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うつくしいくらしかた研究所レポートNo.3

「うつくしいくらしかた」が導く、自然に向き合うWell-being

2022/11/07

日本人が古くから日々の暮らしの中で実践してきたことや、暮らしの中にあった考え方に改めて注目し、現代にも受容されうるかたちでさまざまな活動を通じて提案する、うつくしいくらしかた研究所(※)が、「うつくしいくらしかた」とはなにかを考えていく本連載。

世界的なパンデミックを経験し、私たちのライフスタイルは、この1、2年で大きく変化しました。第3回となる本記事では、そのような中で今日の生活にある「うつくしいくらしかた」の実態はどうなっているのかを調べることにしました。

「うつくしいくらしかた」のとらえ方はさまざまありますが、実際に「うつくしいくらしかた」に対してどのようなことをイメージするか、自由想起のアンケートをとったところ、「丁寧に暮らす」「自然を感じる(配慮する)」「シンプル」という3つの大きなキーワードでくくることができました。

そこで「うつくしいくらしかた」の構成要素の1つである「丁寧に暮らす」ことについて、調査結果をもとに生活者の意識や実態、受容性などをレポートします。

※うつくしいくらしかた研究所についてはこちら

 

「丁寧な暮らし」への関心層は半数以上

まず、「丁寧な暮らし」に対する意識・認識についてたずねると、「実践していると思っている人」は34.8%となり、3人に1人は丁寧な暮らしをしている認識があるようです。さらに残りの「実践している認識はない」と回答した65.2%のうち「丁寧な暮らしを心がけたいと思っている人」は30.9%で全体の20.2%にあたります。丁寧な暮らしの実践者と意向者を合わせると全体の半数を超える結果となり、「丁寧な暮らし」への高い関心があることがわかりました。

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「丁寧な暮らしを実践していると思っている人」はどのような人なのでしょうか。ここからは、その特徴をみていきます。

「丁寧な暮らしを実践している人」はモノを長く使用し、季節を楽しむライフスタイルの傾向

普段の生活意識や価値観をたずねると、「丁寧な暮らしを実践している」人では、「自分に合う良いと思ったものを長く使いたい」(90.9%)「日本の季節や自然の移ろいを楽しみたい」(86.1%)などの意識が高いことがわかりました。実際に旬を意識した食材購入や季節の花を楽しんでいる割合なども高くなっており、日々の生活の中で季節を楽しんでいる様子がうかがえます。

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「うちわ・扇子」「やかん」「ほうき」など電化製品に頼らない生活も

家庭における生活道具の使用状況についてたずねると、「丁寧な暮らしを実践している」人は掃除機や炊飯器などの電化製品は使用しつつも、「うちわ・扇子」(81.8%)「やかん」「ほうき」(75.6%)などの利用率も高くなっています。便利なものに頼りすぎず、手間暇をかけ、環境にも配慮された生活を送っていることがうかがえます。

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「丁寧な暮らし」は、穏やかで幸せな日々をもたらす

「丁寧な暮らしを実践している人」に、実践理由を聞いてみたところ、「穏やかな気持ちになるから」が64.6%で最も高く、「暮らしやすくなる」「豊かな人生になる」と続き、日々の精神的な効用をもとめて「丁寧な暮らし」を実践していることがわかりました。

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特筆すべきは、「丁寧な暮らし」は、昨今注目されている「環境に配慮した暮らし」ではあるものの、「地球環境に良いから」という理由は28.7%にとどまっているという点です。環境問題を意識して「丁寧な暮らし」をしているというよりも、自然体で自らのために進んで「丁寧な暮らし」をしていることが、結果的に環境にも配慮することになっているといえそうです。

また、「丁寧な暮らしを実践している人」の幸福度(「今、とても幸せだと思う」「比較的幸せなほうだと思う」の合計)は77.0%と高く、トップボックスの「今、とても幸せ」の割合は、実践している人では18.7%、していない人では6.4%と、約3倍の差がありました。「丁寧な暮らし」をすることが、精神的により豊かで幸せな暮らしにつながっている可能性がうかがえます。

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半世紀前は多くの時間が費やされていた家事仕事が、電化製品などの普及により簡便になった一方で、それらに頼らず手間をかけることが、楽しさや豊かさを提供しているのかもしれません。

20~30代女性には、具体的な“暮らしかた”の提案が効果的?!

最後に、性別・年代による特徴をみてみましょう。

「丁寧な暮らしを心掛けたいと思っている人」(「とてもそう思う」「ややそう思う」の合計)は女性の20代で46.0%、30代では44.0%となっており、全体の52.8%に比べてやや低い結果になりました。
一方で、女性20代・30代では、今は実践できないが、やってみたいこととして、「季節の花を買ってきて飾る」「家庭菜園で料理に使うハーブや薬草を育てる」「ドレッシングを手作りする」「風鈴で涼む」という項目が、他世代よりも高い傾向にありました。この世代の人たちは、「丁寧な暮らし」という漠然としたイメージでは反応しないけれども、具体的な“生活文化”や“暮らしかた”を提案していくことで、興味をもち行動につながるのかもしれません。

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今回の調査結果全体からみえてきたポイントとして、昨今、社会ではサステナブルな暮らしやWell-beingの向上が求められていますが、無理のない範囲で楽しくできる「丁寧な暮らし」が、社会課題の解決に寄与する可能性があることがうかがえました。サステナブルな暮らしの必要性だけでなく、無理なく楽しめる「丁寧な暮らし」をできることから始めたり、学んだりする機会を提供していくことが求められているのではないでしょうか。

次回は、その「丁寧な暮らし」のきっかけともなりうる年中行事の実態についてレポートします。季節の移ろいに合わせ、人間と自然が対話し、その様式が地域や家庭で受け継がれ発展してきた年中行事。今どの程度の人が実践しているのかを調査をもとにお伝えしていきます。


【調査概要】
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:全国の20~79歳 男女600サンプル
・調査実施:電通マクロミルインサイト
・調査時期:2021年12月3〜6日


うつくしいくらしかた研究所
日本人が古くから日々の暮らしの中で実践してきたことや、暮らしの中にあった考え方に改めて注目し、「自然に寄り添う」「不便や手間を厭(いと)わず、プロセスや姿勢をたいせつにする」「個人の知恵や技を高める」といった「うつくしいくらしかた」を、現代にも受容されうるかたちでさまざまな活動を通じて提案しています。「七十二候」に沿った旬の生活文化を紹介・提案する暦アプリ「くらしのこよみ」は累計77万ダウンロード、書籍「くらしのこよみ」は1万部のロングセラーとなっています。https://www.kurashikata.com/
「くらしのこよみ」のアプリはこちらから。https://www.kurashikata.com/app/
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