いことがわかります。職業別では、最も実践率の高かった専業主婦(主夫)での継承意向は55.7%と、他の職業と比較して高いですが、それでも過半数を少し超えた程度の数値となりました。

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実践度が高いと幸福度も高い。年中行事でWell-being向上へ

最後に、幸福度と年中行事の実践の関係について触れてみましょう。

最も実践度が高かった正月を例にとって見てみると、正月の行事食を実践する人は実践していない人よりも幸福度が17.9%高いことがわかりました。飾り付けの実践や、他の行事でも同様の傾向が見られており、年中行事を実践している人は、そうでない人より幸福度が高いといえます。ある程度、心に余裕のある人が行事を楽しんでいるのだと容易に推測されます。

一方、行事を実践することが幸福度を高めている可能性も考えられます。実際、私たちうつくしいくらしかた研究所が行っていた年中行事を楽しむイベントでも、参加者からは、「普段は忙しくて行事を実践することなく過ごしていたが、改めて行事を知り実践することで気持ちが穏やかになった」といった声が聞かれ、みなさんが笑顔で帰路につかれたことが印象的です。

年中行事は、私たちの生活を整える節目ともいえます。忙しい毎日の中でも、ふと立ち止まって自然に向き合うことで私たちの健やかな生活もつくられていくのではないでしょうか。

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今回の調査結果から、年中行事は認知されていても、生活者全体の約半数(行事によっては半数以下)しか実践されておらず、フルタイムワーカーの共働きの家庭が増える中、年中行事が継承されずに廃れていってしまう危険性があることがわかりました。一方で、忙しい中でも実践をすることで、幸福感が高まる可能性も見いだせ、年中行事を実践する大切さにも光をあてていく価値があることがうかがえます。

「正月」のおせち料理、正月飾りには、一つ一つ意味があり願いが込められています。ただそれらは、単純な願掛けではなく、先人たちがその土地でその時の旬の食材や植物に向き合い、それらが持つ力を見いだし、自分たちの生活に取り入れる知恵や工夫を重ねて受け継がれてきたものです。

その自然に向かう姿勢、それらを生活に取り入れる工夫は、自分の生活を整えるのみならず、サステナブルな社会を構築していくうえでも大切なことであり、受け継いでいかなければならないものではないでしょうか。

年中行事はその家々のスタイルに合わせて様式や形を変えても、実践することで年中行事の意味を知り、楽しさを味わうことで後世に伝えていけるものだと思います。
このまま年中行事が廃れていくのを傍観するのか、あるいは、長年継承されてきた行事の中に潜む現代的な価値を見いだすのか。年中行事のイベントから笑顔で帰られた参加者を目の当たりにしてきた私たちは、後者に取り組むことに可能性を感じています。

家族の形が変わり、コロナ禍で新しいライフスタイルも生まれている今、これからの時代にもフィットする年中行事のあり方を提案していきたいと思います。

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年中行事イベントの様子

【調査概要】
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:全国の20歳~79歳 男女600サンプル
・調査実施:電通マクロミルインサイト
・調査時期:2021年12月3日〜6日


うつくしいくらしかた研究所
日本人が古くから日々の暮らしの中で実践してきたことや、暮らしの中にあった考え方に改めて注目し、 「自然に寄り添う」「不便や手間を厭わず、プロセスや姿勢をたいせつにする」「個人の知恵や技を高める」といった「うつくしいくらしかた」を、現代にも受容されうるかたちでさまざまな活動を通じて提案しています。「七十二候」に沿った旬の生活文化を紹介・提案する暦アプリ「くらしのこよみ」は累計77万ダウンロード、書籍「くらしのこよみ」は1万部のロングセラーとなっています。https://www.kurashikata.com/
「くらしのこよみ」のアプリはこちらから。https://www.kurashikata.com/app/
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